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秋月あきら(秋月瑛)
秋月あきら(秋月瑛)
novelistID. 2039
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魔導士ルーファス(2)

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首ちょんぱにっく2


 ファウストだ!
「何事だ?(見たところルーファスだが……)」
 ルーファスだが生首だ。
 明後日の方向には胴体が倒れている。
「見世物は終わりだ」
 ファウストは片腕で半円を描くように振って生徒たちを追い払う。相手がファウストということもあり、生徒は早々に散り散りに去って行く。
 残されたのは2分割されているルーファスとビビ。
 ファウストがビビに顔を向けるとエヘッと笑いかけてきた。
「説明したまえ」
「首ちょんぱです!」
「首ちょんぱ……だと?(そんなことは見ればわかる)私が聞きたいのは、どうして首と胴が離れているかだ。切り口を見たところ通常ではく、しかも生きているようだ」
 ファウストは臆することなく平然と生首を拾い上げ、首から脈を測って生存を確かめた。
 ほっと溜息を吐いたビビ。
「(よかった、殺ってなかった)え〜っと、その剣で切られたみたいで、ちょうどファウスト先生のところに相談に行こうとしてたとこなんです」
 と、血塗られた剣を指差した。
 どうやらルーファスは気絶しているらしいのだが、ブンブンしたままだ。
 やはり、剣は勝手に動いているらしい。
「(まったく、サボってないか見に行くつもりが、もっと大きな問題を起こして)この剣は倉庫にあったものか?」
「はい、ド…ドラ……ドラドラの剣?」
「ドゥラハンの剣だな」
 すぐに訂正された。
 ファウストは辺りを見回してなにかを探しているようだ。
「鞘はどこだ?」
「えっ……たしか倉庫に……」
「どうして抜いたのだ?」
「抜いたっていうか、ガレキの山が崩れて……気づいたら首ちょんぱっていうか」
「瓦礫の山だと?」
「はい、ゴミみたいな塊が……(ヤバッ)」
 言いかけて口を両手で塞いだ。
 相手を殺しそうな勢いでファウストがガンを飛ばしている。
「……ゴミ?」
「違います! スゴイ、スゴイ……え〜っと価値のある魔導具様のガレキ……じゃなくて宝の山が!」
「もういい。つまりルーファスがいつもどおりヘマをしたということなのだな(問題は……)」
 考えながらファウストは生首をビビに差し出した。
「これを運びたまえ」
「え……(キモイ)」
 鼻血を垂れ流して白眼まで剥いている。キモさアップ!
「私は胴体を運ぶ」
「え……ちょっと……」
 嫌がりながらも渡されてしまったので、仕方なくビビは生首を両手で持った。本当にイヤなので、両腕をめいいっぱい前へ伸して首を遠ざけている。
 血だらけ(鼻血)の生首を抱えてるなんて、明らかに殺ちゃった狂人にしか見えない。しかも、ビビは大鎌を装備として使用することもあるので、それを見たことがある者はついに殺ったかと思うだろう。
 ファウストは胴を背負って先を歩き出していた。
「保健室に運ぶぞ」
「は、はい!」
 放課後でも生徒は多く残っており、胴体を運ぶ大男と血だらけの生首を運ぶ少女は奇異な目で見られた。二人が通り過ぎたあとにみなヒソヒソ話をはじめる。
「いくらファウスト先生でも人殺しはしないと思ってたのに」
「それにしても人殺してるのに堂々としすぎだよな」
「後ろの子は生首だぞ、しかも血だらけ」
 そんな会話などがなされていた。
 ひとよりちょっと耳のいいビビは、会話が漏れ聞こえてくると、ズキズキと胸が痛んだ。
「(注目されるのスキだけど、これはイヤ)」
 しかも、通った道に血痕(鼻血)が残っている。
 保健室の前までやってくると、ドアが自動的に開いた。
 中に入るとだれもいない。ビビはほっと溜息をついて安堵の表情を浮かべた。
 ルーファスの胴体はベッドに寝かされ、頭部はその傍らに置かれた。
 生首は顔面血だらけでおぞましいことになっている。
「うん、洗ってあげよう!」
 ビビは生首を持って、室内に設けられた水道に向かった。
 近くの戸棚にはガーゼなどが置いてある。明らかに目につく位置にある。ビビの目にも映ったハズだ。
 が、生首は蛇口の真下に位置された。
 ファウストは止めずに生温かい視線で見守っている。
「(まさかな……)」
 と思った瞬間、なんとビビが蛇口をひねった。
 バジャジャジャジャッ!
 傾斜角90度の滝のごとし放水!
 雜だ、洗い方が雜だ。てゆーか水攻めの拷問だ。
 ルーファスがカッと眼を開いた。
「ひゃああああっ、な、ぶへっ!」
 口から水をぶへっと拭きだした。
「ルーちゃんじっとしてて」
「ごぶっ、おぼれる……鼻と口に水が……」
 陸上でおぼれるルーファス。
 三途の川が見えそうになっていたところで水は止められた。
 蛇口のコックには浅黒い手が添えられていた。
「本当に死ぬぞ」
「首ちょんぱでも死なないんだからへーきへーき♪」
 無邪気にビビは笑っていた。
「死ぬし! ファウスト先生ありがとうございました」
 ビビに向かって声を荒げ、救世主に向かってお礼を言った。明後日の方向に顔を向けながら
 血は洗い流せたが、びしょびしょだ。頭髪が思う存分水を吸っている。
 ビビはじーっとルーファスの後頭部から長く伸びている髪を見た。そして、何気ない顔をしてキュッとつかんだ。
「遠心力で水が飛ぶかも」
「頭が飛ぶし! その考え絶対危険だからね! オリンピックにこんな競技あるけど違うから!」
 ルーファスは早口で声を荒げた。
 はじめのうちは怖いだとかキモイだとかで生首をイヤがっていたビビだが、だんだんと熟れてきておもしろがっているフシがある。
「ぎゃははははっ!」
 突然ルーファスが笑い出した。ビビがなにかをしたのかと思われたが、犯人はファウストだ。真顔でルーファスの胴体をくすぐっていた。
「物理的には切り離されているが、空間は繋がっているな」
 切り離されていても、胴になにかをすれば首が反応する。呼吸をしたり、血を流したりできるのも、胴と首が完全に切り離されていないことを意味している。
「ぎゃははははっ!」
 またルーファスが笑い出した。
 今度はビビだった。
「わぁ、おもしろ〜い♪」
「ひひひっ、ひゃ、ひゃめて……苦しい」
 ジタバタと胴体がベッドで暴れる。
 ついでにブンブン!
 刃が何度もベッドに打ちつけられたが、まったく切れるようすはない。血塗られさびついた剣では、物を切ることはできない。
 ガシッ!
 なんとファウストが刃を素手で受けた。
 ルーファスとビビは唖然とした。
 ――切れてない。
 やはり切れないのだ。
 ファウストは冷静な顔つきだった。
「この呪われた剣は首しか斬れないのだ」
「やっぱり僕はこの剣で首をはねられたんですか?」
「そうだ。封印していた鞘から抜いたせいでな」
「(抜きたくて抜いたんじゃないんですけど)どうやったら呪いを解くことができるんですか?」
「まずは鞘を持ってこい、話はそれからだ」
「ちょっとビビお願いできる?」
 顔を向けられずに話しかけられたビビはあからさまにイヤそうな顔をした。
「えぇ〜、めんどくさぁ〜い」
 まただ、めんどくさい。
「お願い、一生のお願い!」
 一生とは生まれて死ぬまで。現在生首で半分死んだようなもんだ。
「しかたないなぁ、スイーツ1個ね」
 うわっ、がめつい!
 ビビは部屋を飛び出して行った。
 残された生首は……。