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秋月あきら(秋月瑛)
秋月あきら(秋月瑛)
novelistID. 2039
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魔導士ルーファス(2)

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古き魔晶の闇4


 ゴールデンクルスは恭しくクラウスにお辞儀をした。
「はじめましてアステア王。俺はあんたの遠縁に当たる者です」
「王族……君のことなんて知らないぞ」
「系譜からはとっくの昔に消されてますからね。けどありがたいことに、代々ここのヒミツは伝わってましたよ。今回の作戦を考えたのも俺ですから。まあ仲間に伝えていたのは表向きの作戦ですけどね」
 ルビーローズの理想と違える者。だとすれば驚異でしかない。
「妾のライバル登場というわけか」
 とつぶやいたカーシャにすぐさまルーファスはツッコミ。
「お願いだからカーシャ、話をややこしくしないで」
 とりあえずカーシャはルーファスに任せるとして、ゴールデンクルスの目的を問わなくてはならないだろう――それが推測であって欲しいと願いを込めながら。
 クラウスが口を開く。
「目的は?」
「力による支配」
「魔晶システムの兵器利用か?」
「それと、君から王座を奪うこと」
 心を映すような邪悪な笑みを浮かべたゴールデンクルス。
 ルビーローズに使役されていた爆弾はすでにクラウスから外れていた。
 構えるクラウス――戦う気だ!
 しかし、ゴールデンクルスは戦うずして制した。
「人質がいることをお忘れなく」
「クッ……」
 手が出せないクラウス。
 代わりにルーファスが口を出した。
「あなたたちは殺生はダメって聞いたぞ! 人質に手を出せないくせに!」
「残念ながら俺は違う。そして俺のシンパも違う。だから今から先代のアステア王には死んでもらう」
 先代の王――すでに王を気取っている。
「僕を殺したら魔晶システムを操作できる者がいなくなるぞ」
「だから言ったじゃないか。俺はあんたの遠縁なんだから、操作なんてお手の物」
「遠縁というのは真実なのかい?」
「仕方ない、証明してやるか」
 魔晶システムのコンピューターに向かって歩き出すゴールデンクルス。
 止めようと一歩踏み出したクラウスだったが、ゴールデンクルスは振り返って邪悪な笑みを浮かべるのだ。
「邪魔するなよ?」
 人質がいる限り手が出せない。
 しかし、もしも魔晶システムが奪われてしまったら、犠牲者は爆発的に増えることになるだろう。
 クラウスは苦悩した。
「(命の重さは計れるものではないと信じている。けれど、ここでなにもしなければ犠牲は確実に増える。全員を救いたいという考えでは甘いのか……できないのか!)」
 張り詰めた空気。
「ぎゃああああああ〜〜〜〜〜っ!!」
 突然聞こえてきた謎の叫び声。
 ゴールデンクルスも驚いて動きを止めてしまった。その瞳に映る人間ロケット――ルーファス。
 突然のことにゴールデンクルスはとにかく防御魔法を発動させようとした。
「シールド!」
 ゴン!
 顔面からルーファスはシールドに強打。透明なシールド面にルーファスのブタ顔がへばりついた。
 稲妻のようなその身の熟し!
「ピコ・ボム!」
 カーシャが放った魔法がゴールデンクルスの耳元で小爆発を起こした。
「ぐわあああああっ!!」
 耳を押さえてうずくまるゴールデンクルス。
「うおおおおおっ、耳が、俺の耳が……クソォッ!」
 さらにカーシャはゴールデンクルスの腹に蹴りを一発ぶちかました。
「妾の物だ!」
「ぐあっ!」
 床に転がったゴールデンクルスをルーファスがすぐさま取り押さえた。
「エナジーチェーン!」
 魔法の鎖で縛り上げ、さらに上に乗って押さえる。
「クソォォォォッ今すぐ人質を皆殺しだ!!」
「やれるものならやってみるがよい、ふふっ」
 カーシャは余裕の笑みを浮かべていた。
 ゴールデンクルスも気づいた。
 通信機が壊されていたのだ。
 すべてはカーシャの作戦だった。
 まずはルーファスを投げ飛ばすことにより、相手の驚きを誘うと共に、仲間に通信をさせる前にルーファスを防ぐという行動を強制させる。そこにすかさずカーシャの攻撃、狙ったのはゴールデンクルスが耳に取り付けていた通信機だ。
 これで一段落だ。クラウス救出の次は、防御システムの解除と人質の救出だ。
 しかし事は巻き戻ろうとしていた。
 簀巻きにされているゴールデンクルスが、全身をバネのようにしてルーファスに蹴りを喰らわせた。
「クソガキがっ!」
「うわっ!」
 吹き飛ばされたルーファス。
 ゴールデンクルスにマナが集まる。
「ハアアアアッ!!」
 怒号と共にゴールデンクルスは魔法の鎖を吹き飛ばした。ルーファスが魔力でつくった鎖を、ゴールデンクルスの魔力が上回ったのだ。
 ゴールデンクルスが光の槍をつくりだす。
「死ねーーーっ!」
「ルーちゃーん!!」
 ルーファスに槍が突き立てられる瞬間、ビビが立ちふさがった!
「きゃあッ!」
「ビビ!」
 ルーファスの叫び。
 光の槍はビビの腕を掠めた。
 床に迸った血。
 ルーファスの中で何かが切れた。
「許さないぞーッ!」
 我が身一つでゴールデンクルスに突っ込むルーファス。
 カーシャも急いで駆け寄る。
「莫迦かっ、素手で向かってどうするルーファス!」
 クラウスも急いだ。
「ルーファス落ち着け!」
 光の槍が薙ぎ払われる。
 ルーファスの胸が切り裂かれた。
 言葉を失ったビビ。
 クラウスも我を忘れた。
「フラッシュファイア!」
 爆炎がクラウスから放たれ、直撃を受けたゴールデンクルスが服を焦がしながら大きく吹き飛んだ。
 ビビは自暴自棄になっていた。
「もうヤダ、ヤダヤダヤダ! こんな物があるからいけないのッ!!」
 大鎌を高く振り上げていたビビの姿を見て全員息を呑んだ。
 激しい衝撃音が鳴り響いた。
 魔晶システムの制御コンピューターに突き刺さった刃。
 鼓動が聞こえる。
 激しい鼓動。
 まるで怒り震えるような鼓動の音。
 すぐさまクラウスが機器をチェックした。
「大変だ、エネルギーが急激に上昇してる!」
 カーシャは最悪の事態を想定した。
「これはあれが起きる可能性があるな。エレメンツ爆発に加えてメルトダウンか……確実に王都は跡形もなく吹っ飛ぶだろうな」
 その言葉にビビは我に返った。
「そんな……アタシ……」
「歴史に残る破壊神として名を残すことになるだろう(ある意味名誉だ)」
「そんなことになるなんて……アタシどうしたら……」
「歴史を伝える者がこの世に残っていればの話だ」
 さらに最悪なことを口走ったカーシャ。
 絶望するビビにさらなるカーシャの追い打ち。
「王都が吹き飛ぶくらいで済めば御の字だ。もっとも最悪なのは、爆発のエネルギーが巨大すぎてブラックホールを形成して星ごと丸呑みパターンだろうな(ふふっ、笑えん)」
 絶望感が漂う中で、その空気をぶち壊す一声。
「あーっ死ぬかと思ったーっ!」
 ビシッとバシッと立ち上がったルーファスだった。
「服ぱっくり切れてるよー、お気に入りのだったのになぁ」
 空気を読まずに服の心配をするルーファスだった。
 でもルーファスを見て歓喜が戻った。
「ルーちゃん!」
 ルーファスに駆け寄ったビビがそのまま抱きついた。
「く、首が絞まってるよビビ」
「よかった、どこもケガしてない?」
「切られたのは服だけだよ。それよりもビビは大丈夫?」