火曜日の幻想譚
18.不当との戦い
自転車が撤去された。ちゃんと駐輪所に停めていたのに。
他の誰かが僕の自転車を駐輪所の外へ移動してしまったか。それとも、撤去している爺さんが点数稼ぎに僕のを持っていってしまったか。いずれにしても、僕は自転車を取り返すため、翌日集積所へ向かった。
「僕、ちゃんと駐輪所に停めておいたんですけど」
とりあえず、自分の言い分を担当の爺さんにぶつけてみる。
「まあ、それは証明できないからね」
というつれない返事。
「駐輪所の外に停まっていたことは証明できるんですか」
「条例だからね」
回答にすらなっていない。
お前らの腹はわかった。もう容赦はしない。僕はお金を払って自転車を取り返し、とある決意を胸に帰途についた。
翌朝。自転車を撤去する爺さんたちは、明らかに困惑している。僕は、両手両足でタイヤを抱え、頭にハンドル、背中にサドルをつけて路上で待ち伏せたんだ。
「ほら、駐車違反だぞ。僕を撤去しろよ」
左目に付けたライトをこれ見よがしにペカペカさせ、撤去しようとする爺さんを威嚇する。
見なかったふりをしようとして、他の自転車を撤去し始める爺さん。そいつと自転車の間に、僕はすかさず割って入る。
「僕の同士をそんな簡単に撤去させないぞ!」
自分の職務を邪魔され、怒声を浴びせてくる撤去爺さん。周囲の人はそんな僕らを見て笑っている。だが、中には自転車撤去で嫌な思いをした人もいるのだろう、歓声もちらほら飛んでくる。
僕と不当な自転車撤去との戦いは、まだ始まったばかりだ。