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百代目閻魔は女装する美少女?【第三章】

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(この紙には『アイス』とある。つまり『愛す』ということか。これはいわゆる告白というものなのか。初めてもらったぞ。勇気を振り絞ったが、自分の口から申し出することはできなかったのであろう。不届きな奴だ。下らぬ。捨て置くか。)
 美緒は紙を破ろうとした。その時、『ぽっ』。胸に何かが灯った。
(この胸の暖かさは何だ?このような感覚を受けたことはないぞ。奇妙だ。天変地異の前触れか?この手紙に邪悪なものが込められているのか?)
 多分そんな大層なものじゃないだろう。それに絶対に邪悪なものではない。『アイス』と書いただけだぞ。
(いや待て。これは願いだ。そう、我に対する懇願なのであろう。こやつはおそらく羞恥心が強いのであろう。そうだ。我は神である。慈愛も必要だ。万物の願いを受け止める義務もある。少し、様子を見るか。うきうき。)
 神も『うきうき』とかするんだ。初めて聞いた。でもよく考えればオレと年の近い元女子高生だ。ある意味当然かも。
「これを読んでくれ。」
 唐突に美緒はオレに頼みごと。
「アイス。」
 素直に応えた途端、花瓶に入っていた水が溢れだした。
「美緒、花瓶が何だか変だよ。」
 水はらせん状に巻きながら、室内をグルグル回ると、そのまま元に戻った。
『キュイーン』という音と共に、カードが出来上がった。『スペードの4、ウオーターのカード』。
 次の瞬間、神のからだが一瞬黄金に輝いて、金衣が消え去った。眩しくて中身が見えないまま、カードは水着へと変化した。
「美緒、何だか顔赤いよ。どうかしたの?」
「うわああああ。肌を男に晒すとは。神としてはあるまじきこと!」
 美緒はひざまづいて、両手で胸を隠してしまった。
「美緒のからだ、すごくきれいだし。でも男に見せるのはもったいないや。」
「天の岩戸へ行くぞ。」
「わかったよお。ばいばいどっきゅーん。」
『天の岩戸』ってどこだ。とにかくふたりは消えた。オレの腹痛もなぜか消えた。  
空っぽになった保健室の床がピカピカになっていたことにはオレは気付かなかった。


美緒と万步は『天の岩戸』に到着。別に変哲な場所ではない。1Fの自動ドア付き『保健室出張所』である。ここが自動ドアというのはもしかすると神がいる場所だからか?電気は24時間通電しているのか?どうでもいい疑問が浮かぶ。
「美緒、まっほたち負けちゃったねえ。」
「いいやそんなことはないぞ。少なくともこの神は戦ってないしな。また今度戦って勝てばいい。」
「そうだね。でも負けた気がするよお。なんかウエットな気分だよお。こんな時はいつも生きていた時のことを思い出すよお。」
突然異変が万步を襲った。
『バキューン』という音と共に万步は生まれたままの姿になった。
「きやあ~!」という奇声を上げる万步。小柄なのにメロンがふたつ。さすがアイドル的出来栄えだ。万步は両手でそのたわわな果実を隠している。これぞ『テブラ』である。そこにクローバーの8のカードが飛んでいく。万步のところに到達するとピンクの水着に変わり、裸身の万步を覆った。
「これって、まさかトリガーカード?」
 万步は目を白黒させている。
「そのようだな。『テレポート』だな。万步、いいモノを見せてくれたな。」
「美緒のエッチ、いじわるう~!」
「そこじゃない。いやそれもあるが。ははは。カードのことだぞ。あの男の『撃たないで』という言葉が原因らしいな。空間を飛んでいくと解釈できるからな。どうやら、閻魔大王後継者見習いというのは間違いないらしい。我らの願いも叶うやも知れぬな。」
 不敵な笑いを浮かべる美緒だが、眼は笑っていない。
(それとこの胸の灯火はいったい何なのか。あの者の『アイス』の真意を確認せねば。)
 美緒は万步に言わないことの方が気になる様子だった。

 その日は由梨も絵里華も先に帰宅するとのことで、オレはひとりで下校した。家に着いて、部屋の前に来た。『コンコン』。自分の部屋なのにノックして入るという矛盾。小市民の憩いの場所を奪われている格好だ。騒々しさを予想していたが、意外にも静か。
「入るぞ。」
ダメ押し発言までして部屋にフェードイン。オレの眼前に広がったパノラマ。テーブルを囲む五人の女子。いやひとりはオバサンだが。
「こらあ!オバサンって誰よ?ここにいるのはをねゐさんだよ。」
 言葉は怒っているが、微笑んでいる。でも目は氷のよう。実に不思議な表情を見せる閻魔女王。ほかのメンバーは由梨、絵里華はいいとして、あとふたり?
「やっほー。まっほが来たよお。」
「この神もここに来ることになった。いやそちが呼んだからここに住むことになったというのが正しい神託だな。」
 ただやってきたという事実のみを述べて、来た理由とか、家宅侵入への許可とかスルーしているまほと意味不明なことをほざく美緒。この部屋は完全に定員オーバーじゃね?
「いったい、何をやっているんだ?誰の許可をもらってここにいる?」
 この言葉はまほ、美緒にだけではなく、気持ち的には全員に対するものである。
「きゃんきゃん。許可は閻魔女王様にもらってるよ。」
「今やってるのはトランプだ。見たらわかるだろう。」
 まったく回答になっていない。でもツッコむ気力も失せた。これだけのメンツをとても相手にできるものではない。それも普通の人間じゃないんだから。
「何のためにトランプをやってるんだ?ただのエンタメではあるまい。」
「いちいちうるさいわね。椅子に座ってじっとしててよ。アタシのカードを見るという超絶光栄に浴させてあげるんだから感謝しなさい。」
 由梨の迫力に圧倒されたのか、ごく自然に机についた。宿題でもやるかな。いちおう、由梨の仰せの通り、後ろについた。ていうか、由梨の指定した場所=椅子が由梨の真後ろなのだ。これって何かの意図?由梨のツインテールがこっちを見ているような気がした。
 全員が沈黙して、カードを順番に抜きあっている。揃ったカードを捨てているところを見ると、ババ抜きをやっているようだ。あまりの静けさに耐えかねた人物が口火を切った。
「いったい誰がジョーカーを持ってるの?正直に言いなさいよね。」
 やっぱり由梨だった。ガマンというのがいちばん苦手と言っても過言ではあるまい。
「みんな黙ってババ抜きをやって面白いのか?こういうのはキャーキャー言いながらやるのが楽しいんじゃないのか。」
 不用意な発言をしてしまった。
「何をほざいているのよ。賞品は黙ってなさい。」
「賞品って何だ?」
「い、いちいちうるさいわね。賞品は賞品よ。商品ではないわ。」
「わけがわからん。」
「それより、これはババ抜きと言っても霊界流儀よ。残り1枚でババのみになった者が勝ちになるの。その時の手持ち枚数が少ない順にランクされていくわ。早く上がってしまえば、ランクは上位になるけど、優勝資格が無くなるわけ。」
「これは結構難しいルールだな。ってことは、何かの勝負をしているんだ。」
「そうよ。だからそこで置き物になってじっとしときなさい。」
 言われるままに、石地蔵になった。
「誰がジョーカーを持ってるのかな。をねゐさんは持ってないよ。」