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火曜日の幻想譚

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106.洋太くんの勘違い



 今朝のことです。洋太くんの家に、こないだ遊びに行った田舎のおばあちゃんからお手紙が届きました。


  妙子へ。

  先日は来てくれてありがとう。
  その後、おかわりありませんか。

  こちらはなんとかやっています。
  お父さんの腰の具合も良くなり、最近は田んぼに出ています。
  少しはのんびりしなさいと言っているのですが、相変わらずです。

  そちらはいかがですか。
  浩一さん、洋太くんとつつがなく過ごしておられますか。
  常に元気で、夫や子どもを支えてください。

  そうやって、末永く温かい家庭を築いてくださいね。

  お母さんより


 おばあちゃんは書道の先生をしているので、とてもきれいな字で書かれていました。洋太くんのお母さんはこの手紙をとても喜んで、洋太くんに見せたのです。
 洋太くんはおばあちゃんから来た手紙をしげしげと眺め、しばらくして言いました。
「おかわりなら、いつもしてるよ」
お母さんは、何のことかと首をかしげます。確かに洋太くんは食べざかりで、毎日ご飯をいっぱい食べていて、そのおかげで最近は少しぽっちゃり体型です。まあそれはおいといて、なぜ洋太くんは、こんな事を突然言い出したのでしょうか。

 お母さんが考え込んでいると、洋太くんは手紙を指差して言うのです。
「ほら、ここに書いてあるよ」
洋太くんの言う通り、そこには「おかわりありませんか」と書かれていました。
 それを見たお母さんは、思わず吹き出してしまいます。洋太くんは、「こちらに何か変わったことがないか」という意味の「おかわり」を、ご飯のおかわりと勘違いしていたのです。

 お母さんは笑いながら、洋太くんに説明しました。でも、洋太くんはむくれ顔です。
 その勘違いがよほど面白かったのかお母さんは、仕事から帰ってきたお父さんにもその話をします。お父さんも、大笑いしてお母さんの話を聞いています。
 洋太くんは気まずくて、おかわりをするのが何か恥ずかしくなってしまいました。

 後日、お母さんは手紙のお礼ついでに、おばあちゃんにもこの話をしました。さらにおばあちゃんから、おじいちゃんにも話が伝わってしまいます。田んぼの仕事をしているおじいちゃんは、
「じゃあ洋太のために、おいしいお米をたんと送ってやらなきゃな」
と言ってお米をたくさん送り、今まで以上に田んぼ仕事に精を出しました。

 どんどん自分の勘違いが広まっていくので、洋太くんは不機嫌な日々を過ごしていました。しかし、おじいちゃんからたくさんのお米が送られてきたので、
「また、たくさんおかわりができる」
と思い、ようやく機嫌を直したのでした。


作品名:火曜日の幻想譚 作家名:六色塔