魔導士ルーファス(2)
白銀の美しい毛に包まれた霊竜ヴァッファート。
「それに無駄な血は流すことはない……あのとき、触れてみてわかったでしょう?」
「愚かな過ちを犯した、今ではそう思っている。あの剣には祖父の魂が宿っていた、封印から解放された剣がすべてを教えてくれた」
地竜の額には大きな傷痕があった。すでに治っているが、痕は残りそうだ。
ヴァッファートは教師のようにうなずいた。
「わかればよろしい。ならアンタの隠してる財宝の一部を渡しなさぁい!」
「なぜだ?」
「アンタが起こした顛末の損害賠償に決まってるじゃなぁ〜い!」
「人間っぱいな……あんた」
「国の守護者である前に人間が好きなの」
2匹のドラゴンは気配を感じて振り返った。
唖然とする男の姿。
「……貴様は!」
叫んだのはハガネスだった。
神々しいまでに凜としたヴァッファート。
「人間よ、慌てるな。まずは客人としてそちに茶でも振る舞おう」
「あァ?」
あまりの事にハガネスは呆然とした。
地竜にも今や殺気の欠片もない。ハガネスと見つめる瞳に鋭さはなく、どこか呆れているようにも見える。
「あんた方向音痴か?」
そんな質問をされるなんてハガネスは思いもしなかった。
雪が溶けそうなほど、なごやかな笑い声が響き渡った。
戦いを終えた男たちは、酒を酌み交わして友となる。
……ヴァッファートはオカマだが。
第16話_伝説のドラゴンスレイヤー おしまい
作品名:魔導士ルーファス(2) 作家名:秋月あきら(秋月瑛)