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火曜日の幻想譚

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97.happy birthday!



 そろそろ妻の誕生日だ。

 妻にはいつもいつも苦労をかけさせてしまっている。本当にありがたいと思っているので、何かプレゼントでもして感謝の意を表したい。だが、ここに困ったことが一つある。俺は今まで、この手のプレゼントをあまりしたことがないのだ。

 妻への誕生日プレゼント、何か良いものはないだろうか……。

 例えば、花束なんてのが定番だって聞くけども。でも、ありきたりなのはちょっとつまらない。なんか俺らしい、個性的なものをあげたいなぁ。

 エステの招待券なんてのもいいか。でも、俺にはもったいないほどできた妻だ。これ以上綺麗になられたら、浮気の一つでもされて出ていってしまうかもしれない。
 指輪とかネックレスなんてのも同様だな。我ながら器小っちゃいなあ。

 思い切って、下着とかどうだろうか。多分夜の生活は盛り上がるかもしれない。ああでも、妻の体のサイズを知らないんだった。

 家電をあげて家事を効率化してもらうとかもいいな。でも、俺が使うことも多くなるよな。機械オンチの俺が使いこなせないから、これはちょっとパス。

 そうだ、何かを買うって発想だからダメなんだ。手作りの夕食を振舞おう、これなら喜んでくれるはず。ただし、料理全くしたことないけども。

 感謝の気持ちを手紙にしたためようか。あいつ結構涙もろいからなあ、号泣するかもしれないぞ。中学のとき国語の成績1だった俺が、そんな名文をかけるか疑問だけど。

 うーん。なかなか良いものが思い浮かばないなぁ。
 定番を嫌うひねくれ者で、器が小っちゃくて、普段抱いてる妻の体のこともよく知らなくて、機械オンチで、料理もろくにしなくて、文章もろくすっぽ書けなくて、家でゴロゴロしてるだけのいわゆるヒモの俺が、妻にあげて喜ばれるプレゼントといえば……。

 あぁ、そうか。あれをあげればいいのか。


 俺は一枚の紙をもらいに役所へと出かけることにした。


作品名:火曜日の幻想譚 作家名:六色塔