火曜日の幻想譚
15.正義の味方
正義の味方。概して彼らは、重すぎる宿命を背負っているものだ。
テイクアウトの牛丼を口いっぱいに頬張りながら、自分の腹肉をつまむ。かなりまずい事になっている。場所を問わず、昼夜も問わず、困っている人がいれば参上しなければならない。そのストレスが全て食べる方にいってしまっている。
変身中は筋力が増加するから、戦う事に一切支障はない。だがこんな腹の突き出たメタボな体系では変質者から助けた方がより変質者みたいでした、なんて事が今後実際に起こりかねない。
「やっぱり少し、体重落とさないとなあ」
そうひとりごちる。だが、やはり過食は止まらない。
コンビニ弁当をかきこみながら、カップラーメンをすする。ハンバーガーとポテトを詰め込んで、コーラで流し込む。スナック菓子をあてに、ストロングな缶チューハイをあおる。
それはまるで、困っている人からの呼び出しを止めるおまじないであるかのように。
正義の味方は、暴飲暴食を続けていく……。