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秋月あきら(秋月瑛)
秋月あきら(秋月瑛)
novelistID. 2039
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魔導士ルーファス(2)

INDEX|67ページ/104ページ|

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「俺の両親は親父が伝説の戦士、母は伝説の武闘家だった。生まれたときから俺は過度の期待されていた。おれは両親や周りの期待に応えようと懸命に励んだ。親父と母の修業は本当に辛かった。それでも俺は堪え、強くなった。自分でいうのもなんだが、腕には本当に自信があるんだ。それでも周りの期待ってやつは、遥か先にあったんだ。あんたにわかるか、俺の気持ちが?」
「ちょっと違うかもしれないけど、私の父はそりゃもう優秀な魔導士で、今もこの国の防衛大臣をしてたりするんだけど、生まれてきた私は落ち零れで……がんばってるつもりだったんだけど、期待に応えられないって気づいたときからはもう……。うちの一族ってみんな赤系統の髪の色をしてるんだけど、私だけこんなんだし、どうせもう期待もなにもされてないだろうし……はぁ」
 どんよりとルーファスは重い空気を背負った。
 ハガネスがつぶやく。
「……そうか」
 二人とも重い空気で押しつぶされそうな顔をしている。
 そして、しばらくしてハガネスが再び口を開く。
「俺は逃げたんだ。期待を背負って生きていくのが嫌になって、親元からとにかく逃げ出した。独りで旅に出て各地を廻った。そんな旅の途中だった、俺があのドラゴンと出会ったのは。クラスで言えばマスタードラゴン、実力から言えば〈精霊竜〉クラスだった。だが、俺が会ったときには、もうろくも酷く、ゆえに破壊者となってしまったらしい。彼は言ったんだ『自分を殺してくれと』、自分がぼけていると自分でわかるうちに、これ以上ぼけてこの地を破壊する前に(お前のように力のある者を待っていたとも言われた)」
「じゃあドラゴンを倒したって言うのは本当だったんだ」
「止めを刺したのは事実でも、戦って勝ったわけじゃない(それでも我を忘れた彼に抵抗されて重傷を負ったが)。ドラゴンを仕留めたって部分だけに尾ヒレがついて、話が膨らんで、俺が伝説の両親を持つ素性が知られ、背中の宝剣のことも知られると、さらに話は膨れ上がっていった。そうなってくると、期待されるってレベルじゃない。神のように崇拝する者まで出てきて、俺は人前で剣を抜くことすらできなくなった。これまでいくつもの大会に足を運んだが、周りの期待を裏切ってしまうと思うと出場できなかった。優勝するだけじゃ期待を裏切る、大会で伝説のひとつもつくらなきゃ、期待には応えられないんだ」
 肩を落とすハガネス。
 いつになくルーファスは真剣な眼差しをしていた。
「期待を裏切ったらいけないんですか?」
「……なに?」
「ひとの期待を裏切るのは僕だってイヤですよ。でもそれでなにもできなくなったら意味ないですよ。僕もいつか父と和解して認めてもらいたいとは思ってますけど、自分なりにやってみてその結果を受け入れて、少しでも前に進んでいくことにしたんです(……その結果、ちょっと自堕落な感じなってるところもあるけど)」
 茂みからぴょこっと桃色のツインテールが飛び出してきた。
「あたし思うんだけど、別に負けちゃってもいいんじゃない? ハガネスに勝ったひとが次に伝説になるだけの話で、世の中なにも変わんないと思うけど。てゆか、覆面被ったらいいよ、顔隠して出場したらいいじゃん?」
 いきなり出てきたビビにルーファスとハガネスは唖然。
「いつからそこにいたの?」
 と、ルーファスが口をあんぐりさせながら尋ねた。
「ハガネスがゲロったあたりから」
 ゲロって、ゲロって今まで伏せられてたのに、アッサリ言いやがった!
 とりあえず、かなりはじめのほうからビビはいたらしい。
 ハガネスは重い腰を上げた。
「もう本名で登録してしまったから、今さら顔を隠したところでどうにもならない」
「今まで身なりを変えて偽名で大会に出場とか考えなかったの?」
 ビビの質問に度肝を抜かれたハガネス。
「か、考えもしなかった……!」
 コソッとビビがルーファスに耳打ちをする。
「このひとバカなの?」
「そんな質問されても困るよ」
 二人の姿をハガネスはほそ〜い目で見ている。
「聞こえてるぞ」
「「えっ!?」」
 同時に驚くビビとルーファス。
 遠くからアナウンスが聞こえてくる。
《E組予選開始まであと5分です。参加者の方は早急に第1ゲート前にお集まりください。時間内に集合場所に現れなかった場合失格になります》
 ビビがルーファスの腕を引く。
「早く早く!」
「あ、うん」
 ルーファスは返事をしながらハガネスに顔を向けた。
 うなずぐハガネス。
「もう覚悟は決めた、あとは悔いが残らぬよう戦うのみだ」
 3人は集合場所に急いだ。