目を覚ませ! ライダー!
ショッカーが現れたと言う連絡を受けたライダーチームが現場に急行すると、しばらく見なかった顔がそこにあった。
「なんだか久しぶりだな、死神博士!」
「お、おう……『暑いよ! ライダー!』以来だから、一年半ぶりになる」
「てっきりショッカーをクビになったのかと思っていたぞ」
「くっ……人を小ばかにして言いたいことを言っていられるのも今のうちだけじゃ」
「怪人はどうした? 見当たらないようだが、どこかに隠れているのか、それともお前自身が戦おうとでも言うのか?」
「怪人はおらぬわ、だが怪人を超える戦力ならここにおる!」
「そこに? なにやら古びた木彫りの人形があるだけだが?」
「ふふふ……この人形は呪いの人形よ、その名もボー・デクノ!」
「デクノ・ボー?」
「違う! 勝手に姓と名を逆さにするな! 欧米かっ!」
「だいぶ古いギャグだな、久しぶりに聞いた気がするよ」
「呪いの人形の噂を頼りにアフリカを探検してまわっておったのでな、道なき道を進み、果てのないジャングルに分け入り、猛獣と戦い、泥水をすすり……思えば苦難の日々じゃった……」
「う~ん、お前のことだ、今言った事は全部戦闘員にやらせてお前は輿にでも乗ってふんぞり返っていたんじゃないのか?」
マッスルがそう言うと、死神博士を取り囲んでいた戦闘員たちが互いに顔を見合わせて小さく頷き合う、どうやら図星だったらしい。
「お前たち、そろそろ真剣に商売替えを考えた方が良いんじゃないのか?」
マッスルが更にそう言うと、戦闘員たちはもう一度顔を見合わせ合って何度も頷き合った……おそらく今日は戦闘員が本気でかかってくることはないだろう。
だが……。
「みんな、気を付けて! その人形は強い気を発しているわ、ただの木彫りなんかじゃない!」
現代に生きる陰陽師、アベノセイコがそう言うのだ、ライダーチームの面々は緩みかけた気を引き締めた。 すると……。
「前振り、ご苦労」
呪いの人形・ボー・デクノがゆっくり進み出て来た……いや、別に勿体を付けていたわけではない、脚は付け根から動くものの膝関節がないので体を左右に揺らしながら少しづつ脚を前に出して進むしかないのだ、その動きはまるで玩具のロボットだ。
だがセイコが警戒するほどの気を発しているとあらば『呪いの人形』と呼ばれるだけのことはあるのだろう、ライダーチームはボーに視線を集めた。
全高は1メートルあるかないか、ほぼ二頭身とかなりデフォルメされたユーモラスとも言えるプロポーションだが、その顔は大きくくぼんだ眼窩の奥に青白い光を宿し、耳まで裂けた口には鋭い牙が並んでいる。
猛禽類の羽で飾られた腰蓑を付け、手首、足首も羽で飾った、勇猛な部族の戦士を思わせるいでたちで右手には槍も携えている、よくよく見れば二頭身のプロポーションも却って不気味に見える。
だが、ライダーたちが身構えたのを見て、死神博士はちょっと面白くない様子だ。
「誰が前振りじゃ、このワシを前座扱いしおって」
「誰も前座だなどとは言っておらん、じゃが、下がっていた方が身のためじゃぞ」
「ライダーどもを倒すのはこのワシじゃ、貴様などその道具に過ぎんわ」
「ほほう、そんなことを言っても良いのかな?」
「貴様をアフリカの奥地で見出してここまで運んで来たのはこのワシじゃ」
「誰が連れ出せと頼んだ? そこらにいる戦闘員どもに盗み出させただけじゃろうが」
「じゃが、貴様は白人共に復讐したい、その機会が与えられるなら喜んで同行しようと言ったではないか」
「ああ、確かに言った、じゃが、この者たちは白人には見えんぞ? あのバッタのバケモノはわからんが、他は日本人のようじゃが? バッタも日本語を話しておるしな」
「こいつらを倒さねば世界征服への道は拓けんのじゃ、いつもいつも邪魔ばかりしおる」
「つまり、今の今まで負け続けておったと言うことじゃな?」
「く……黙れ!」
死神博士がボーの頭を小突こうとするとボーは槍を天に向かって突き出した。
「黙るのはそっちじゃ!」
ガラガラピシャーン!
「ぎゃっ」
その瞬間、青白い光が死神博士を直撃し、博士は泡を噴いて仰向けに倒れた。
「ふん、口ほどにもない……死なない程度に手加減してやったのをありがたく思え」
ボーはそう言うと槍を前に突き出す。
「危ない!」
槍の先端から青白い光が発射される、ライダーチームは二手に分かれて飛びのいたが、背後の岩は砕け散った。
「結構な威力だな」
「稲妻よ、ボーは稲妻を操るんだわ!」
「そのようだな、稲妻の速度は超えられん、だが槍を向ける動きは遅い、油断さえしなければ……」
「違う!」
アベノセイコがそう叫んだ瞬間、三人ライダーが青白い光に包まれて倒れ伏した。
「うわっ」
「ぐっ」
「げっ」
「ボーは稲妻を操っているの! 槍から発射してるわけじゃない! 思い通りの場所を攻撃できるのよ!」
「く……」
「うう……」
「くそっ……」
稲妻の直撃をまともに受けた三人ライダーだったが、改造人間のライダーはもとより、強化スーツに身を包んでいるライダーマンとマッスルもそれくらいで致命的な負傷には至らない、うめきながらも立ち上がろうとした。
「ほほう、稲妻の直撃を受けても立ち上がるとは……中々の戦士と見た、敬意を払おう、しかしワシの前に立ちはだかろうとする者を排除しないわけには行かぬ」
そう言い放ったボーの青い光を帯びた目、その光が強さを増して行ったかと思うと赤く色を変える。
「「「うおおおお」」」
一度は立ち上がったライダーたちだが、頭を抱えてうずくまってしまった。
そして稲妻攻撃は受けなかったレディ9も頭を抱えて膝をついてしまった。
「みんな! どうしたの? え? うううう……」
セイコも頭が混乱し始めたのを感じる。
(これは……精神錯乱波……いけない! このままじゃ……)
セイコは大気に漂う『気』を集めて精神を集中した、陰陽師同士の戦いでも相手を錯乱状態に陥れる術が用いられる、セイコはその際の対処法を身に着けていたのだ。
「志のぶさんっ!」
身体的ダメージは受けていない志のぶは立上りクナイを手にする。
(まさか……同士討ちさせようとしているの?)
このままでは家族同様に思っている仲間たちが同士討ちを始めてしまう。
「志のぶさん! ごめん!」
セイコは宙に素早く五芒星を描くと気を込めて志のぶに放った。
「ああっ!」
志のぶがよろめいて膝をつく……だが再び立ち上がった志のぶはすっかり正気を取り戻していた。
「志のぶさん! ごめんなさい、あなたに気を打ち込んだわ」
「ええ、わかった……効いたわ」
「普通の人ならショックで気を失ってしまうけど……」
「ええ、頭の中に直接ガツンと来たわよ、でもありがとう、おかげで正気に戻れたわ」
「良かった……」
「まだよ、あの人たちにも正気に戻ってもらわないと」
「でも今ので気を使い果たしちゃった……しばらく道力は使えそうにないの」」
「大丈夫、ここからはあたしが何とかする!」
志のぶ、いや正義のヒロイン・レディ9は同士討ちを始めてしまった三人ライダーの戦いの輪の中へ飛び込んで行った。
「あなた! しっかりしなさい!」
「なんだか久しぶりだな、死神博士!」
「お、おう……『暑いよ! ライダー!』以来だから、一年半ぶりになる」
「てっきりショッカーをクビになったのかと思っていたぞ」
「くっ……人を小ばかにして言いたいことを言っていられるのも今のうちだけじゃ」
「怪人はどうした? 見当たらないようだが、どこかに隠れているのか、それともお前自身が戦おうとでも言うのか?」
「怪人はおらぬわ、だが怪人を超える戦力ならここにおる!」
「そこに? なにやら古びた木彫りの人形があるだけだが?」
「ふふふ……この人形は呪いの人形よ、その名もボー・デクノ!」
「デクノ・ボー?」
「違う! 勝手に姓と名を逆さにするな! 欧米かっ!」
「だいぶ古いギャグだな、久しぶりに聞いた気がするよ」
「呪いの人形の噂を頼りにアフリカを探検してまわっておったのでな、道なき道を進み、果てのないジャングルに分け入り、猛獣と戦い、泥水をすすり……思えば苦難の日々じゃった……」
「う~ん、お前のことだ、今言った事は全部戦闘員にやらせてお前は輿にでも乗ってふんぞり返っていたんじゃないのか?」
マッスルがそう言うと、死神博士を取り囲んでいた戦闘員たちが互いに顔を見合わせて小さく頷き合う、どうやら図星だったらしい。
「お前たち、そろそろ真剣に商売替えを考えた方が良いんじゃないのか?」
マッスルが更にそう言うと、戦闘員たちはもう一度顔を見合わせ合って何度も頷き合った……おそらく今日は戦闘員が本気でかかってくることはないだろう。
だが……。
「みんな、気を付けて! その人形は強い気を発しているわ、ただの木彫りなんかじゃない!」
現代に生きる陰陽師、アベノセイコがそう言うのだ、ライダーチームの面々は緩みかけた気を引き締めた。 すると……。
「前振り、ご苦労」
呪いの人形・ボー・デクノがゆっくり進み出て来た……いや、別に勿体を付けていたわけではない、脚は付け根から動くものの膝関節がないので体を左右に揺らしながら少しづつ脚を前に出して進むしかないのだ、その動きはまるで玩具のロボットだ。
だがセイコが警戒するほどの気を発しているとあらば『呪いの人形』と呼ばれるだけのことはあるのだろう、ライダーチームはボーに視線を集めた。
全高は1メートルあるかないか、ほぼ二頭身とかなりデフォルメされたユーモラスとも言えるプロポーションだが、その顔は大きくくぼんだ眼窩の奥に青白い光を宿し、耳まで裂けた口には鋭い牙が並んでいる。
猛禽類の羽で飾られた腰蓑を付け、手首、足首も羽で飾った、勇猛な部族の戦士を思わせるいでたちで右手には槍も携えている、よくよく見れば二頭身のプロポーションも却って不気味に見える。
だが、ライダーたちが身構えたのを見て、死神博士はちょっと面白くない様子だ。
「誰が前振りじゃ、このワシを前座扱いしおって」
「誰も前座だなどとは言っておらん、じゃが、下がっていた方が身のためじゃぞ」
「ライダーどもを倒すのはこのワシじゃ、貴様などその道具に過ぎんわ」
「ほほう、そんなことを言っても良いのかな?」
「貴様をアフリカの奥地で見出してここまで運んで来たのはこのワシじゃ」
「誰が連れ出せと頼んだ? そこらにいる戦闘員どもに盗み出させただけじゃろうが」
「じゃが、貴様は白人共に復讐したい、その機会が与えられるなら喜んで同行しようと言ったではないか」
「ああ、確かに言った、じゃが、この者たちは白人には見えんぞ? あのバッタのバケモノはわからんが、他は日本人のようじゃが? バッタも日本語を話しておるしな」
「こいつらを倒さねば世界征服への道は拓けんのじゃ、いつもいつも邪魔ばかりしおる」
「つまり、今の今まで負け続けておったと言うことじゃな?」
「く……黙れ!」
死神博士がボーの頭を小突こうとするとボーは槍を天に向かって突き出した。
「黙るのはそっちじゃ!」
ガラガラピシャーン!
「ぎゃっ」
その瞬間、青白い光が死神博士を直撃し、博士は泡を噴いて仰向けに倒れた。
「ふん、口ほどにもない……死なない程度に手加減してやったのをありがたく思え」
ボーはそう言うと槍を前に突き出す。
「危ない!」
槍の先端から青白い光が発射される、ライダーチームは二手に分かれて飛びのいたが、背後の岩は砕け散った。
「結構な威力だな」
「稲妻よ、ボーは稲妻を操るんだわ!」
「そのようだな、稲妻の速度は超えられん、だが槍を向ける動きは遅い、油断さえしなければ……」
「違う!」
アベノセイコがそう叫んだ瞬間、三人ライダーが青白い光に包まれて倒れ伏した。
「うわっ」
「ぐっ」
「げっ」
「ボーは稲妻を操っているの! 槍から発射してるわけじゃない! 思い通りの場所を攻撃できるのよ!」
「く……」
「うう……」
「くそっ……」
稲妻の直撃をまともに受けた三人ライダーだったが、改造人間のライダーはもとより、強化スーツに身を包んでいるライダーマンとマッスルもそれくらいで致命的な負傷には至らない、うめきながらも立ち上がろうとした。
「ほほう、稲妻の直撃を受けても立ち上がるとは……中々の戦士と見た、敬意を払おう、しかしワシの前に立ちはだかろうとする者を排除しないわけには行かぬ」
そう言い放ったボーの青い光を帯びた目、その光が強さを増して行ったかと思うと赤く色を変える。
「「「うおおおお」」」
一度は立ち上がったライダーたちだが、頭を抱えてうずくまってしまった。
そして稲妻攻撃は受けなかったレディ9も頭を抱えて膝をついてしまった。
「みんな! どうしたの? え? うううう……」
セイコも頭が混乱し始めたのを感じる。
(これは……精神錯乱波……いけない! このままじゃ……)
セイコは大気に漂う『気』を集めて精神を集中した、陰陽師同士の戦いでも相手を錯乱状態に陥れる術が用いられる、セイコはその際の対処法を身に着けていたのだ。
「志のぶさんっ!」
身体的ダメージは受けていない志のぶは立上りクナイを手にする。
(まさか……同士討ちさせようとしているの?)
このままでは家族同様に思っている仲間たちが同士討ちを始めてしまう。
「志のぶさん! ごめん!」
セイコは宙に素早く五芒星を描くと気を込めて志のぶに放った。
「ああっ!」
志のぶがよろめいて膝をつく……だが再び立ち上がった志のぶはすっかり正気を取り戻していた。
「志のぶさん! ごめんなさい、あなたに気を打ち込んだわ」
「ええ、わかった……効いたわ」
「普通の人ならショックで気を失ってしまうけど……」
「ええ、頭の中に直接ガツンと来たわよ、でもありがとう、おかげで正気に戻れたわ」
「良かった……」
「まだよ、あの人たちにも正気に戻ってもらわないと」
「でも今ので気を使い果たしちゃった……しばらく道力は使えそうにないの」」
「大丈夫、ここからはあたしが何とかする!」
志のぶ、いや正義のヒロイン・レディ9は同士討ちを始めてしまった三人ライダーの戦いの輪の中へ飛び込んで行った。
「あなた! しっかりしなさい!」
作品名:目を覚ませ! ライダー! 作家名:ST