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秋月あきら(秋月瑛)
秋月あきら(秋月瑛)
novelistID. 2039
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魔導士ルーファス(2)

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「持っているが君たちの役には立んよ。外部との通信はすでにシャットアウトされている」
 お人好しのルーファスは調べもしないで話を鵜呑みにしたが、実際に通信はシャットウトされている。制御ルームを制圧されているからだ。ただし――。
「……有線(ふにふに)」
 ローゼンクロイツがつぶやいた。
 テロリストは表情を崩さず、ローゼンクロイツは話を続けた。
「ボクが思うに、有線なら外と連絡が取れるハズだよ(ふにふに)。ただし、すべての回線が生きているとは思えないね(ふにふに)。無線による外部通信をシャットアウトさせているのに、有線もしていないなんて間が抜けているからね(ふにふに)。けれどすべての有線を遮断してしまったら、テロリストは外の情報も掴めないし、外の仲間との連絡もあるだろうし、要求があるならそれを伝える必用もある(ふにふに)」
 ルーファスはひらめいた。
「きっと生きてる有線は制御ルームにあるよ!」
 ここでビビは何気な〜く。
「ええっと、制御ルームってなに?」
 ルーファスが答える。
「そこが占拠されたせいで学院中のロックがかかって、きっと通信が遮断されてるのもそこのせいなんだよ」
「ええっと、ならそこを取り戻せばいいんじゃない?」
「……あっ」
 ポツリとルーファス。
 問題解決に一筋の光を見いだしルーファスが俄然やる気が湧いた。
「よし、制御ルームを奪い返そう!」
 そこに水を差すビビの一言。
「場所は?」
「……え?」
 何気ないビビの質問にルーファスは言葉に詰まり、ローゼンクロイツを見つめた。
「ボクも知らないよ(ふあふあ)」
 だれも場所を知らなかった。
 ローゼンクトイルがボソッと。
「……あっ(ふあふあ)」
 つぶやいた。
 何事かとルーファスとビビが首を傾げると、廊下を駆けてくる大勢の人影。逆方向を振り向くと同じように押し寄せてきている。どう見ても仲間だと思えない。
 状況を把握してビビが叫ぶ。
「挟み撃ちされちゃったよ!」
 焦るルーファスはすぐさま助けを求める。
「ローゼンクロイツどうにかして!」
 少しは自分でどうにかしようとする気はないのだろうか?
「……眠い(ふあふあ)」
 バッサリと拒否された。
 ローゼンクロイツも同じ状況にいるはずなのに、状況を打開する気ナッシング。それどころかここで寝る気だ!
 もうすでに立ったまま虚ろな目をしているローゼンクロイツ。
 ルーファスは身構えた。
「大丈夫、相手は僕たちのこと殺さないらしいから」
「でも痛いことはするんだよねぇ?」
「……痛いのヤダよぉ!」
 本当に情けないルーファスだった。
 敵はすぐそこまで迫っている。
 窓や教室はロックされていて逃げ込むことはできない。
 そのとき校内放送が流れてきた。
《黒魔導講師のヨハン・ファウストだ。現在学院はテロリストによって占拠され、一部の生徒が人質になっている。緊急防御コードが発動させたのはテロリストであり、生徒および学院関係者を室内に閉じ込めるためと思われる。制御ルームを奪い返すことに成功したが、解除コードが不明で私には手を打ちようがない。しかし、外部との連絡には成功し、すぐに救援が駆けつけるだろう……というのは気休めに過ぎない。我が学院の防御システムは難攻不落であり、外部からの救助は絶望的である。よって、現在室内に閉じ込められている者は自力で脱出し、運良く学院内を自由に行動できる者はテロリストを制圧しろ、以上だ》
 この放送によって動揺したテロリストの一瞬の隙を突いて、ルーファスとビビは縫うように敵の間を駆け抜けて逃げた。
「逃がすな追え!」
 すぐにテロリストが雪崩のように追ってくる。
 ルーファスは恐る恐る振り返った。
「先生は制圧しろっていうけど……ムリだよ!」
「だよね〜」
 ビビも納得。
 そして、ローゼンクロイツは――さっきの場所に取り残されていた。しかも寝てる。
 立ったまま寝ているローゼンクロイツにテロリストが束になって襲い掛かる。
 しかし、ローゼンクロイツは寝ている方が強かった。
 滅茶苦茶に有りと有らゆる魔法がローゼンクロイツから放たれる。
 単に寝相が悪いだけだった。
 ローゼンクロイツが敵の注意を引き受けているおかげで、ルーファスとビビは少ない敵を巻くことに成功した。
 必死に走ったルーファスはゼーハーゼーハー肩を上下させている。
「もう……走れない」
「ルーちゃん体力なさすぎ」
「あれだけ追いかけ回されたらだれだって……あれっ?(こんなところにあったっけ?)」
 ルーファスは自分の目の前にある物を見て首を傾げた。
「どうしたの?」
「見慣れないエレベーターがあるんだよ」
「この学校広いし、たまたまルーちゃんが知らなかっただけじゃないのぉ?」
「いちおう4年目なんだけど。それにね、ローゼンクロイツと違って方向音痴じゃないから道ぐらい覚えられるよ。絶対に今までこんなのなかったよ!」
「じゃあなんであるの?」
「さあ?」
 ルーファスは首を傾げた。
《ルーファウス!》
 突然のファウストの声にルーファスはビクッとした。
「は、はい!」
 校内放送だった。
《とにかくそこに入るのだ、クラウスがいる可能性が高い》
「わかりました!(……監視カメラで見られてたのか)」
 すぐにルーファスとビビはエレベーターに乗り込もうとした。
 ボタンを押してエレベーターが来るのを待つがなかなか来ない。
「遅いねルーちゃん」
「そうだね」
「故障してるんじゃない?」
「故障中なら故障中の張り紙してあると思うよ」
 チン♪
 ベルの音がしてエレベーターのドアが開いた。
「やっと来た」
 言いながらルーファスはエレベーターに乗り込んだ。
 さっそくボタンを押そうとしたビビが驚く。
「何これ!?」
「どうしたの?」
「地下100階直通になってるよ?」
「ええっ!?(この学院って地下5階までしかないハズなんだけど)」
 とにかく地下100階に向かう。
 動き出したエレベーターは徐々にスピードを上げ、身体が強く引っ張られるGが掛かる。
 長い時間を掛けてようやくドアが開いた。
「うぅ〜っ、気持ち悪い〜」
 青ざめているルーファス。
「ルーちゃんだいじょぶ?」
「酔った」
「まさかエレベーターで乗物酔いしてないよねぇ?」
「…………」
「……したんだ」
 ビビは呆れるしかなかった。
 ここから先は長い廊下が続いている。
 壁や床から放たれる紅い光。その光はまるで血管のように床や壁に張り巡らされる模様から放たれている。
「なんか不気味なとこだねぇ」
 ビビが身震いをした。
「本当だね、さっきから自分のドキドキしてる音がよく聞こえるんだけど」
「アタシもー。ルーちゃん怖いよぉ」
「ドク、ドク、ドクってどんどん強くなってる」
「ホントだ、ドクドクって……壁から聞こえない?」
「えっ?(もしかして自分の心臓の音じゃなくて廊下全体から聞こえてる!?)」
 二人はその事実に気づいた。
 嫌な予感が拭えない。
 前方に見える巨大な扉――閉まっていればいいのに、その扉は口を開けて二人を待っている。
 ルーファスは息を呑んだ。
「今日はここまでにしようか?」
「そうだね、また明日来よう!」