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秋月あきら(秋月瑛)
秋月あきら(秋月瑛)
novelistID. 2039
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魔導士ルーファス(2)

INDEX|75ページ/104ページ|

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 不自然な強調だったが、ルーファスはそーゆーとこには気づかず納得した。
「つまり作戦ってことだね。よし、それで行こう」
 つくり笑いを浮かべながらルーファスがビビより前に出た。
「じつはそうなんだ。ビビと婚約したんだ、さっき」
 さっきとか思いっきり取って付けたような設定だ。
 見え透いたウソにセツが引っかかるわけがない。
「証拠はありますか?」
「し、しょう……こ?(そんなこと言われても)」
 困った顔でルーファスは後ろを振り向きビビと顔を見合わせた。
 ズンズンとセツが迫ってくる。
「婚約したというのなら、接吻くらいもうしたのでしょう? ここで見せてくれませんか?(そんなことふたりにできるわけない)」
 真っ赤な顔をしてビビは両手で口元を押さえた。
「で、できないよ!」
「ぼ、僕だってそんなこと!」
 ルーファスの頭からは湯気が出た。
 気づくとルーファスの眼前にセツの顔が迫っていた。
「わたくしはできます。これでまた掟が有効になります」
 なんとセツはルーファスの唇を奪おうとしたのだ。
「ちょっと待ったぁ!」
 二人の間に入ったビビちゃんのグーパンチがルーファスの顔面に炸裂!
「ぐはっ!」
 ぶっ飛ぶルーファス。キスは回避できたがこれは痛い。
 そして、ゴリラ現わる。
「なにしとんじゃボケカスがッ!」
 ゴリラに怒声を浴びせられたビビはちょっと足を後ろに引いたが、その足を一歩前に出して負けまいと身を乗り出した。
「ちょっと勢い余ってパンチしちゃっただけで、これを見せたかっただけだもん!」
 今ルーファスを殴ったばかりのビビの鉄拳。その指に輝く巨大な宝石。
「これがルーちゃんにもらった婚約指輪!」
 がーん!
 セツショック!
「そ、そんなまさか……(ウソや、ウソに違いない! ルーファス様がビビに婚約指輪を贈るなんてありえへん!)」
 素のセツはワコクの西方の方言が出る。
 しかし、この婚約指輪はどうしたのだろうか?
 立ち直ったセツは疑いの細い眼でビビの指でキラメク婚約指輪をガン見した。
「…………(う〜ん)」
 ビビの頬を滑る冷や汗。
「も、もうじっくり見たからオッケーだよねっ!」
 ササッとビビは手を引っ込めようとしたが、ガシッとセツにつかまれた。
「あやしい……」
 つぶやいたセツはなにを思ったのか、舌をペロッと出した。
 焦るビビ。
「えっ、なにしようとしてるの!」
 必死に腕を引っ張り逃げようとする。が、ゴリラ並みの腕力で離してくれない。
 そして、セツはペロッと指輪の宝石を舐めたのだ。
「甘い」
 と、一言。
 瞬時にそしらぬ顔でビビはそっぽを向いた。
 冷笑を浮かべ勝ち誇った顔をするセツ。
「アメちゃんです。ただのお菓子のアメちゃんではありませんか!」
 指輪の形をしたアメだったのだ。
 ネタバレしてもビビはブッとぼける。
「お、おかしでもいいじゃん。気持ちさえこもってれば婚約指輪にはかわりないもん!」
「そもそもルーファス様から贈られたものなのですか、ルーファス様?」
 ここでビビに尋ねても普通にウソをつかれそうだ。ルーファスに顔を向けたの正解と言える。
「え、その……あげたような、あげなかったような……どっちかっていうとあげてない寄りのような気がしないでもするようなしないようなするような……」
 しどろもどろだ。
 強気に攻められるとルーファスは弱い。いつもそうだ。
 ルーファスを見つめていたセツの視界にビビが割り込んできた。
「勝手にルーちゃんを連れて行かないでくれる?」
 強気の口調。そして、ビビの手にはいつの間にか大鎌が握られていた。完全に実力行使に出るつもりなのだ。
 セツは怯まない。
「友達代表の部外者は黙っていてください」
「ともだちのなにが悪いわけ? カンケーないし、ともだちだって家族だって、いきつけの喫茶店の店員だって、ルーちゃんのこと思ってるひといっぱいいるんだよ、ここには。だから勝手に遠い場所なんかに連れて行かないでって言ってるの。それにルーちゃんだってイヤがってるじゃん」
 ルーファスの気持ち……。
 哀しげな瞳でセツはルーファスを見つめた。
「本当に嫌なのですか? 心の底から本当に……」
「…………」
 ルーファスは難しい顔をして黙っている。顔を伏せたりしてセツから視線を外さないが、言葉は出て来ない。
 ほっぺたを膨らませたビビが叫んだ。
「ルーちゃんはっきり言ってやって!」
「そ、その……(セツと結婚なんてできないよ。答えは決まってるんだけど、そんな真剣な顔で僕を見てるセツに言いづらい)」
 ダメ人間。
 なあなあで済まされる局面ではない。セツは真剣なのだ。
 ビビは怒っていた――ルーファスにだ。
「サイテーだよルーちゃん。なんではっきり言えないの? ぐずぐず煮え切らないルーちゃんイライラする」
「イライラするって言われても」
 溜め息をもらしながらつぶやき、ルーファスはビビからセツに顔を向けた。
 瞳を潤ませているセツ。
 ルーファスが動いた!
 逃げた!
 セツの顔を見た瞬間、一目散に逃げた!
 うわあ、ルーファスサイテー。
 顔を大きく振ってルーファスに向けたセツの瞳から一粒が散った。
「それでも構いません!」
 突然、セツの袖口から巨大なマジックハンドが飛び出した。魔導ではなく機械だ。
 びっくり仰天メカにルーファスが捕まった。マジックハンドに持ち上げられ、拘束されてしまったのだ。
 目の前で起きた捕物劇にビビは瞳をまん丸にしてその場から動けない。
 周りのギャラリーも呆然としている。
 叫び声が木霊する。
「ぎゃーっ、助けてーっ!」
 逃げられないルーファス。
 そのままセツは愛の逃亡劇を開始した。
 ルーファスを拉致しながら、素早くこの場から逃げ去ったセツ。
 残されたビビはハッと我に返った。
「逃げられたーっ!」
 すぐにビビはふたりのあとを追ったのだった。