小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

火曜日の幻想譚

INDEX|113ページ/120ページ|

次のページ前のページ
 

8.引退



 朝、突然体温計が言った。
「どうも、熱があるみたいなんです」
確かに、持ってみるとほのかに温かい。
「でも、僕にはわきの下も舌の裏もないんです」
体温計は悔しそうに言う。
「自分の体温もよくわからないのに、人の体温など計れるわけが無いので、もう僕は引退します」
その言葉を最後に、うんともすんとも言わなくなってしまった。

 僕はため息をついて、その体温計を冷蔵庫に入れて冷やし、しぶしぶ新しい体温計を買いに出かけた。多分高熱のせいであろう、ふらふらする体を引きずりながら。


作品名:火曜日の幻想譚 作家名:六色塔