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秋月あきら(秋月瑛)
秋月あきら(秋月瑛)
novelistID. 2039
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魔導士ルーファス(2)

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伝説のドラゴンスレイヤー4


 ルーファスが辺りを見回す。
「ハガネスは?」
 いた!
 遠くで5人の敵に囲まれている。
 即席チームによる連携攻撃。腕試し、名声、予選突破、さまさまな思惑を胸に秘めながら5人が襲い掛かってくる。
 魔弾を撃つバズーカ砲での遠距離攻撃。
「あんな武器もアリなの!?」
 と、ルーファスが遠目からツッコミを入れている間に、ハガネスは砲撃をかわしていた。魔弾が地面に開けた穴は人が潜れるほどだ。1発でもくらったらアウトだろう。
 ハガネスが逃げた先には鞭使いの鞭が放たれていた。
「くっ!」
 声を漏らしたハガネス。足が鞭に取られた。転倒する!
 片手の剣は絶対に手放せない。ハガネスは地面についた片手で全体重を支えた。そこで支えて留まっただけではない、地面を押し上げてバネのようにすぐさま立ち上がった。すぐに敵が仕掛けてくる。
 背後からは短剣二刀流、左右からは棒術使いと剣士が攻めてきた。
 ハガネスの長剣が円を斬る。
 剣士が飛び退いた。
 短剣二刀流が高くジャンプした。
 最後の棒術使いがハガネスの剣を受け止めた。
 止めと言わんばかり短剣二刀流がハガネスの頭上に降りてくる。
 剣士も体勢を立て直し、鞭使いは隙を狙い、バズーカは遠くからいつでも標的を狙っている。
 発射!
 魔弾が短剣二刀流を吹っ飛ばした。
 即席チームの仲間割れか?
 違う、バスーカを放った男は地面に倒れていた。
 額の汗を拭ったルーファス。
「ふぅ、当たってよかった(しかも、ついでにもうひとりもやっつけられたミラクル)」
 今日は絶好調のルーファスがバズーカ男も狙撃したのだ。
 ビビとセツも動いていた。鞭使いをフルボッコ。二人かがりでブッ倒していた。
 バズーカ男も鞭使いもハガネスとの戦いに集中していて、隙を突いてうまく倒すことができた。かなり運がよかったと言える。
 ハガネスの相手は2人。
 棒術使いに突きをお見舞いして、剣士には長剣の柄の底で突き飛ばした。
 突きを喰らった二人はかなりの距離を飛ばされ、剣士のほうが闘技場の壁に打ち付けられた。
 棒術使いは軽装だったため、一撃でノックアウトされたが、剣士は軽鎧で守られたのか剣を構え直してハガネスに挑んできた。
「ウォォォォォォォォン!」
 まるで猛獣のような雄叫び。
 剣士は一撃を振り下ろした!
 紙一重でかわしたハガネスだったが、その顔に土塊が飛んでくる。さらに足をなにかに取られた。地面が割れている、亀裂の走った地面に足を取られたのだ。
 人間のパワーを越えている剣士の攻撃力。武器が成せる業か、それとも……。
 急に剣士がうずくまった。
「ウググ……」
 不気味な呻き声。
 様子がおかしいのは明らかだ。
 予選のようすを特別展望席から観戦していたクラウスの元へ、警備兵が飛んできた。
「大変です! 防御結界が停止しています、さらに警護に当たっていた者が数名行方不明に!」
「まずは予選の一時中断のアナウンスを! それから消えた者たちの捜索、怪しい人物も見つけ出せ!」
 クラウスはすぐさま命令を下した。
 会場に流れるアナウンス。
《防御結界に不具合が発生したため、予選を一時中断します。参加者は速やかに武器を下ろし戦闘を中止してください》
 ルーファスはほっと胸をなで下ろした。
「よかった(このまま大会そのものが中止になっちゃわないかな)」
 混乱を避けるために、観客や参加者に危機は知らせなかった。ルーファスも軽い気持ちで休憩モードに入ろうとしていた。観客たちも頭から水をかけられたようにシラけてしまった。
 しかし、それは超巨大モニターに映し出された。
 大きく宙を舞って飛ばされるハガネスの姿。金属の鎧ごとを抉った傷から血の珠が飛び散っている。
 観客席で若い女が悲鳴をあげた。
 闘技場に君臨した巨大な影。
 ルーファスは目を丸くして尻餅をついた。
「……ど、どどど、ドラゴンだ!」
 コロシアムに響き渡る地竜の咆哮!
 咆哮だけで地竜は地面に亀裂を走らせた。
 ドラゴンと一口に言っても各の違いがある。最高峰は〈精霊竜〉と呼ばれる他の生物を凌駕する力と知識を兼ね備えた神に等しきドラゴンたち。それに続くのがマスタードラゴンたち。さらにそこからA級、B級、C級と続き、ワニに毛が生えたようなドラゴンがE級にランクされる。
「ハガネス! その程度でくたばってもらっては困る。貴様はもっと苦しみながら死ななければならんのだ!」
 地竜が人語を発した。それなりの知能も持っている証拠だ。さきほど見せつけた咆哮で大地を割る力、全長は軽く12メティート(約14.4メートル)以上はありそうな巨大、それらを考慮して少なくともB級以上のドラゴンだ。
 参加者たち、観客席にいたクラウス魔導学院の教員たち、多くの者が戦闘体勢に入っていた。
 地竜は自分を狙う者たちを見回した。
「無駄な血を流すつもりはない。俺はハガネスだけに用がある。それでも俺に手を出すというのなら、俺もただでは済まんが、貴様らに出るであろう死傷者を想像してみろ!」
 たったひとりの犠牲で話は済む。下手なマネをして犠牲者を増やす必要があるだろうか?
 果たしてひとの命は計ることができないのか?
 逃げ出す観客たち。いつでも戦える構えをしていた魔導学院の教員たちも生徒の避難を優先させた。
 そんな中、残る者もいる。
 倒れているハガネスの前にビビが立って地竜と対峙した。
「友達をこれ以上傷つけたら許さないんだから!」
 その後ろから屈強な戦士たちがぞくぞくと現れた。
「こんなちっこい嬢ちゃんにカッコいいとこ持って行かせるわけにはいかんだろ」
「ドラゴンと一度戦ってみたかったんだ」
「止めを刺せば名を上げられる」
「こんなおもしろいことを前にして逃げ出せるか、ふつー」
「ドラゴンハントの基本は連携だが、これでは何人死人が出る事やら」
 総勢20名はいるだろう。参加者たちも各々の思いでドラゴンに戦いを挑む気だ。
 倒れていたハガネスがゆっくりと立ち上がった。
「俺一人でやる」
 周りがざわついた。
 伝説のドラゴンスレイヤー。話には聞いていても、すべてを鵜呑みにはしてなかったのだろう。それが『俺一人でやる』と宣言した瞬間、本物かもしれないという衝撃が走ったのだ。
「〈地鳴りの大狼〉の御手並拝見だな。その背中の大剣、抜いて見せてくれるんだろ?」
「おいおい、楽しみを独り占めなんてずるいぞ、俺にも戦わせろ」
「ドラゴンさんもハガネスをご指名してんだ。1対1の決闘に横やりなんて野暮だぜ」
 口々に戦士たちはしゃべりながら、結局はハガネスひとりに任せ見守った。
 ハガネスは重症を負っている。地竜の一撃は鋼鉄の鎧を穿つほどの威力。その攻撃もおろらくは手加減している。地竜はハガネスが苦しみながら死ぬことを望んでいるからだ。
 長剣を構えるハガネスを見て地竜はあざ笑った。
「宝剣ヴァルバッサブレードを抜かないのか? 貴様にその資格などあるはずもないがな」
 地竜はハガネスの背で沈黙を続ける大剣についてなにか知っている。
「俺になんの恨みがある?」
 ハガネスは尋ねた。だが、おそらく気づいている。