小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」
秋月あきら(秋月瑛)
秋月あきら(秋月瑛)
novelistID. 2039
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

魔導士ルーファス(2)

INDEX|48ページ/104ページ|

次のページ前のページ
 

「メイドインワコクのパソコン! さすがルーファス様ですわ」
「う……うん(だから?)」
「家電と言えばワコク、ワコクと言えば家電。科学水準トップクラスの我が国のパソコンを使っていただき、ありがとうございます(しかも運命的なことに…… これは黙っておきましょう)

 どんな秘密があるのだろうか?
 いつの間にかセツはルーファスと至近距離にいた。運命の名の下に熱い視線を送ってる感じだ。
 そこにビビが割って入った。セツを押し飛ばして。
「そう言えば! なんでセツがここにいるの?」
「それはここが将来的にわたくしとルーファス様の愛の巣になるからに、決まっているからですわ」
「はいはい……そーじゃなくって、きのうの事件で連行されたんじゃなかったの?」
 きのうの事件とは、ルーファスとセツの追いかけっこである。町中で甚大な被害で出たので、セツは治安官に連行されて行ったのだ。
「幸い怪我人が名乗りでなかったので、賠償金だけで話をつけました」
 言い回しが少し引っかかる。
 なんらかの力が働いたっぽい。
 そーゆー力に自分の素性のこともあって気になるビビ。
「セツって何者なの?」
「今はただの学生ですけれど、将来的にはルーファス様の妻となる身です」
 そーゆー言い方ならビビもただの学生ではある。
 ルーファスも学生で、今日は休日のガイアなので学校は休み。
 だが、セツは?
 ルーファスが尋ねる。
「学生なら学校があるはずだよね、いつまでいるの?」
「卒業試験に向けて研究発表をしなくてはいけないのですが、それに必用な物を探しに来たのです」
「卒業って何年生?」&「なに探しに来たの?」
 同時にルーファスとビビが声を発した。
「中学3年生です」
 ルーファスの質問に答えてビビのことはシカト。
 首を傾げるルーファス。
「中学ってなに?」
 ルーファスは魔導幼稚園、魔導学園、魔導学院と進学した。
「わたくしの国では満6歳から満12歳までが小学校に通います。その後、中学校に3年間、計9年間が義務教育になります。さらに高校に進学すると3年間の修業期間があります」
 魔導学院は満13歳から満18歳が基本的に通っている。
 ビビが鼻で笑った。
「な〜んだ、あたしよりも1学年下ってことじゃん!」
 少し何かを考えるように黙り込んだセツは、しばらくしてお返しとばかりに鼻で笑った。
「この国のことは渡航前に調べましたが、年度のはじめは9月だそうですね。わたくしの国では4月からなので、わたくしがクラウス魔導学院に通っていたとしたら、同学年になりますが?」
「え?」
 きょとんとビビはした。
 ややこしい計算だが、セツの言っていることは正しい。
「わたくしの誕生日は聖歴982年7月2日です。この国では981年9月1日から、982年8月27日生まれまでが同学年になります。この点でもわたくしとルーファス様は運命の糸で結ばれていると言えますね、うふ」
 ここでルーファスは難しい顔をして考え込んだ。
 そして、恐怖するのだ。
「まさか僕の誕生日とか知ってるの!?」
「未来の夫ですもの。981年9月4日、現アステア国防大臣のルーベル・アルハザードとガイア聖教のシスター・ディーナとの間に生まれる。ケルトン魔導幼稚園卒、アルカナ魔導学園卒、現在はクラウス魔導学院の4年生ですよね?」
「あってるけど(個人情報が漏洩してる……怖い)どうやって調べたの?」
 セツ恐るべし。
「インターネットで調べました。ルーファス様のパソコンと同じメーカーのパソコンで!」
 ちょくちょくルーファスとの繋がりを挟んでくる。
 ビビちゃんはなんだかつまらなそうな顔をしている。
「パソコンの話なんてどーでもいいよぉ。それよりルーちゃんのど乾いたぁ」
 それを聞き捨てならないセツ。
「どうでもよくありません。このパソコンはメイドインワコク。ワコクと言えば科学大国。科学はこの世界を支える2つの支柱の1つなのですよ!」
「科学ってよくわかんなし〜。ねえルーちゃん?」
 顔を向けられルーファスきょどる。
「えっ、科学だよね科学、科学はすごいよ、うん(魔導の勉強しかしてこなかったからなぁ)」
 三大魔導大国に数えられるアステア。世界的に見ても、魔導は支柱であり、生活であり、根源であり、この世界その物とも云える。それに比べると科学はこの世界では……。
 セツが熱く語り出す。
「古くからある国では、魔導は全ての根源でしょうけれど、我々の国では魔導は科学の一分野に過ぎません。科学によって魔導は最大限に生かされ、効率的に使うことができます。ここにあるパソコンは、動力や基本概念こそ魔導によるものですが、ほとんどは科学によって構築させているものです。科学とは人類の知恵と知識の結晶なのです」
 ルーファスもビビもぽけぇ〜とした顔で、セツの話をぜんぜん理解してないっぽい。
 なのでビビは話を変えることにした。
「ねぇねぇ、さっきも聞いたけどセツってなにか探しに来たんだよね?」
「…………」
 セツは笑顔で無言。華麗なるシカトだった。
 びみょーな空気が流れて焦るルーファス。
「そ、そういえば、セツってなにか探しに来たって行ってたよね?」
「はい、良質なホワイトムーンを探しに来ました」
 ルーファスの質問にはちゃんと答えるセツ。ルーファス的には場を取り持ったつもりだったが、まったくの逆効果。ビビちゃん頬を膨らませて不満顔。
 ホワイトムーンとは、アステアのグラーシュ山脈のみで採取できる希少な鉱物である。魔力を帯びているため、利用価値は高く幅広い分野で使われるが、希少なために輸出には制限があり、アステア国内であっても取引は困難である。
 このような魔力を帯びた希少物質は世界各地にある。大きな魔力は自然に影響を及ぼし、その土地々に多彩な気候や特産をもたらす。極端な例を挙げると、砂漠のど真ん中にある氷の湖などがある。
「ねぇねぇ、だったら今から探しに行こうよ! せっかくの休日だし、お店もいっぱい出てるよ」
 ビビがはしゃいでお出かけを提案するが、もちろんセツはシカト。
 すぐにルーファスが取り持つ。
「せ、せっかくの休日だし、ホワイトムーンを探すの手伝うよ!」
「まあルーファス様が手伝ってくださるなんて!」
 この態度の差。ビビちゃんちょ〜不満顔。
 セツがルーファスの腕を引っ張る。
「ではさっそく参りましょう!(でも、ホワイトムーンが見つかってしまったら、国に帰らなくてはいけなくなってしまう。だからと言って、いつまでもここにいるわけにもいかず)」
 ルーファスと離れたくはないが、そうとばかりも言ってはいられない。
 一方のビビは、
「(つまんない。この子がいると、なんかつまんない。早く帰ってくれないかなぁ)」
 そしてルーファスは、
「(せっかくの僕の休日が……休みの日くらい引きこもりたいのに)」
 思惑が交差する中、3人はホワイトムーンを探しに出掛けたのだった。