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目を覚ませ! ライダー!

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 普段なら三人ライダーとレディ9の間には戦闘力に大きな差がある、しかし錯乱状態のライダーたちの動きには無駄が多く、現代のくノ一であるレディ9にとってその隙を縫って攻撃を繰り出すことは難しくない。
 マッスルのパンチをかいくぐり、ハイキックを繰り出してマスクを飛ばすとそのまま馬乗りになり、マウントからのハンマーパンチ……ではなく、かがみこんでのキスを見舞った。
「志……志のぶ……」
「そうよ、あなたの女房よ、気が付いてくれた?」
「あ、ああ……俺はどうしてたんだ?」
「ボーの精神錯乱波で正気を失ってたの」
「……俺は何をやった?」
「大丈夫、ライダーたちとちょっとやり合ってたけどそれはお互い様よ」
「ライダー……ライダーマン……こうしちゃいられないぜ、二人が戦ってるところなんざ見たくねぇよ」
「ええ! すぐに止めてあげて」
「おう!」
 二対一の戦いだが、正気を失って無暗にパンチやキックを繰り出して来るライダーとライダーマンでは正気を取り戻した格闘の天才・マッスルには到底敵わない。
 マッスルは二人の首筋に、立て続けに手刀を落として失神させてしまった。
「済まん、二人とも……だがこうするより他なかったんだ、許せ」

「うむむむむ……中々やりおる、こうなったら精神錯乱波をもっと強く……あ、コラ、何をする!」
「ごめんなさい、でももうその変な光線出すの止めてもらえないかしら?」
「目が、目が見えん……なんだこれは? やけに柔らかいもので目が……」
「あなたの目って大きい上に随分と奥まってるんだもの、ちょっと出っ張ってるところじゃないと塞げないのよ」
 膝立ちになったレディ9がボーを正面から抱きかかえている、ボーの目を覆っているのは……レディ9の胸から形良く突き出した二つの柔らかい塊……。
「オイ! 離せ! 離さんか!……離すのだ……離してもらえんかの……いや、もうちょっとこのままでも良いかのぉ……」
 初めはジタバタしていたボーだが、次第に大人しくなった。

 そして錯乱波に対抗して『気』を遣う必要はなくなったセイコは、ボーが発散している『気』に意識を集中する……すると、ニ百年ほども前の、ある光景が浮かんで来た……。

 ライダ~ \(\o-) →(-o/) / ヘンシ~ン!→\(〇¥〇)/ トォッ!

 酋長であり、最強の戦士でもあるボーの前に息せき切って報告に現れた戦士。
 そう、およそ二百年前、ボーは勇猛果敢で知られるツエ―族の酋長だったのだ。
「白い肌を持つ種族が攻め込んで来ます、見たこともない武器を持っていて、槍を投げても届かないような遠くから狙い撃ちにされて仲間が何人も倒されました!」
「飛び道具とな? 弓矢か? それとも吹き矢か?」
「いいえ、筒状の武器ですがはるかに強力です、バンと言う大きな音がしたかと思うと仲間が胸を貫かれて倒れました、そして筒からは煙が」
「尋常ならざる事態じゃな……ものども! ワシに続け! 敵を打ち破り、村を守るのじゃ!」
「「「「オーッ!!!」」」」
 報告に来た戦士の道案内でボーたちが村を出ると、敵はもう目前まで迫っていた。
 パァン!
 敵が筒を構え大きな音を響かせると傍らに居た戦士が頭を撃ち抜かれて倒れた。
「く……くそっ」
 ボーは槍を投げようと身構えた、だがこの距離では容易に避けられてしまう、毒を塗った矢もこの距離では届かない。
 パァン!
 パァン!
 更に大きな音が響くと、村の戦士が二人、もんどりうって倒れるのが目に入った。
 なす術がない……だが、だからと言って仲間がやられて行くのを、指を咥えて見ていることなどできようはずもない。
 パァン!
 どうすれば良いかわからないボーの隣で、また一人戦士が倒れた。
「うおぉぉぉぉぉぉ!」
 烈火のごとき怒りに駆られたボーは雄たけびを上げて突進する、だが……。
 パァン!
 パァン!
 最初の一発で脚を撃ち抜かれ、二発目で右腕を槍ごと吹飛ばされた。
 走ることもできず、槍を振るうことも矢を射ることもできなくなったボーに向かって敵はまだ煙をあげている武器を構えながら近付いて来た。
「貴様らは何者だ……何しに来た……」
 ボーが声を絞り出すようにしてそう言うと、通訳らしき男が進み出て来た。
「我々は開拓者さ、ここよりずっと文明が発達したヨーロッパと言うところからはるばるやって来たのさ、この土地は我々が頂くことにするぜ」
「何を勝手なことを……」
「ここは水も豊富で農場にするのに好適だ、森を焼き払って畑を作るのさ」
「そんなことはさせん……」
「フン、槍を振り回すことしか出来ん未開人が何をほざくのだ……安心しろ、皆殺しにはせん、女子供は奴隷として農場を拓く労働力として生かしておいてやろう」
「うおぉぉぉぉ!」
 パァン!
 左腕一本で掴みかかろうとしたボーに銃口が向けられ、頭を吹き飛ばした……。
『気』を読んでいるセイコの頭にも激痛が走るほどの衝撃……ボーの意識はそこで途絶えた、だが頭を吹き飛ばされてなお、ボーの『気』は残り記憶を刻んでいた、セイコはなおその『気』を辿った……。
 ボーが命を落としたその頃、呪術師でもあった村の長老は密かに村から女子供を連れ出していた。
 そしてボーの亡骸を見つけると、心臓を抉り出して皮袋に入れて持ち去った……。

 長老とその時助けられた女子供は更なる奥地にひっそりと新しい村を作った、長老は乾燥させたボーの心臓を仕込んだ木彫り人形を作って村の守り神とし、村は現代までひっそりと存在し続けていたのだ……死神博士が現れるまでは……。
 
ライダ~ \(\o-) →(-o/) / ヘンシ~ン!→\(〇¥〇)/ トォッ!

「ボー・デクノ酋長……」
 セイコは穏やかに語り掛けた。
「ん? なぜにワシが酋長であったことを知っている?」
「あなたは強い『気』を発しているわ、だからそれを読んだの」
「ふむ……娘、お前には他の者とは違う『気』を感じておったが……何者なんじゃ?」
「あたしは陰陽師……日本に古くから伝わる……そう、あなた方にとっての呪術師のような者よ」
「そうであったか……して、何を読んだ?」
「あなた方の村が白人に襲われて、戦士はことごとく銃で撃たれて殺された……」
「そうじゃ、奴らを許すわけには行かん」
「あなたも手足を撃たれて、最後には頭も撃たれて死んだ……」
「そうじゃ……あんなに無念なことはなかった」
「村の女子供は長老に連れ出されて無事だったけど、村は奪われ、森は焼き払われて農場に変えられた……」
「うむ……」
「あなたは生きていた頃のボーの心臓を仕込まれた人形、そして今の今まで村を守って来たのね?」
「……確かに……『気』を読めると言うのは本当らしいの」
「あなたの怒りが二百年経っても消えていないのはよくわかるわ、でもショッカーなんかに利用されちゃ駄目」
「じゃが、ワシは白人どもに復讐できる機会を二百年待ち続けておったのじゃぞ、奴らはその機会を与えてくれると約束したのじゃ」
「確かにショッカーと行動を共にしていれば復讐は果たせるかもしれない、でもショッカーは世界征服を目論む悪の秘密結社よ、あなたの故郷だってきっと我が物にしようと考えてるわ」
「むむ……」
作品名:目を覚ませ! ライダー! 作家名:ST