火曜日の幻想譚
3.夕暮れ
学校の授業が終わり、放課後まで遊んだその後。家が近所の僕とタケトは、真っ赤な夕日の中、肩を並べて帰路に着いていた。
「なんかさ、寂しくなってくるから、夕方って好きじゃないんだよな」
タケトはぽつりとそうつぶやいて、土手をゆっくりと降り始める。そして川のほとりに立ち止まると、足元の石を拾って投げつけ始めた。タケトの手を離れた石は、二段、三段と川面を飛び跳ねていく。
僕はタケトの横に立ちつくし、石を投げるタケトをぼんやり眺めていた。
タケトの家は共働きで、両親は夜遅くまで帰ってこない。彼はこれから明りのついていない家に帰り、一人で夕食をとって一人で眠るのだろう。そんなタケトのやるせない思いは、いつも家に母がいる僕でもわかる気がした。でも僕らが一緒にいられる時間は、無情に過ぎていく。
タケトは名残惜しそうに、最後の石を力いっぱい川へと投げつけた。そして、「じゃあな」と別れのあいさつをして立ち去った。
最後に投げられた石はタケトの思いをのせて、夕暮れに赤く染まる川面をどこまでも飛び跳ねていった。