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百代目閻魔は女装する美少女?【第ニ章】

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 思わず声を上げるオレ。しかし、蛇はすぐに復活して元に戻る。トカゲのしっぽのようなものらしい。これはやっかいだ。メデューサは胴体が固いので動きはぎこちない。しかも何も喋らない。だが、両腕を肩より上にして前に突き出し、からだを左右に揺らしながら、オレたちの方に近づいてくる。これではまさに蛇に睨まれたカエル状態だ。なんとかしなければと思うが、こんな経験がまったくないオレ。対処のしようがない。髪の毛・蛇がオレの背中を舐めてきた。
「うわあああ。やめろ~!オレは食ってもうまくないぞ~!こんな時にカードが役にたつんじゃないのかあ!」
 急に静かになった。金属の輪がメデューサを囲んだかと思うと、メデューサは突然止まった。由梨がカードを出したのだった。メデューサの髪の毛が蛇から何かに変化した。20センチくらいの細い棒とその先に毛が付いている。絵の具用の筆。それが頭から生えているように見える。これはこれで不気味というか、滑稽である。思わず噴き出しそうになったが、状況が状況。ぐっとこらえながら、さらにメデューサの顔を凝視すると、蛇から別のものに変わっていく。『ムンクの叫び』のごとく、極端に湾曲しながら、出来上がりは少女。眼鏡女子であった。そばかす付き。意外にかわいい。『バシ』またもや由梨チョップ。今は痛点が神経を通じて大脳に回るヒマがない。何だ、この少女は?そしてこれがトリガーカード『メタルの防御』の力か?
「あたし、絵が好きなのに、描くことができない。」
 喋りだした。怪奇だ、何だと思考を巡らす余裕はない。禅問答のように言葉を紡ぐ。
「どうして描けないんだ。」
「目が見えないの。」
 ようやく聞き取れる程度のか細い声。
「君は目が見えなくて、絵が描けなくて、ここに取り残されてしまったのか。」
「そうなの。」
「ジバクだわ。」
 突如、由梨が絡んできた。
「ジバクとは地縛霊のことか?」
「そう。よくわかったわね。」
「このシチュだ。それくらい察しがつく。時間がない。どうすればいい。」
「話を聞いてやりなさいよ。」
「わかった。君は絵が描きたかったんだな。」
「そう。でもどうしようもなかった。ここでずっと過ごしているうちにこうなってしまったの。」
「つまり、死んだということか。」
「あたし、死んでるんだ。知らなかった。ううう。」
「よし。オレが一緒にやってやろう。ちょっと待っててくれ。」
 オレは美術室にあった絵の具、パレット、イーゼル、画用紙などを一気に揃えた。そして、彼女の手を取った。
「え、え、え?」
 彼女は驚いていたが、構わず、オレはその手を取り、いきなり、絵の具をつけた筆を動かした。その姿を見て、由梨は拳をギリギリ言わせていたが、じっと耐えていたことは気付かなかった。
「よし、行くぞ。油を描くぞ。」
思うがままに白い画用紙とバトルする。最初はオレがリードしていたが、次第にオレは何も考える必要がなくなった。彼女が自分で描き始めたのだ。目は瞑っているが、心の眼は開いているようだ。数分後動きが停止した。
「できたわ。」
「これは力作だ。百点を与えよう。」
「ホント?う、うれしい。これがあたしの絵。今は見える気がする。できたんだ。ああ、生きてて良かった!」
 あなた、死んでるんですけど。とは、言わなかった。KY非難回避。
 すると、少女の頭上に、白い輪が現われた。
「今よ!アレをこの剣で斬るのよ!」
 由梨に言われるや否や、電光石火で、その輪を斬る。『シュウウウウ』。少女は消えた。
消えただと?原因はわからない。
「きゃあ!」
 由梨の水着の上が取れていた。代わりにトリガーカードが宙に浮いていた。
 二枚目ゲット。ダイヤの3、『オイル=油』のカードだ。『油絵』という言葉がキーになったようだ。カードは再び水着のブラに変化して、由梨の下に戻っていた。ブラには『ダイヤの3と9』が表示されている。カードが増えるとブラにカードの絵が描かれることになっているらしい。そんなことより、由梨の生胸を直視?してしまったオレ。
『ぐはっ!』自分がすでに女の子のからだを所有しているにも拘わらず、こういうものには弱いオレ。うぶ。うふふ。
「何、ニヤついてるのよ。ぶつわよ。」
 言うまでもなく、オレの頬をはたいた後での発言である。
「よし、じゃあ帰るか。」
「そうね。どっこいしょ。」
 由梨は何かを持ち上げたわけではない。オレの背中に乗り込んだのである。
「ちょっと、さすがに疲れてるんだけど。」
「そう。アタシすごく疲れたの。」
 会話は成立しなかった。仕方なく、おんぶズマンとなって、帰路に着く。
 学校を出て、道すがら、背中に話しかける。
「どうして、あの少女、ジバクと言ったけ、消滅したのかなあ?」
「現世に留まるためのグッズが、あの輪なのよ。あれが無くなれば、自動的に霊界に逝くわ。今頃、『魂』として閻魔のババアのところにいってると思うわ。」
「そうか。それからどうなるんだ。」
「閻魔は魂を地獄か天獄に送ることを決定するのよ。それが閻魔のいちばんの役割。」
「『天獄?』『天国』じゃないのか?」
「確かに人間界では『天国』と呼んでるわね。でも、霊界では『天獄』としているわ。詳しいことは知らないけど、『天獄』は地獄と大差ないらしいわ。それで多少アイロニカルに『天獄』と呼んでるようなの。」
「じゃあ、『天獄』に逝っても地獄のような悲惨な目に遭うんだろうか。」
「たぶんね。それ以上は知らないわ。あのババアにでも聞いてよ。」
「う~ん。閻魔女王は苦手だしな。」
「そうね。あまり関わらない方がいいかもね。ところで、どうしてアタシのこと、助けたの?別に助けてなんて頼んでないのに。」
「さあな。『手出しは無用なんだからねっ。』って言うから助けたんだと思うけど。」
「そ、そう。ほんと余計なことだったわ。」
「そうか。じゃあ今度から改めるか。改めついでに、呼び方だがお前ではあまりいい気がしないんだ。名前で呼んでもいいか?」
「べ、別に。好きにすれば、いいんじゃ・・・」
「そうか。ならば、由梨と呼ぶぞ。いいな?」
 回答がなかった。
『すー、はー、すー、はー』。由梨は眠っていた。疲れていたのは本当だろう。
 寝顔は見えないが、安らかそうだ。たぶん、顔を見るとかわいいと思うのではないだろうか。背中に彼女。これはフツーなら、恋愛フラグが立つところ。しかし、由梨は死んでいる。複雑だ。

オレは帰宅するなりすぐにベッドになだれ込んだ。桃羅が夜中に布団に入ってくるはず。いつもなら、オレの左に来るのだが、今日は由梨、閻魔女王がすでに入居しているので、侵入不能となっている。さてどうするのだろう?そんなことに頭を巡らしているうちに、オレは眠りに落ちた。おんぶズマンになった心地よい疲労感に襲われたのだ。


眼を見張るような巨大なお城?いやお屋敷。そこの一室が見える。部屋は暗い様子でその隅っこにいるのは母親と小さな幼稚園児くらいの娘。顔や服装はよく見えない。黒い服をふたりとも来ているらしい。娘は和人形を抱えている。母親は娘を見つめながら泣いているようだ。
「ママ、元気だして。」
娘が声をかける。