魔導士ルーファス(2)
ルーファスを仕留め損なった魚は、尖った口を地面に突き立てて刺さったままだった。
じつはこの魚、王都アステアの東を流れるシーマス大運河で捕れるウナギなのだ。死後硬直が早く、その硬さは軍神ノーマスの拳ほどもあると云われ、つまりちょー硬いということである。これらのことから槍鰻[ジャベリンイール]と呼ばれ、250年以上前のアステア革命時には、物資不足の民衆たちがこのウナギを武器にしたなんて逸話も残っている。
魚屋のオヤジが装備していたジャベリンイールは、もう一匹手元に残っていた。
「そりゃ、よっと!」
かけ声と共にジャベリンイールが投げられた。
が、滑って手から抜けた!
この槍の難点は、ぶっちゃけウナギなので、ヌルヌルして投げるのに適さないってことだ。
ほっと溜め息を吐いてルーファス命拾い。
だが、ほっとしたのも束の間、まだルーファスは絶賛追われてる真っ最中。
しかも、なんだか追っ手の群衆たちが騒がしい。
「馬だ、暴れ馬だ!」
……は?
暴れ馬ですと?
そして、振り返ったルーファスが眼にしたものとは!?
作品名:魔導士ルーファス(2) 作家名:秋月あきら(秋月瑛)