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火曜日の幻想譚

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75.カラスの遊戯



 ハラカワカラス。このカラスは、南極大陸を除く世界中に生息しており、日本でもよく見ることができるカラスだ。
 体長は40cm前後と、カラス属の中では標準的なサイズ。寿命も12年ほどで、こちらもカラス属の中では平均的と言っていい。これだけを見ると、いたって平凡で特徴のないカラスとしか思えない。

 だが今、このカラスのとある行いが世界の注目を集めている。

 ある日のこと。アメリカのテキサス州で、14歳の少年が奇妙な光景を見かけた。
 学校へと向かう朝、隣家の庭にふと目をやる。すると、2匹のカラスが向かい合い、石ころをくわえて遊んでいたのだ。
 1匹が石ころをくわえて置くと、それを見たもう一方が考え込んだ後、やはり石ころを置く。2匹は、それを延々と繰り返していた。
 それを、まるで日本の囲碁をしているようだと思った少年は、その様子を動画に撮影しSNSに投稿した。

 その投稿を見かけた動物学者のファニー・K・ジョセフは、その2匹がハラカワカラスであることを突き止めた。そして、実際にハラカワカラスを用いて実験を行ったところ、このようなゲームを行う習性があることを発見したのである。

 ジョセフは語る。
「ハラカワカラスは、1800年代には既に発見されていた鳥ですが、今までこの習性が発見されなかったところを見ると、つい最近、カラス間にこの「遊戯」がはやりだした可能性が高いでしょう」


 ところで、カラスといえば非常に知能の高い鳥類である。ハラカワカラス以外でも、「遊戯」をすることが知られている。公園のすべり台で遊んだり雪遊びをしたり、その内容も多岐にわたる。もしかしたら、他のカラスや動物も石ころで遊ぶぐらいのことはするかもしれない。
 では、このハラカワカラスの「遊戯」のどこが画期的なのだろうか。それは、この「遊戯」のルールが解析できないことにある。

 先述のジョセフは、カラスたちのこのゲームを見続けた結果、勝敗が全く分からないことに気づいた。そこで、知人の数学者や論理学者、哲学者にこのゲームの解析を依頼する。
 だが、彼らのいずれもこのゲームのルールを把握できなかったのである。

 現在は、カラスたちがゲームをするさまを動画に撮り、懸賞をつけて勝敗を解析できるものをネット上で募っている。だが、カラスの遊戯を解明できた者は、世界中に誰一人としていない。

 深遠な論理をもてあそんでいるかもしれないカラスの「遊戯」に、今、注目が集まっている。


作品名:火曜日の幻想譚 作家名:六色塔