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秋月あきら(秋月瑛)
秋月あきら(秋月瑛)
novelistID. 2039
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魔導士ルーファス(2)

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トランスラヴ1


 放課後、薬品調合実習室で居残りをしているルーファス。その付き合いをさせられているローゼンクロイツと、そのおじゃまをしているビビ。
 今日の錬金術の授業で、薬品の調合が上手くいかずに、緑色の煙を教室に充満させるという事故を起こし、それを反省して自主的にルーファスは復習にいそしんでいた。
「そこの試験管、青いやつを取ってくれないかな?」
 目の前のビーカーを真剣に見つめながら、手だけを二人に向けた。
 が、だれも試験管を取ってくれない。
「あの、試験管を……」
 振り向くと、ローゼンクロイツとビビは楽しい錬金実験をしていた。
「この薬品とこの薬品を混ぜて、少しボクの魔力を加えてやると(ふあふあ)」
「なになに、なにが起こるの?(ワクワク♪)」
 大きめのビーカーに薬品を入れて、そこにローゼンクロイツが指先を浸けて、素早く離した。
 すると、ビーカーの中で錬金反応が起こりはじめた。
 はじめは小さな粒だった。それがだんだんとコンペイトウのようになり、やがて七色に輝き踊りだした。
「すっごーい、わぁキレイ♪」
 ビビは目を星のように輝かせて喜んだ。
 さらにローゼンクロイツは液体に指先を浸けて魔力を注ぐ。
「生まれる結晶は魔力を注ぐモノによって違うんだ(ふにふに)」
「アタシだったらべつのになるってこと? やりたいやりたーい!」
 楽しそうにはしゃぐビビを恨めしそうに、ルーファスは生温かい眼で見つめていた。
「(手伝ってくれるって言ったのに遊んでるじゃないか)」
 だれも試験管を取ってくれないので、仕方がなく目の前の調合中のビーカーから目を離して、青い液体の入った試験管に手を伸す。
「ん〜、んん〜っ(届かない)」
 あとちょっぴり届かない。ぷるぷると腕が震える。
 微妙に悪戦苦闘するルーファスを放置して、ふたりは楽しげに実験を続けている。
 新たに作り直した液体の中に、ビビはおそるおそる指を浸けようとしている。
「いきなり爆発することないよね?」
 尋ねるとローゼンクロイツは、横で新たな調合に夢中だった。シカト。仕方ない、彼は我が道を行くひとだ。
「ねぇねぇ、ルーちゃん見て見て!」
 だれにも構われないとつまらないので、ルーファスに声をかけるが、こっちも現在必死だ。
「ちょっと今忙しいんだ、あとでね」
「もぉ!」
 ぷくっと頬を膨らませて、ビビはプイッとそっぽを向いた。
「いいも〜んだ。アタシだけ楽しいことしちゃうもんね!」
 大きな声で言ってから、ビビは一気に指をビーカーの中に入れた。
 ピューン、パンパンパン、パーン!
 ビーカーから打ち上げ花火が連続して上がった。
 弾け飛ぶ火花が煌めきながら躍り、直撃を喰らいそうになったルーファスが悲鳴を上げる。
「ぎゃっ!」
 髪が焦げ、慌てた拍子に試験管を倒し、ビーカーの中身をぶちまけた。
 そして、床にできた水溜まりに火の粉が落ちた瞬間!
「ルーファスはおらんか?」
 教室にカーシャが乗り込んできた。
 ピンクの煙で視界が奪われる。
「げほっ、げほっ……(なにごとだ、またルーファスがしでかしたか?)」
 煙を手で払いながらカーシャはルーファスを探した。
「ルーファス、ルーファス!」
 手探りをしていると、むにゅっとした感触に触れた。
 煙が晴れてきて、ルーファスとカーシャが目を合わせる。
「「ギャーーーーッ!」」
 一斉に二人は悲鳴を上げた。
 ビビが当たりをキョロキョロ見回す。
「どうしたの!?」
 凍りついているルーファスとカーシャ。それを見たビビも凍った。
 いったいなにが起きたのか?
 カーシャが口火を切る。
「なんだこの爆乳は!」
 ルーファスの爆乳を両手で揉みしだきながら叫んだ。
「あうっ、む、胸!? カーシャこそそのマッチョ……」
 喘いで驚き、さらにカーシャを指差して指摘。
 女体化したルーファスと男体化したカーシャ。
 爆乳とマッチョ。
 ムキムキのボディで服がピッチピチで、まるでクマのような巨体。荒くれる漢の中の漢だが、顔は基本カーシャ。
 華奢な体とはミスマッチな爆乳と、元々髪も長くシルエットはまさに女の子。メガネっ娘属性もプラスされ、顔立ちも悪くないので、まさかの美少女。でも、ちょっと背が高い。
 変貌した自分のボディにショックを受けたカーシャは、背を向けるとスカートを捲り上げて、ナニかを確認した。
「生えとる!」
 ぱお〜ん♪
 ルーファスは恐くて自分の体を確かめられない。
 二人に起きた肉体変化。ほかの者は?
 ビビは自分の胸に手を当てて確かめた。
「(ちっちゃいけどある!)アタシ平気だよ?」
 小さくても胸は胸!
 全員の視線がローゼンクロイツに集中する。
 何事もなかったように調合を続けている。
 呆れたようにビビがつぶやく。
「いつもどおりだね」
 カーシャがあとに続く。
「どっちでも構わんだろう」
 はじめから中性!
 どっちにしろローゼンクロイツは我が道を行く!
 カーシャはそのマッチョボディでルーファスに詰め寄り、首を絞めながらブンブンと振った。
「いったい、なんの、調合を、しておったのだぁーっ!」
「こんなこと想定外だよ! 僕はただ中和剤を……」
「それがどうしてこうなる!」
「わかんないよ、ビビに聞いてよ」
 ふんぬっ!
 というかけ声が聞こえてきそうな勢いで、カーシャは振り返ってビビを睨んだ。
 ビビは一歩後ろに下がって逃げ腰。
「知らないよ、ローゼンクロイツに聞いて」
 全員の視線がローゼンクロイツに集中したが、以前としてマイペースに調合を続けている。
 ドスン、ドスン!
 象のような足音でカーシャがローゼンクロイツに詰め寄った。
「説明しろ!」
「ん?(ふに)」
 なんか今やっとカーシャがいることに気づいたリアクションだ。しかも、マッチョボディを見てもまったく驚かない。
「『ん?』じゃないだろう『ん?』じゃ! どうして性転換したと聞いておるのだ!」
「なにが?(ふにゃ)」
「見てわからんのか、妾も、ついでにルーファスも性別が変わっておるだろう!」
「ふ〜ん(ふにふに)」
「おまえだって変わっておるかもしれんのだぞ!」
 ゴッドフィンガーでカーシャはローゼンクロイツの胸を鷲掴みにした。
「…………(ん?)」
 ぽか〜んとするカーシャ。
 念入りに胸をまさぐってみる。
 つるぺた、つるぺた。
「…………(変わっておらんのか?)」
 さらにカーシャは禁断の一手を使った。
「これでどうだ!」
 股間を鷲掴みッ!
 真顔のローゼンクロイツはボソッとつぶやく。
「いやん(ふにゃ)」
 背筋がゾッとしてカーシャは空かさず手を引いた。
 そして、ローゼンクロイツは無表情のまま口元だけで悪意のある笑みを浮かべた。
「……変態(ふっ)」
 思いっきりカーシャが弄ばれている。
 鷲掴みの結果をビビは興味津々。
「ね、どうだったの? 男? 女?」
「いや……それが……(細くて長くて固かった)」
 重大事件が起きたような深刻な顔で考え込むカーシャ。
 その傍らで何事もなかったように実験を続けるローゼンクロイツは、何事もないようにスカートの中の股の当たりから試験管を取り出した。