火曜日の幻想譚
23.屏風
うちの人は、屏風にやたらと散財している。その熱中ぶりときたら、私のことなど目の端にもかけないほどだ。
そのあまりの熱の入れようを私は苦々しく思い、ある日屏風の一つを上下さかさまにしておいた。だが、良人は目ざとく気づき、ぶつぶつ言いながら屏風を直してしまう。
今度は屏風を一つ、別の場所に隠しておいた。これにも良人はしっかりと気づき、私にすぐさま持ってくるよう怒鳴った。
もう、我慢の限界だ。そんなに屏風の方が大事なのか。私は、一番高そうな屏風に蹴りで穴を開け、三行半を突きつけて出ていこうとした。
話を切り出そうとしたその夜、妙に良人が優しい。自分の腹積もりを隠して、なぜかと良人に問う。
「いやさ、お前の心に、俺の持ってるどんな物よりも立派な屏風が立てかけてあるからさ」
……気持ちを汲んでくれるのは嬉しいが、それでも例えは屏風なのか。
いい加減辟易した私は、予定通り三行半を突きつけて、実家へと戻った。