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秋月あきら(秋月瑛)
秋月あきら(秋月瑛)
novelistID. 2039
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魔導士ルーファス(2)

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「ルーちゃんごめんね、ぜんぜんキモくないよ、むしろ怖いっていうか、う〜ん、ほら、そんな姿で人前に出たらみんなビックリしちゃうよねっ! もしかしたらモンスターと間違えられた攻撃されちゃうかもっ」
「ぜんぜんフォローになってないし」
「でもだいじょうぶだよっ、仮装行列ってことにすれば!」
「たしかに……こういう手品みたことあるけど(それにきのうよりはマシかな)」
 女体化事件の記憶は新しい。アレに比べたら、首がちょっとハズれちゃってるくらい――問題大アリだ。
「やっぱりムリ。ビビがファウスト先生呼んできてよ」
「え〜っ、めんどくさ〜い」
 めんどくさい、めんどくさい、めんどくさい。
 ルーファスの脳裏で木霊した。
 自分のピンチを『めんどくさい』の一言で片付けられてしまった。
 ショックで背中を丸め落ち込んでいたルーファスだったが、なにやら思い付いたようすで顔を上げた。正確には頭を持っている腕を上げた。
「そうだ、こうやってさ、腰を曲げてると老人みたいで後ろからだと、頭が見えなくても不自然じゃないっぽくない?」
 まるで世紀の大発見でもしたかのような弾んだ声。
 だが、ビビの反応はひややかだった。
「でも正面から見たら意味ないじゃん?」
 無言のまま見つめ合う二人。まるで時間が凍りついたようだ。
 …………。
「ですよねーっ!」
 堰を切ったようにルーファスが声をあげた。
 このノリのままビビが話はじめる。
「ところでさー、ちょっと聞きづらかったんだけど、聞いてもいいよねっ!」
「どうぞどうぞ、どんどん聞いちゃってよ!」
「じゃあ聞いちゃうけどさ!」
 と、ここまで変なテンションのノリで軽快に会話が進んでいたのだが、急にビビの顔に影が差したようなどんよりした表情で、ず〜んと重々しく口を開いた。
「どうしてずっと剣を振り回してるの?」
「えっ?」
「しかもどんどん大振りになってるんだけど……(怖い)」
「……え?(剣を……僕が?)」
 ルーファスは片手で持っていた頭部をもう反対側の手に向けた。
 ブンブンブンブン!
 ドラマーかっ!
 てな勢いで、片手がブンブン叩くように振られていた。しかも、その手にはしっかりと剣が握られている。そう、血塗られたドゥラハンの剣だ。
「ええーっ! いつの間に!?」
 自分でもビックリだ。
 まったくの無意識。
 ブンブンしちゃってる意識もなかったが、剣を拾った記憶すらなかった。
「え、なに、どういうことっ!?」
 目を丸くしながら、助けを求めてルーファスがビビに近づく。
「やだっ、こっちこないで!」
「逃げないで助けてよ!」
「ブンブン来ないで!」
「止まんないんだって!」
 ブンブンブンブン!
 自分の生首を抱えた男が、剣をブンブンさせながら、いたいけな少女を追いかけ回す図。
 もう完全にB級ホラーだった。
「きゃーっ!」
 ピンクのフリフリツインテールが倉庫を飛び出した。
「待ってよ!」
 ブンブンがあとを追う。
 逃げるフリフリ、追うブンブン。
 学院をブンブン、フリフリ駆け回る。
 ブンブン、ブリフリ、ブンブン、フリフリ。
 はいっ、みなさんもごいっしょに、ブンブン、フリフリ、ブンブン、フリフリ。
 ブンブン、フリフリ、ブンブン、フリフリ!
 ブンブン、フリフリ、ブンブン、フリフリ!
 ブンブンブブン、フリフリン!
「キャーッ!」
 どこまっでも続くかに思われたブンブンフリフリだったが、突然の乙女の悲鳴で終止符が打たれた。
 ピタッと立ち止まったルーファス。
 辺りを見回すと人だかりができていた。
 放課後に残っていた学生たちにいつの間にか囲まれていた。
「モンスターだ!」
 だれかが声をあげた。
 声の主を必死に探しながれ、手で持った首であちこち見渡す。
「違うんです、私はこの4年トラス組のルーファス・アルハザードです!」
 口では誤解を解こうとしているが、行動が伴っていない。
 ブンブンブブン、ブンブブン!
 血塗られた魔剣を振り回し、今にも大量虐殺しそうな勢いだ。
「人殺し!」
 だれかが叫んだ。
「だれか先生を呼んで来い!」
「みんなで退治しちゃおうぜ!」
 口々に恐ろしいことを言い出す。ルーファスはゾッとした。
「(マズイ、完全に誤解されてる)」
 ビュン!
 風を切って光球が飛んできた。明らかに攻撃魔法だ。
「ぎゃっ!」
 短く悲鳴をあげてルーファスは避けた。が、その拍子に生首が投げ出される。
 ゴロロン!
「イタッ、イタタ、痛い!」
 顔面から床にダイブするようなもんだ。かなり痛い。
 床に生首が転がるようすを見た生徒たちは、さらに怯え、中には敵対心を強める者もいた。
「くらえっ!」
 炎の玉がルーファスの生首に向かって飛んできた。室内で攻撃魔法をぶっ放すなんて。明らかに悪い教師たちの影響だ。本来は校則で禁止されている。
 生首には手足がないので炎の玉を避ける術がない。慌てて身体が拾いに走るが、明後日の方向に駆け出して壁に激突。
「うぎゃ!」
 もう眼前まで炎が迫っていた。
「ルーちゃん危ない!」
 ビビが叫びながら生首に駆け寄った。
 そして、生首をシュート!
 サッカー選手も顔負けのナイスシュートを放った。
「グギャゲエェェェェッ!」
 この世のものとは思えない絶叫をあげて生首がぶっ飛ぶ。
 ボール――じゃなかった、生首の軌道を見事に描く鼻血。
 そして、顔面から壁に激突。
「ブゲッ」
 潰れながら床にゴトンと落ちた。
 白眼を向いて鼻血を垂れ流す生首。
 もう悲惨すぎる。
 ビビが苦笑いをしている。
「ヤバッ……(殺っちゃったかも)」
 ビビちゃんはぜんぜん悪くない!
 ルーファスを助けようとしただけ!
 ちょっと方法が過激だっただけ!
 首から下の胴体も死んだか気絶したのか、床に倒れたままピクリともしない。
 苦笑いのままビビも動かない。
 そこへ再び炎の玉が飛んできた。投げやがったのは同じ野郎だ。
 もう今度こそ絶体絶命だ!
「ドゥラハンの盾!」
 長身の影が生首の前に立ちはだかり、防御魔法で炎を防いだ。
 いったいこの影はだれだっ!
 わかりきってますが。