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秋月あきら(秋月瑛)
秋月あきら(秋月瑛)
novelistID. 2039
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魔導士ルーファス(2)

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 クルッと180度回って引き返そうとする二人。
「そんなことできるわけないだろう!」
 奥の部屋から聞こえてきた少年の怒号。
 すぐにルーファスは気づいた。
「クラウスだ!」
 引き返そうとしたいたことも忘れ、ルーファスは奥の部屋へと飛び込んだ。
 愕然とするルーファス。
「な……なん……(すごい魔力で立ち眩みがする!)」
 ビビもそれを見て驚きを隠せない。
「生きてる……生きてるよあれ!」
 二人の招かれざる客にルビーローズは微笑みかけた。
「お子様の来るところではなくてよ」
 ルビーローズの遥か頭上で紅く輝く宝玉。
 その宝玉の中に埋め込まれた禍々しい巨人の姿。象などその巨人の片手で軽く握りつぶされそうだ。それほどまでに巨大な宝玉だった。
「魔王級だな」
 つぶやく女の声が響き渡った。
 ルビーローズは驚いた。
「誰ッ!?」
 寸前まで気配を感知できなかったらしい。
「ふふふっ、神出鬼没にして生き字引のカーシャ様が来てやったぞ」
 どこから沸いてきたのかカーシャがこの場に現れた。というか、エレベーターではそんなに早く来られないので、本当にどこから沸いて出たのだろうか?
 クラウスは重々しい顔をした。
「まさかカーシャ先生はこれをご存じだったのですか?(これを学院で知っているのは僕と学院長だけのはず。国内外でもごく限られた人物しか知らないはずなのに!?)」
「魔晶化だな。滅びた魔導、いにしえの禁忌、地獄の檻……この場所にはかつて魔族と戦った精霊の超文明都市があった。魔晶はロストテクノロジーの一つで、主にエネルギー供給に使われる。まさかこの場所に残っていて、しかも稼働していたのは驚きだがな」
 話を聞いたビビは血の気が引く思いだった。
「魔晶化ってなに、だってアレ生きてるよ!!」
 ビビにも予想が付いていた。だからこそ声を荒げた。同じ魔族として――。
 そして、この場にはもうひとりの魔族がいた。
「わたくしが答えてあげましょう。過去から現在まで虐げられた魔族の一員として、何も知らない魔族のお嬢さんのために」
 ルビーローズは魔晶に向いて話をはじめる。
「魔族と一口に言っても、その種族は多岐に渡るわ。神でもなく、精霊でもなく、人間でもなく、奴らは自分たちの敵を一括りに魔族と呼ぶようになり、いつしかわたくしたち自身も自らを魔族を称するようになったわ。そして起こるべくして起きた過去における大戦の数々。ここにいる魔王は第三次聖魔大戦の英雄よ。魔族にとって英雄であるならば、当然奴らには大悪党よね。魔王を生け捕りにした奴らはどうしたのか、結果はこの通り、生かさず殺さず、半永久的に稼働するエネルギープラントとしたのよ。魔晶化とは、魔族を生きたまま発電機にするようなもの。魔晶化された魔族は久遠の苦しみを与え続けられる」
「そんな……ヒドイ……早く解放してあげて!」
 ビビは涙ぐみながら訴えた。
 しかし、それをしたらどうなるか――クラウスは首を横に振った。
「王都の電力はすべてここで生産されてるんだ、供給が止まれば都市は機能を失う。それにこの装置を止める方法は誰も知らない、少なくとも王国には伝わっていない。でもね万が一、中にいる魔王を解放する方法があったとしよう……解放された魔王は一夜でこの王都を死の都に変貌させるだろうね」
 ここで突然カーシャが――。
「妾はこれが欲しい」
「はぁーーーーーっ!?」
 ルーファスビックリ。
 カーシャはマジだ。
「これを兵器応用したら今の地上など容易く制圧できるぞ(ふふっ……我が天下)」
 ルビーローズの目つきがきつくなった。
「それをさせないために、わたくしたちは行動を起こしたのよ」
 これにクラウスは少し驚いたようだ。
「どういうことだい?」
「わたくしたちの秘密結社は平和を愛する団体。わたくしたちの目的はこの魔晶システムを管理し、誰にも使わせず、誰の目にも触れさせないこと」
「人間やその他の種族に害をなすつもりではないのかい?」
「とんでもないわ。このエネルギーを使って戦争をするつもりも、魔王を復活させるつもりもないわ。たしかに魔晶化は人権侵害も甚だしいけれど、凶暴な魔王を世にはなったら平和が乱されるもの」
「さっき言っていて事と違うような気がするけれど?」
「あれはあくまで史実を話しただけよ。魔族は虐げられてきたけれど、だからと言って過去の過ちを繰り返すわけにはいかないわ」
 ここで新たな男の声が響き渡る。
「そう、我々は過去の過ちを繰り返さない」
 金髪の若い男を確認したルビーローズが驚く。
「ゴールデンクルス、なぜ貴方がここに!」
「魔族なんかにこれを渡すわけにはいかないからね」
「わたくしたちは種族の垣根を越えて真の平和を……キャッ!」
 ゴールンクルスの手から放たれた光の槍がルビーローズの腹を貫いた。
 辺りは騒然となった。