魔導士ルーファス(2)
「おれを知らないだと、さては田舎もんだな! 覚えておけ、〈赤っ鼻のボンジョボン〉とはおれのことだ。おれは強い強いんだぞ、よし剣を抜け、かかってこい、〈地鳴りの大狼〉さんよぉ、おまえの背中のでっけえ剣は飾りか?」
挑発されてもハガネスはシカトを決め込んだ。
ついにボンジョボンが剣を抜いた。
酒場での決闘がついにはじまるのかっ!?
「かかって来いってつってんだろ坊や!」
叫んだボンジョボン。
抜かれた剣が木のテーブルに叩きつけられ、真っ二つに切断された。乗っていたグラスが宙に跳ね上がり、中身がビビの顔に掛かった。
「きゃっ(……あ、アップルティー)」
ハガネスが飲んでいたのは酒ではなく、アップルティーだったのだ!
というのは置いといて、やむなく立ち上がったハガネスは、荒んだ鋭い眼でボンジョボンを似た見つけた。
「…………」
だが、なにも言わない。
「なんか言ったらどうだ、やり返してこねぇのかおい!」
ボンジョボンは切っ先をハガネスに向けながら挑発してくる。
調子にノっているボンジョボンは、さらになにをしてくるかわからない。
「マズイよこれ、どうにかしなきゃ」
ルーファスは不安顔でつぶやいた。
しかし、
「ケンカを売られたのはわたくしたちではありませんし」
と、あっさり言い放つセツ。
「(雇い主として彼の実力も見ておく必要があります)」
セツはそういうことを考えていた。
動向を見守る二人――を見て、ビビは前へ出た。
「よぉ〜し、ここはアタシがガツンといっちゃうよぉ!」
なんだか張り切っちゃってるビビちゃん。
「待ちなさい」
セツが腕を伸ばしてビビの行く手を遮った。
ボンジョボンがハガネスに斬りかかった!
ついにハガネスが背中の大剣を抜くかッ!?
すってんころりーん!
「ふげぼっ!」
奇声をあげたボンジョボンが床に落ちていたグラス(テーブルを叩き割ったときに落ちた物)を踏んでコケた(自業自得)。
うつ伏せで大の字になったボンジョボンは動かない。
遠くから声が聞こえてくる。
「おまえたちなにをやってる! 会場でのケンカは御法度だぞ、大会出場者なら即出場停止に処分にしてやる!」
どうやら大会関係者か警備の者だろう。
いち早く動いたのはセツ。ルーファスの腕を引いた。
「逃げましょう!(ここで捕まったら大会に)」
スタコラサッサと?4人?は逃げた。
作品名:魔導士ルーファス(2) 作家名:秋月あきら(秋月瑛)