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百代目閻魔は女装する美少女?【第三章】

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「ほ、保健室に行く。」
 授業中だったので、行き先はそこしかない。由梨と絵里華はついてきたそうだったが、勉学を優先した。これも高校生としては当然の選択。でも彼女たちに勉強って必要なのか?それ以上は考えても無駄なので停止。ひとりで保健室に向かうオレ。保健室は1Fだったはず。到着すると、『保健室は5Fに移動しました』との案内紙が貼られてあった。あれっ?この校舎って4F建じゃなかったっけ。仕方なく5Fまで昇る。そう言えばこの前の夜に由梨と一緒に来た時には確かに1Fにあった。それに自動ドアだったな。この学校のどのドアも手動式だ。自動ドアがついた保健室なんて聞いたことがないぞ。何かおかしい。長い階段を上り、5Fの保健室前に来る。
「ぐはぁ。」
 中から男子生徒が出てきた。そのまま床に突っ伏してしまった。
「「「れろれろ。」」」
 またも男子だ。それも3人纏めて。表情が死んでいる。だが、顰めつらなどではなく、だらしなく口を開いている。
「「「「「し、幸せ過ぎる。」」」」」
 さらに五人。言葉通りの様子。その場に倒れた。桃源郷にでも行ってたような?よく見ると、ここにいる全員がシャツをはだけていて、腰のあたりに、赤い斑点がある。周囲がモール状態になっており、注射でも打たれた後のように見える。
ちょっと心配になり、警戒しつつ入り口の前に立つ。やはりドアは自動で開いた。
「きゃっほーい!!!」
 奇妙な声が聞えたので、本能的に身の危険を感じ、ドアを閉めようとした。
「ダメだよ、中に入らないと。病人はここでケアするんだよお。」
 白いナース服を着た女の子が出てきた。腰には不必要な大きなリボンが着いている。ナース帽を冠した髪は鮮やかな新緑のショート。肩にやっとかかるくらいの長さ。真ん丸とした目は大きく開かれ、吸いこまれそうである。紅を塗ったかのような赤い頬。やや厚めの唇。ここからアニメ声優のような甲高い声が発せられている。全体小柄だが、胸の隆起はアルプスを思わせる。アイドルチックな様子だが、ひとつ大きな違いがある。両手でやっと抱えられるような巨大注射器を持っているのだ。しかも人間ではない。頭に白い輪をつけている。いずれにせよ、フツーの人間には見えないが。注射器女子は直径10メートルくらいの円形のステージの上に立っている。アイドル気どりか?いやそんなことより、ここは本当に保健室かなのか?
「さあ、悪いところをこれで治しちゃうからね。覚悟だよお!」
 愛くるしい笑顔で、言ってることはヤバそうである。
「覚悟できないので、ここから退出しま~す。」
 礼儀正しいオレ。挨拶を一言し、すぐさま脱出を試みたが、ナース服はオレの腕を奪取し、袖をまくってしまった。
「痛くしないから、大丈夫だよお。」
 注射なんて、痛くない、怖くない。そう言われてそうだった試しがない。しかも注射器というよりは針のついた武器である。よく見ると薬と思しき液体はどす黒い紫色。RPGでは定番の毒薬オーラがはっきり、くっきり見えている。こんなの注入されたら即死確実。
「や、やめてください。ひやっ!」
 消毒液を塗られてしまった。準備万端。
「いくよお。じゅる。」
 ナース服は涎を拭いた。ちょっとヤバくない?
「うわあああ。刺される!・・・あれ?痛くない。そうか、本当に痛くしなかったんだ。」
 床が紫色に染まった。ナース服はオレの前に突っ伏していた。コケたらしい。
「よくもやったなああ。悔しい。」
 自分で転倒しながら、『やったなあ』は違うと思う。でもナース服は笑顔を絶やさない。むしろ、うれしそうだ。
「ちゅどーん!」
 自分の中で何かが爆発したのだろうか。変身していた。
「逮捕しちゃうぞ。」
 メタリックブルーの警察官服。帽子、ヒールも同じ色。お約束通り、スカートはひどく短い。両手で拳銃を構えている。拳銃というよりはバズーカ砲だが。危険度は急成長した。
「ちょ、ちょっと待って下さい。う、撃たないで。」
「抵抗したら撃つよ。抵抗しなくても撃つけどお。」
 わけがわからない。ドアには閂がしこまれて、脱出不能状態に追い込まれていた。
「うきゃ!」
 奇妙な声を上げると『ズドン、ズドン、ズドン、ズドン』と撃ちまくったブルーポリス嬢。
「うわああああ~。やられた~!ばたん。」
 自分で言うくらいだから弾丸は当たってはいない。無差別に四方八方に打ち込まれたようだ。壁に大きな穴が開いた。ちなみに最後の『ばたん』はブルーポリスが倒れたもの。
「ふうふうふう。敵ながらあっぱれだあ。」
 敵?オレって保健室に向かう患者じゃなかったっけ?
「次はこれだよお。」
 忍者、いわゆるくノ一。ピンクの頬かむりした装束。鎖帷子付きの本格派。手には手裏剣。直径2メートル。真ん中にくノ一キャラのイラスト。Vサインしている。
「いっくぞお。それ~。」
「あぶねえ!」
 手裏剣はオレの頬をかすめもせず、からだを動かすこともなく、余裕で回避できた。
「きゃああああ。」
 ピンクくノ一は胸を押さえている。自分の胸を手裏剣が切り裂いたらしい。布が床に散る。豊満そうな盛り上がりが存在感十分。負けたかも。
「まだまだ負けないぞお。えいっ!」
 別に勝負に来ているわけじゃないぞ。保健室に来てるんだが。またも変身した。
「チャイニーズバトラーだよお。」
 頭には団子ふたつ。てるてる坊主のように、フリル付きの白い布で覆われている。スリットが太股まで入ったセクシーチャイナドレス。赤い繊維のテカリが眩しい。胸からお腹のあたりにかけて、虎が描かれている。いや虎ではなく、猫。それもシンプルな線で描かれたもの。目は点で、鼻、口はなく、髭だけが数本書かれているだけ。どちらかと言えば少女向けのようだ。ヌンチャクを手にしている。これも長さが1メートルはあり、どうみてもアンバランス。振り回せるような代物ではなさげ。
「アチャー!」
 レッドチャイナドレスはヌンチャクを振り回すが、とてもリズミカルとは言えない。
「ヌンチャクは回ってないし、風も吹かないぞ。」
「あれっ?」
 ヌンチャクが手から離れて、床に落ちていた布を押してカーリングのように移動した。布は濡れた床を移動していく。この女子は戦闘にまるで向いていないように思えた。コスプレ好きのドジっ娘という表現が適正か。
「きゃい~ん。」
 またも奇声を上げたドジっ娘。両手で胸を隠している。突然ピンクのビキニ姿に変身。しかも上はノーブラ。そこへひらひらと舞うカード。『ハートの2』。風を伴っていることからその属性か。カードはピンクのブラに変化し、そのままドジっ娘の胸部を覆い隠した。
「うわ~ん。勝てないよお。もう学園アイドルまっほはダメだよお。」
 この娘は『学園アイドルまっほ』というらしい。長い名前だ。よく見るとステージの頭上には横断幕があり、その名前が煌びやかに書かれていた。学園アイドルまっほは保健室の奥の方に走り去った。そちらにも部屋があるようだ。
『ドンドンドン』。学園アイドルまっほはドアをけたたましく叩く。
「うるさいな。ノックは静かにやれ。」
 ドアの奥から声がした。やや低い女性だ。落ち着いた感じがする。保健の先生か。
「助けてよお。相手がすごく強いんだよお。」