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星に願いを

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いつ、どこで、だれと



淡い
奥行きのある秋の陽射しが差し込む
放課後の教室

「ここ」を選んだのは
「ここ」にしか居場所がなかった

自分も彼も
結局、そういう事

向かい合う彼に見守られ
あたしは「飴玉」を口に含んだ

舌に触れた瞬間
硬そうな殻は簡単に破け、口内に広がる
無味無臭の液体

不思議な事に
あたしは「甘い」と感じた

途端、膝から崩れ落ちる
何かに縋ろうと咄嗟に伸ばした腕を
彼が掴み支えてくれなければ、どうなっていた事だろう

その場にへたり込む
ゆっくりと意識が薄れていくのを意識した

水泡のように、彼の声が弾ける

「大丈夫なの?」

自分に話しかけているのか
なら、返事をしなきゃと思うんだけど
この状況で「大丈夫?」と訊くのはおかしくないか?

大丈夫な訳ない

身体を支える腕の感覚がなくなってきた
彼も理解したのか、床に横たわらせるように促す

あたしは毒を飲んだ
意識は朦朧、身体は麻痺し始めて唇さえ動かせない
返事など出来ない

「問題ない」

水泡が弾ける
濁る音に混じり響く声は

誰?

閉じかける瞼を抑え、視線を頭上に向けるも
当然、声の主を捉える事は出来ない

耳に届くのは水泡だけ
その濁る音すら遠のく感覚にあたしは瞼を閉じる

彼は「誰」と話していたのか
分からない

声の主は「誰」なのか
分からない

そして
彼はあたしになった

そして
あたしは彼になった

不思議な事に
あたしは今、落ち着いている

受け入れている訳でも
咀嚼出来ている訳でもない

薄明りの廊下を
時折、看護師なのか足音が届く

眠れない
消灯時間が過ぎて、どのくらい経ったのだろう

病室には
不便な事に時計がない

早く、朝になって
早く、ここから出たい

早く、彼に会いたい

作品名:星に願いを 作家名:七星瓢虫