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火曜日の幻想譚

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86.連帯責任



 ある日、3班の水野君が掃除をさぼって遊んでいました。それを見つけた先生は、3班全員に校庭を5周するように言いました。不服そうな顔の3班のみんなに、先生は大声で言います。
「これは、連帯責任です」

 先生はこのことを、学年主任に報告しました。すると学年主任は、2年3組のクラス全員が校庭を5周すべきではないのかと問いました。なぜと問う先生に、学年主任は言い放ちます。
「これが、連帯責任というものです」

 学年主任は、このことを教頭に報告しました。すると教頭は、2年生全員が校庭を5周すべきだと言いました。首をかしげる学年主任に、教頭は胸をはって言います。
「これこそ、連帯責任です」

 教頭は、このことを校長に報告しました。校長は、「君ら、教師の教育もなってないな」と言い、しばらく考え込みます。そして、わが校の教師と生徒の全員が校庭を5周すべきだと言うのです。押し黙る教頭に、校長は静かに言います。
「それが、連帯責任というものだよ」

 校長は、このことを県の教育委員会に報告しました。教育長は、県内の学校全ての教師と生徒が校庭を5周すべきだと言います。せめて3周に負けてくれという校長に、教育長は言いきります。
「連帯責任とは、こういうことを言うのです」

 教育長は、このことを文科省の役人に報告しました。役人は、国内の学校全ての教師と生徒に校庭を5周走らせるべきだ、と言おうとします。しかしすかさず、隣にたまたまいた外国のお偉いさんが言いました。

「今すぐこんなバカげたことを止めさせるか、さもなくば世界中の人々を校庭5周走らせるか、どちらかを選ぶんだな!」


作品名:火曜日の幻想譚 作家名:六色塔