目を覚ませ! ライダー!
「良く考えてみて……ショッカーがやろうとしていることは、二百年前にあなたの故郷を奪った白人がした事と同じなの、あたしたちは世界の平和を守ろうとショッカーと戦っているの、あなたが村を守ろうとしたのと同じように」
「守る……か……」
「ええ、そう、人は愛するものを守ろうとする時に強くなれるものよ、それがなぜだかあなたにもわかっているでしょう?」
「……ああ……それが正義だからだ……」
「そう、誰かの大切なものを奪おうとする戦いに正義はない、そして、復讐は更なる復讐しか招かない……違うかしら?」
「娘……お前の言う通りだ、今になって復讐を果たしたとして何になろう……あの時からもう二百年も経っているのだ、戦士を殺し、村を奪った白人たちの子孫が残っていたとしても彼らには罪はないな……わかった、ワシも村に戻って守り神としての使命を全うすることとしよう」
「わかってくれてありがとう……」
「それはこちらの台詞だったな……ワシも道を踏み外さずに済んだ、礼を言おう……じゃがもう少しだけ力を貸しては貰えぬか?」
「あたしにできることなら」
「少しばかり『気』を貸して欲しいのじゃ、元の村に転移するにはワシの『気』だけでは少し足りんのじゃよ」
「そんなことならお安い御用よ……」
「おお、『気』が溜まって行く……もう充分じゃ、重ねて礼を言う……では、さらばじゃ」
そう言い残すとボー・デクノはその場から消え去って行った。
「うう……」
「おお……」
「ライダー、ライダーマン、気が付いたか」
「マッスル……俺はいったい何を?」
「ボーが放った精神錯乱波に惑わされて暴れていたのさ」
「君が止めてくれたのか?」
「少し手荒な真似をしないわけにいかなかったが……」
「いや、構わない、誰かを傷つけるより百倍ましだ……止めてくれてありがとう……だが、君はどうやって正気を取り戻したんだ?」
「それは……」
その時、アベノセイコこと安倍晴子が会話に割って入った。
「志のぶさんのおかげ、志のぶさんのキスで正気に戻ったのよ」
「お、おい、晴子ちゃん、止めてくれよ、気恥ずかしいじゃないか」
「そんなことないわ、素敵だったわよ、愛の力で正気に戻るなんて」
「愛の力か……それが人間にとって一番の力なのかもしれないな……」
「そうだな、男女間の愛に限らず、家族愛、郷土愛、仲間を愛する気持ち……そして正義を愛する心……それがあるから俺たちは戦えるんだ、愛するものを守るために……」
「ええ、そうね……」
晴子はそう相槌を打った……。
でも、心の中でこうも思っていた。
(あたしが生涯かけて愛する人、あたしを生涯愛してくれる人は一体いつあたしの前に現れてくれるんだろう)……と。
(終)
作品名:目を覚ませ! ライダー! 作家名:ST