火曜日の幻想譚
104.バス停
朝、出勤しようと思ってバス停に行くと、たくさんの人が並んでいた。
最後尾に並ぶため、列を横目に歩いていく。すると、一つ前のバス停まで歩いてしまっていた。だがここでも列は途切れず、さらにたくさんの人が後ろに並んでいる。
次のバス停、その次のバス停、いくら歩いても、最後尾は現れない。
足が棒になるまで歩き倒して、ようやく最後尾にたどり着く。二つ隣の県まで歩き通しだ。時刻はもう昼過ぎ。いい加減くたびれたが、それでも出社はしなくては。うんざりしながら列の最後尾に並んで、バスの到着を待つ。列に加わった瞬間から、たくさんの人々が後ろに列をなしていく。
時計の針はものすごい速さで進んでいくのに、列は遅々として進んでいかない。日差しが照りつける中、我慢に我慢を重ねてバスを待つ。
気づくともう退社時間になっていた。列を作っていた人々は少しずつ散りぢりになっていく。
「…………」
ため息をつきながら仕方なく、私もその中の一人になる。
こんな生活を続けて10年、いまだに会社にたどり着いたことはない。何となくだが、このまま勤め先にたどり着かずに定年を迎えそうな気がした。