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火曜日の幻想譚

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58.絵馬



 新年なので、神社に行くことにした。
 手水舎で手を洗い、お参りをしておみくじを引く。中吉、今年はなかなかだ。
 少し時間が開いたので、お守りなどを買うついでに絵馬を見ていた。美麗なイラストとともに、いろいろなお願い事が書かれている。

 その中でもやはり目につくのは、合格系だ。
「○○高校に合格しますように」
「○○の試験に受かりますように」
十分に勉強した上でなら、神頼みというのも悪くはないだろう。もちろん、勉強した上でだけど。

 その次も定番と言っていい、恋愛系。
「○○さんとつき合えますように」
「今年こそ、良縁に巡り合えますように」
確かにこればかりは、自分一人の力では、ねえ。お幸せになれるのを、かげながら祈っております。

 意外に見るのが、平和系。
「世界が平和でありますように」
「世の中が元気でありますように」
ちょっと壮大で、ぼやけてしまう気がするけれど、素晴らしいお願いだ。特に昨年は、大きな出来事もあったし。それに、自身の欲望よりも、みんなを優先させてる所が特にいいじゃないか。

 そんな願い事の中に混じって、一つだけ奇妙な願いがあった。
「認知して」
男性の中には、言われたことがある方もいるのではないだろうか、このセリフ。だが奇妙なことに、誰に向けてなのかが書かれていないのだ。
「これじゃあ、誰に認知してもらいたいのか分からないな」
そうつぶやいた瞬間、ある可能性が思い浮かび、社を思わず見てしまう。
「もしかして、神様……」
そして、思わずニヤリと笑ってしまう。
「意外とやんちゃしてるんですね、神様も」
神社の階段を下りながら、神様の人間らしさを垣間見て、親近感を持っている自分に気づく。
「でも、修羅場にならないように、ちゃんと責任、取ってあげてくださいね」

 鳥居を潜ってから振り返り、そうつぶやいて、いそいそと帰り道についた。


作品名:火曜日の幻想譚 作家名:六色塔