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秋月あきら(秋月瑛)
秋月あきら(秋月瑛)
novelistID. 2039
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魔導士ルーファス(2)

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外伝_恥ずかしげな林檎1


 学生でもないのに、何気ない顔をしてクラウス魔導学院の廊下を歩くセツ。
「侵入するのは意外に楽でしたけれど(ルーファス様はいずこ?)」
 楽と言いつつも、すでに放課後。朝からルーファスの追っかけをしたにもかかわらず。
 放課後になってしまったことで、教室にいた生徒たちが溢れ出してくる。この中でルーファスが探すのは難しいだろう。見つける前に帰宅されてしまう可能性もある。
 セツが目を配りながら歩いていると、ピンクのツインテールをスキップしながら近づいてきた。
 鉢合わせする前に――と、セツが隠れる前に見つかってしまった。
「あーっ、セツ!」
「セツですが何か?」
「なにかじゃないよ、なんでガッコーの中にいるの!?」
「いちゃ悪いですか?」
「悪いに決まってるよぉ。そーゆーのふほーしんにゅーってゆーんだよ」
「では、そういうことで」
 冷たい態度でサラッと回れ右。セツは足早にこの場を立ち去ろうとした。
 が、その目に飛び込んできたルーファス。
 慌ててセツは物陰に隠れた。なぜかビビを引っ張って。
「なんであたしまで隠れなきゃならないの?」
「少し黙っていてください」
「もぉ(自分勝手なんだから)」
 ぷいっとそっぽを向いたビビだが、すぐに気になってセツと同じ方向を見た。
 ルーファスだけなら、隠れたり、気になったりはせず、さっさと本人の前に顔を出していただろう。
 なんと!
 ルーファスが女の子といっしょなのだ!!
 あっ……違った。オカマといっしょだった。
 ルーファスとユーリがなにやら話をしている。
 内容までは聞こえてこないが、怒ってるユーリにルーファスがビビっているのはわかる。
 急にユーリが笑顔になった。
 ルーファスがユーリになんかを渡した瞬間だ。
 いったいなにを渡したのだろうか?
 気になるセツ。
「今の見ましたか? ルーファス様が女の子にプレゼントを渡しましたよ、わたくし以外の女の子に」
「ルーちゃん最近あの娘[こ]と仲いいみたい」
 二人ともユーリが男子だということを知らない。ちなみにルーファスも知らない。
 ユーリとルーファスが別れた。
 何も言わずセツはユーリを追った。ルーファスではなく、ユーリのあとを追ったのだ。
 ふと、セツが横を見るとビビがいた。
「なぜついてくるのですか?」
「あたしの勝手じゃん」
「ふん」
 プイッとセツはそっぽを向き、ビビもプイッとそっぽを向いた。
 中庭までやって来た。
 噴水の見えるベンチに座ってメモを見ているユーリの姿。
「ウソかよっ!」
 突然、ユーリが大声を出して、ハッとした顔をして慌てて周りを見回した。
 びっくりドッキリしたセツとビビは、噴水の周りにある彫刻のフリをして硬直した。
 気を取り直した様子のユーリが再びメモを読み出したようだ。
 メモにはいったい何か書かれているのか?
 さらにセツとビビはユーリに接近。
 気づかれないように、気づかれないように、噴水の音よりも静かに気配を消して、そ〜っと近づく。
 急にユーリが立ち上がった!
 慌てたセツとビビは地面に伏せた。ユーリとの距離はすぐそこ。二人はユーリがいるベンチの真後ろに伏せていた。
「ビビちゃんと仲直りしなくちゃ!」
「んっ!?」
 驚いて声を出そうとしたビビの口をセツが手で押さえた。
 ユーリには気づかれなかったようだ。
 瞳を丸くしたビビはセツと顔を見合わせた。
「(どういうこと?)」
「(こっち見られてもわかりませんよ)」
「(仲直りって、なんかあったっけ?)」
「(ビビとこの子は仲が悪い。ということは敵の敵は味方と言いたいところだけれど、この子とルーファス様の関係も気になる。う〜ん)」
「(思い出せないぃ〜っ)」
「(悩ましいぃ〜っ)」
 顔を見合わせながら、二人はう○こしてるような苦しそうな表情をした。
 それを掻き消すように漂ってきた香水の匂い。
 気配ゼロで空色ドレスの麗人がユーリの前に立っていた。
 ユーリが瞳をキラキラさせる。
「あ、ローゼンクロイツ様」
「そうだよ、ボクはローゼンクロイツだよ(ふにふに)」
「そういう意味でお名前を呼んだのではなく……まあいいです。ところで、メルティラブでの一件のあと、ローゼンクロイツ様はどうなされたのですか?」
「なにそれ?(ふにゅ)」
 がーん!
 ユーリだけでなく、ビビもショック!
 現場で散々な目に遭わされたビビショック!
 という詳細は『マ界少年ユーリ・第2話ドリームin夢フフ』を読んでね!
 魔導士ルーファスの15話ともリンクしてるよ!
 慌ててユーリが話し出す。
「ええっと、あのお店で一緒にスイーツを食べながら、アタシとビビちゃんとお話したのは覚えていらっしゃいますよね?」
「……忘れた(ふあふあ)」
 ユーリちゃんショック!
「あはは、そ……そうですか。え、でも、〈猫還り〉をしてお店を破壊したのは知っていますよね?」
「……らしいね(ふぅ)」
 〈猫還り〉したローゼンクロイツは、その間の記憶がぷっつり途切れる。酒飲んで、暴れて、覚えてないパターンと同じだ。
「キミたちが外に出されたあと、ヤツの秘書が現れて事態を収拾したらしいよ。お店もヤツがお金を出して立て直すらしい……ヤツに借りを作るなんて苦笑(ふっ)」
 本当に嫌そうな顔をしてローゼンクロイツは口元を歪めた。
 慌ててユーリは話を逸らそうとする。
「ところで、こんなところでなにをなさっていたのですか? まさか、アタシを見つけてわざわざ声を掛けに来てくださったとか?」
「……迷った(ふあふあ)」
「はい?」
「家に帰りたいのに学院から出られない(ふぅ)」
「……あはは、迷子になられていたのですね。だったら、アタシが送りましょうか?」
「別にいいよ、明日も授業あるから(ふあふあ)」
「……あはは、そうですよね。明日も授業ありますもんね!」
 ローゼンクロイツはふあふあ歩き出した。
 そんな後ろ姿を見ながらユーリは誓う。
「もうアタシは止めません。貴方は貴方の信じる我が道を突き進んでください」
 そして、ユーリもこの場から駆け出していった。
 ひらり♪
 メモが地面に落ちた。ユーリの落とし物だ。
 緊張を解いたセツは息を吐いてメモを拾い上げた。
「いつ見つかるのか冷や冷やしました」
 同じくドッと息を吐いたビビ。
「ふぅ。でもローゼンには見つかってた気がするけど(チラ見された気がするし)」
「ところで、あのローゼンクロイツとかいうひとは、本当に男なのですよね?」
「うん、ルーちゃんの幼なじみの男の子」
「あんな格好をしているということは、恋愛対象はやはり殿方……なのでは」
「う〜ん、ローゼンって恋愛とかそういうのないと思うけど。ひとを好きになるってあるのかぁ(でも……ローゼンも人並みに恋とかしたら)」
 このとき、ビビとセツの頭の中には同じカップリングが浮かんでいた。
 ビビが髪の毛をかき乱す。
「うわぁ〜っ、ないな〜い!」
「わたくしはアリかと。ローゼンクロイツさんに恋愛感情がなければの話ですが」
「BL好きなの?」
「女装っ娘[こ]との絡みはBLなのでしょうか?」
「あたしに聞かないでよ!」
 ビビは顔を真っ赤に染めた。