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秋月あきら(秋月瑛)
秋月あきら(秋月瑛)
novelistID. 2039
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魔導士ルーファス(2)

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「そりゃ大変だぁ、早く引き上げてやらんと」
「現場監督に怒られちまう」
「んだんだ」
 男たちの会話が終わり、ルーファスの身体が一気に持ち上げられた。
 地上に放り出されたように生還したルーファスはドロ怪人と化しており、見るも無惨な有様だった。すぐに固まることはないだろうが、このままだと怪作の彫像ができあがってしまう。
 急にルーファスの身体が浮いた。抱っこされた、お褒め様抱っこだ。
「シャワーを借りれませんか? そうですか……」
 ルーファスは目が見えずその声と抱えられていることで状況を判断するしかなかった。
 小刻みにルーファスの身体が揺れた。彼が走り出したようだ。
「学院まで戻ろう」
 生コンにまみれながらも、相手の温もりが感じられた。肌からだけではなく、その声からもだ。
「(きっと僕を助けてくれたのは彼だ)」
 その声でわかる。
 生コンの仲から助けられ、汚れを落とすために学院に運ばれる。お姫様抱っこで、こんなにも身体を密着させながら。相手の身体も生コンで汚れてしまっているだろう。けれど、きっと彼はそんなことなど気にしてもないだろ。
 ただ、ルーファスのことを想ってくれているだけなのだ。
 なんだかルーファスは胸が苦しくなった。嬉しさと言うより、なんとも言えない辛さが込み上げてくる。切なさとでもいうのだろうか……。
「(今まで女の子にだって、こんなに好かれたことないのに……彼は男だけど……どうしよう、もし彼が僕が男だって知ったら……)」
 決して相手を騙そうなんて思ってはいない。けれど言い出せない。はじめは女体化したなんて――という恥ずかしさで言い出せなかったが、今は別の意味で言い出せない。
「(どうしよう……)」
 モヤモヤとしながら考えていると、どうやら学院まで着いてしまったらしい。
「この先は着いていけないけど、ひとりで大丈夫? ゆっくり降ろすよ」
 丁寧に廊下に降ろされたルーファスは、目をこすって薄目で当たりを確認した。
 シャワールームの入り口だ――女子の。
「……………(ヤバイ)」
 男子と女子のシャワールームは隣接すらしておらず、離れた場所に部屋事態があるため、ここから入って男女のシャワールームに分れてるなんてころはない。つまり、途中で男子のほうにコソッと入るなんてこともできない。
 ここはまっすぐ行ったら、確実に女子のシャワールームに直行だった。
「(男子のシャワールームに……いや待てよ、男子のとこにこの身体で入ったら……)」
 絶対ムリ!
 どっちのシャワールームもムリだった。つまり学院のシャワールームを使おうとした時点で詰んでいたのだ。
 お姫様抱っこでモヤモヤ考えていたせいで、うっかり考えが及ばなかったのだ。
「(マズイ……マズイよコレ)」
「どうしたの、早く落としてこないと。俺もシャワーを……そうか、着替えがないな。ともだちの女の子に体操着借りてきてあげるから、それで我慢してくれる?」
「(よし、彼がどっかに行ってくれた隙に逃げよう!)はい、お願いします」
「あとでまたね」
 ルシが笑って手を振りながら歩き去って行く。
 チャンスが到来したルーファスは、ここぞとばかりに満面の笑みで手を振りながらルシを見送った。
「(よし、そのまま、そのまま消えてくださいお願いします)」
 角を曲がってルシの姿が見えなくなった。
 空かさずルーファスはダッシュでこの場を離れようとした。
 床を蹴り上げ一歩出た瞬間、目の前に現われた影に驚いて転倒してしまった。
「いったぁ〜い」
 声をあげたルーファスにワラワラと影が近づいてきた。
「だいじょうぶ?」
「うわっ、どうしたのその姿?」
「早く落とさないと!」
 女子3人。
 ルーファスの前に現われたのは女子3人組だった。
 立ち上がって逃げようとしたルーファスが――壮大にコケたっ!
 ズルッ!
 女子たちが驚いて小さな悲鳴をあげた。
「手を貸してあげるから、ほらっ」
 腕をつかまれ脱衣所に連れ込まれる。
「えっ、あの……ちょっと(マズイ、非常にマズイ)」
 あたふたするルーファス。あれよあれよという間に服まで逃がされはじめた。
「これってコンクリートじゃない?」
「えっ、うっそー。なんでこんな目にあったの?」
「表面固まってきてない?」
 口々にしゃべるので、だれがだれだかわからない。
 生コンのついた帯が投げ捨てられ、魔導衣の襟がすっと肩から抜かれた。
「(いやっ)」
 衣がはだけ豊満な胸が波打った。
 脱がせた女子が瞳を丸くして一瞬だけ固まった。
「(デカイ……しかもノーブラ)」
 そのまま衣は下半身まで脱がされようとしていた。
 ルーファスは自分の裸体を直視できず、瞳を固く閉じた。自分の身体であって自分の身体ではない。見ず知らずの女性の身体と言ってもいいくらいだ。
「(恥ずかしい、恥ずかしいよぉ)」
 見ず知らずの女子に、服を1枚1枚脱がされ、しかも絶賛女体化中。
 ここでハッと気づいた。下半身はダメだ、このまま下半身まで脱がされたら――トランクスをはいている!
 相手はルーファスが本当は男だってことを知らない。トランクスをはいているなんて知られたら、変態だと思われる。
 大変だ!
 ルーファスは相手の手を必死に押さえた。
「自分で脱げます、大丈夫ですから、もうホントに……ゆるして」
 相手の顔がきょとんとなった。
 ――許して?
 言葉の意味なんて理解できるわけがない。
「ん〜……ごめんね」
 とりあえず相手の子は謝った。
 そこへともだちが声をかけてくる。
「先入ってるよ!」
 と、声に反応してルーファスがそっちに顔を向けると――ポン!
 すっぽんぽん!
 あまりにも無謀な乳房が4つ。すでに服を脱いでいた二人の女子が立っていた。かろうじて、ひとりはタオルで下半身を隠し、もうひとりは前に立つ子が影になって花園は見えなかったが、あの山はしかと見た!
 聳え立つ連山がそこにはあった。
 とは言っても、ルーファスはすぐさま首が折れる勢いで顔を背け、ぶっちゃけほとんど見えてない。
「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさーい!」
 脇目も振らず駆けて逃げるルーファスが飛び込んだ先はシャワールーム!
 個室から出てきたボインと鉢合わせ!
 ブハッ!
 鼻血のシャワーを流しながらルーファスが後頭部から倒れた。
 意識が遠くなりかけて視界がぼやけて中で、ルーファッスはシャワールームに飛び込んできたピンクのツインテールを見た。
「ルーちゃんの変態!」
 そして、ルーファスは気を失った。