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秋月あきら(秋月瑛)
秋月あきら(秋月瑛)
novelistID. 2039
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魔導士ルーファス(2)

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 それを見て唖然と言葉を失ったカーシャだったが、すぐにカッと頭に血が昇った。
「それかッ! ふざけるな、どんな場所に試験管を入れておるのか! いつからそんなキャラになったのだ!」
「たまにはいいでしょ(ふっ)」
 無表情のまま口元だけで笑った。なんかすごいムカつく笑い方だ。
 結局、ローゼンクロイツの性別はわかないし、彼はべつにどっちの性別だろうが構わないだろうが、カーシャとルーファスは大いに困る。
 ローゼンクロイツでは話にならんと考え、ビビに矛先が戻る。
「おまえが説明しろ、なにが起きたのか順序よく、サルでもわかるように!(あ、バナナ食べたい。帰りにでも買って帰るか、ふふ)」
「ええっと、ローゼンクロイツがおもしろい液体をつくってくれて、そこにあたしの魔力を注いだらいきなりドーン、バーン、キラキラってなって……でどうなったの?」
 とルーファスに顔が向けられる。
「私が調合していた中和剤とそれが魔導反応を起こして、気づいたらこの有様で……(どうしよう、この姿じゃ人前に出られないよ)」
「わかった、とりあえず調合した物を全部並べろ」
 カーシャの指示でテーブルに薬品などが1つずつ並べられる。
 腕組みをして仁王立ちをしたカーシャが唸る。
「う〜ん、わからん」
「わかんないの?」
 ぽそりと言ったビビをカーシャが睨む。
「おまえのせいだ。不確定要素のマナの成分がわからなければ、中和剤なり解毒剤をつくることはできない」
 が〜ん、ルーファスショック!
「やだよぉ、ずっと女の子のままなんて」
「妾だってマッチョなんて死んだほうがマシだ(死なんがな、ふふ)」
 二人にとっては死活問題だが、ローゼンクロイツは相変わらず黙々と、ビビは楽しそうにしている。
「いいじゃん、おもしろいし」
「「よくない!」」
 二人の声が揃った。
 ビビはお構いなしだ。
「せっかく女の子になったんだし、アタシと同じ髪型にしようよ。ねっ、ルーちゃん♪」
「えっ(すっごくイヤなんですけど)」
 凍りつくルーファスに詰め寄ったビビは、予備の髪留めのゴムを両手でビヨーンと伸ばし、ニコニコしながらルーファヅに見せつけた。
 逃げ腰のルーファスは1歩、2歩、と後ろに下がる。
 攻めるビビは3歩、4歩と間合いを詰める。歩くたびにニコニコが、ニヤニヤに変化している。
「逃がさないんだからっ」
 ビビが飛びかかった!
 捕まるルーファス。後ろで雑に結わいていた長髪をほどかれ、髪を二等分されて素早く結わかれた。
 ぴょんぴょんっとルーファスの頭で2本の尻尾が揺れる。
「うんっ、カワイい♪」
 目をキラキラさせて自分の作品を見つめるビビ。女子のカワイイは信用ならない。
「あとは女の子の服を着ればばっちり!」
「勘弁してよぉ」
 困った顔をするルーファスを見つめていたビビの表情が曇っていく。
「でも……アタシの服じゃ入らない(とくに胸が)」
 貧乳でも胸は胸!
 だいじょうぶ、ローゼンクロイツだって胸ないし!
 女子の服を着てはいないが、元々ルーファスがいつも着ている魔導衣は、シルエット的には男女兼用なデザインで、裾も二股に分れていないスカートっぽい感じなので、この服でも十分に女子で通用するだろう。
 ただ、もうひとりの被害者は変態が女装しているようにしか見えない。
「おまえら遊んでおらんで、解決方法を考えんか!」
「私に思い付くと思う?」
「あたしぜんぜんわかんないし」
 二人の顔を見てカーシャは溜息を吐いた。
「…………(だろうな、役立たずどもめ)」
 はじめから期待していない。残るひとりの空色ドレスは、その類い希なる魔導センスがあるが、性格的にまったく期待できない。
 カーシャは手のひらの上にポンとグーを落として叩いた。
「そうだ、パラケルススがいるではないか。おいルーファス、ちょっとパラケルススを探して来い」
「えっ、なんでも私が?」
「行けったら行け」
「やだよ、こんな姿で行けるわけないじゃないか」
「だれのせいで妾がこんな姿になったと思っておるのだ?」
「(絶対に僕のせいではないと思うんだけど)」
 思っても口には出さなかった。
 ビビはルーファスにじとーっと見つめられた。
「ひっど〜い、あたしのせいだってゆーの?」
「そうは言ってないよ」
 そう目は言っている。
 ぷくぅっと頬を膨らませたビビは、
「仕方ないなぁ、あたしもついってってあげるよ」
「(いやいやいやいや、ついてくとかじゃなくて)ビビが行って来てよ」
「え〜っ、めんどくさぁ〜い。ケーキ1個で手ぇ打ってあげてもいいよん」
「(……なにも悪いことしてないのに)ひとりで行ってくる(なんだよ、みんなひどいよ)」
 そそくさと教室を出て行こうとしたルーファスにカーシャが声をかける。
「ついでにイチゴジュースを買ってこい」
「は?」
 唖然としながらルーファスは振り返った。
 その瞬間、カーシャが第一投振りかぶった。
 ビューン!
「ぐえっ」
 潰れたカエルのように呻いたルーファスのおでこに小銭がヒット!
 デッドボールだ。
 おでこを抑えて言いたがっていると、さらに別方向からビューン!
「いてっ!」
 ルーファスの側頭部に小銭がヒット!
 投げられた方向を見るとビビが笑っていた。
「あたしもイチゴジュース」
「なんでビビまで投げるのさ」
「だって楽しそうだったんだもん」
 ビューン!
 また小銭が飛んできた。
 今度は素早くルーファスは避けようとしたのだが、なんと小銭が分裂した!
 4枚の小銭がトルネード回転をしながら迫ってくる。
 魔球だ!
「ぶえっ!」
 ルーファスの顔面にヒットした小銭が、チャリン、チャリン、チャリン、チャリンと音を鳴らしながら、床に次々と散らばった。
 ビビが目を丸くして驚く。
「お金を増やす錬金術!?」
 ボソッとカーシャが吐く。
「4枚投げただけだろう」
 魔球じゃねーし!
 ルーファスは小銭を拾いながら顔を上げ、困った顔をしてローゼンクロイツを見つめた。
「どうしてろーぜんくろいつまで投げるのさ?」
「そこに意味なんてあると思うのかい?(ふっ)」
 ほくそ笑みやがった!
 嫌がらせだ、絶対に嫌がらせだ!
「で、ローゼンクロイツはなに飲むの?」
 ルーファスが尋ねると、
「いらないよ、そんなもの(ふあふあ)」
 すっげー嫌がらせ!
 思わずカチンと来たルーファスは小銭を投げ返した。
 が、4枚とも目にも止まらぬ早さでローゼンクロイツはキャッチした。
「お金は大切にしないといけないよ、ルーファス(ふあふあ)
 おまえが先に投げたんだろう。
 嫌がらせを受けて時間を潰してしまっていると、カーシャは痺れを切らせて怒り出した。
「さっさと飲み物買って来んか!(のどが渇いて堪らん)」
 なぜのどがそんなにも渇くかって?
 カーシャはここにあった材料でわたあめっぽい食べ物をつくり、ビビと、ビビといっしょに食べていた。
 それを見たルーファスは声をあらげる。
「ビビまで!?」
 声に反応してビビがこっちを向いた。
「ん、ジュースまだ買ってきてないの?」
「…………(買ってきてないよ)」