小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

火曜日の幻想譚

INDEX|76ページ/120ページ|

次のページ前のページ
 

45.虐げられし者の祈り



 天にまします、われらが神よ。

 願わくは、私たちの愛するものに大きな幸福をお与えください。
 私たちは今、差別と偏見の目に晒されて心細い思いをしております。

 一体いつからでしょう、このような理不尽な仕打ちを受けるようになったのは。
 一体なぜなのでしょう、このような理不尽な仕打ちを受けるようになったのは。

 思えば古より、私たちと同様の者の悪行が書物に記されておりました。
 それ程の昔から、私たちの苦難は始まりを告げていたのかもしれません。
 かつての私たちは、悪魔のような所業をしでかしたことがあるのかもしれません。
 それだからこそ、私たちの評判は地に落ちたのかもしれません。

 しかし、今を生きる私たちは彼女たちとは違います。
 悪魔のように振舞い、正義の名の下に誅されていった者たちではないのです。
 ただひたすら心に導かれるまま、すべきことを執り行っているだけなのです。

 私たちは一刻も早く疑惑の目が外れることで、私たちが自身の行いに集中できる環境になることを願います。

 そして私たちは、決して過去の私たちのような過ちを繰り替えさないように。
 富貴につられ、我が子の足を切断してまで靴を履かせようとはならぬように。
 嫉妬に溺れ、真っ赤に焼けた靴で死ぬまで踊り続けることにはならぬように。
 悪しざまに語られ続ける、悪名高き血の繋がらぬ母のようにはならぬように。

 富めずとも、安らげずとも、たとえ血が繋らずとも、子どもたちの幸せを心から願えるものでありますように。

 アーメン。


作品名:火曜日の幻想譚 作家名:六色塔