火曜日の幻想譚
21.百物語
「来週の金曜さ、親二人ともいないから、俺んちで夜通し怪談しようぜ」
オカルト好きの友人からのお誘いだ。
「夜通しだからさ、百物語の形式にしようと思って。ローソクは俺が用意するよ」
友人は、もう今から楽しみで楽しみで仕方がないといった風情だ。俺も異論はなかったので、快く賛成してとっておきの怖い話を用意しておいた。
そして当日。夕方ごろから友人の家に、今日の催し物の話を聞いた近所のオカルト好きがぽつぽつと集まってくる。かなり広く声をかけたらしく、一度も話したことのない子や、女子も何人か姿を見せていた。
そういった面々が友人宅の広間に座り込み、日が暮れるのを今か今かと待ちうける。やがて、世界を闇が覆いつくした頃、友人がようやく広間に現れた。
「ごめん。ローソクの手配間違えちゃって。これでやってくれないかな」
友人はそのセリフとともに、抱えていた物をばらばらと広間の中央にぶちまける。それは、ローソクよりもかなり幅広な、百個のアロマキャンドルだった。
百物語は友人のその致命的なミスのため、まったく締まらずに終了した。だがムードは高まったのだろうか、参加者の中にカップルが数組できたそうだ。