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秋月あきら(秋月瑛)
秋月あきら(秋月瑛)
novelistID. 2039
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魔導士ルーファス(2)

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 セツは右フックを飛び退いてかわすと、すぐに踏み込もうとしたが、ボスサルはフックを放ってすぐに身を引いて距離を取っていた。
「狙うはボスザルですが……」
 ちらりと服を着たメスザルを横目で確認したセツ。
 再びボスザルが右フックを放ってきた。
「ファイア!」
 セツの手から炎が放たれた。
 怯んだボスザル。これでいい。魔法が得意でないセツは、これでボスザルを倒すつもりはなかった。
 すぐさまセツが向かっていたのは服を着たメスザルの元だ!
 セツはメスザルから自分の鉄扇を素早く奪い返し、すぐに突風を巻き起こした。
 風はボスザルを呑み込み、その巨体を大きく吹き飛ばした。
 もう岩山の頂上にボスザルの姿はない。
 そこに立っているのはセツ。
「弱肉強食です。さて、服を返してくれますね?」
 笑顔でセツはメスザルに話しかけた。
 が、メスザルは服を着たまま逃亡!
 笑顔から一変してセツがゴリラの形相で怒る。
「なに逃げとんのじゃコラッ!」
 ボスが倒されたサルの社会に戦国時代が幕を開けた。
 このときを逃すまいと、ボスザルの座を巡ってサルどもがセツに襲い掛かってきた。
 が、今のセツに挑むなど……。
「おんどりゃー、道を開けんかボケカスッ!」
 鉄扇が巻き起こす嵐。
 逃げ出すサルども。
 逃げ出すビビちゃん。
 みんな涙目。
 逃げ出したサルどもの前に壁が立ちはだかった。そんな壁、さっきまではなかったはずだ。
 ビビは顔を上げた。そのまん丸な瞳に映るシュルシュルと舌を鳴らす大蛇の顔。
「猿どもよ、悪戯はそこまでにしておくのじゃ」
 低く大地に響く声。
 サルどもは一網打尽にされた。大蛇がすべてのサルを囲い込んでしまったのだ。
 セツはすでに服を奪い返して着替えを素早く済ませていた。
「どこのどなたか存じませんが、ありがとうございました。これはあなたにお返しします」
 大蛇に頭を下げてから、セツは服をビビに貸した。
 機械的に服を受け取ったビビは、ハッとして我に返った。
「てゆか、もっと驚こうよ! 大蛇だよ、ものすっごい大きい大蛇だよ! あたしたち食べられちゃうかもしれないんだよ焦ろうよ!」
 この大蛇にかかれば、ビビたちなど丸呑みだ。
 だが、大蛇にその気は毛頭なかった。
「裸の付き合いをした者は取って食ったりはせぬ。我がだれだかわからぬか?」
 ここまで言われれば、わからないはずがない。
「スラターンさん!」&「スララーン!」
 同時に声をあげた二人。ビビのほうは聞き流すことにしよう。
 スラターンは姿も違い、声はその巨大な体のせいだろう、太く響く声だ。すぐにわからなかったのも無理もない。
「我に乗るがよい。?ロロアの林檎?を売っておる売店まで案内しよう」
 と、申し出くれたスラターンにセツは、
「では、出口までお願います」
 スラターンは不思議そうな顔をした。
 そんな顔をしたのはビビもだ。
「リンゴは?」
「もう疲れてしまってそんな気分ではありません。わたくしは帰りますが、欲しいのなら勝手にひとりでお残りになれば?」
「セったんが帰るならあたしも帰るぅー。もう十分遊んだし」
 すでにセツはビビに背を向けて、スラターンの頭に乗せてもらっていた。
 そして、誰にも聞こえないようにセツがつぶやく。
「……セったん(なんて、はじめて言われた)」
 一息ついたセツは、頭によじ登ってくるビビに手伸ばして貸した。
 伸ばされた手をしっかりとつかむビビ。
「ありがと♪」
 ビビは満面の笑みだった。
 顔を背けたセツは少し恥ずかしそうに顔を赤くしていた。

 外伝_恥ずかしげな林檎 おしまい