火曜日の幻想譚
74.砂時計
俺は砂時計が大っ嫌いだ。
何で嫌いかって? まず、やつらはしっかり仕事をしやがる。ろくに仕事をしない俺への嫌味とばかりに、時間を計るという仕事をきちんと遂行しやがる。それに、しっかり仕事をしやがるくせに半隠居状態だ。仕事は時計やタイマーに任せっきり、全く羨ましいご身分だ。しかも、見た目も決して悪くないときてる。ちょっとしたお洒落なインテリアとしても使えるときたもんだ。そして最後に何だ、あのくびれは。きっとあいつら、俺のぽよぽよの腹を心の中で馬鹿にしているのだろう。
そんなこんなで、砂時計への鬱憤が溜まった俺は、自分の身長ほどもある砂時計を拵えて制裁を加えることにした。
まずは、シンプルに横倒しにする。ふふふ、これで時間を計ることができないだろう。
次に、激しくひっくり返し続け、のんびりする暇を与えぬようにしてしまう。そろそろ目が回ってきただろう、いい気味だ。
間髪を入れず、今度はガラス部分に恥ずかしい落書きをしてやる。お洒落なインテリアなんてもう言わせないぞ。
最後に……、最後にあの憎きくびれを見つめる。見つめているうちに、欲望がムラムラと頭をもたげてくる。
気がつくと俺は、砂時計をベッドに勢いよく押し倒して愛し始めていた。