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秋月あきら(秋月瑛)
秋月あきら(秋月瑛)
novelistID. 2039
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魔導士ルーファス(2)

INDEX|45ページ/104ページ|

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 ルーファスが惨状から目を背けた。
「最悪だ」
 悪夢であって欲しい。
 鬼女の笑い声が木霊した。
「婿殿を奪おうとするからじゃ!」
 そういう展開なの!?
 いつの間にかルーファスをめぐる戦いになってるの!?
 人質=ルーファス=元凶。
 が〜ん!
 ルーファスショック!
「僕のせいなのこれ!?(マズイよ、絶対にマズイよ。どうにかしなきゃ)」
 これがもしルーファスをめぐる戦いだったとしてら、少なくとも鬼女にとってそうなのであれば、解決方法はあれしかあるまい!
 お祭騒ぎに誘われて、いつの間にかカーシャが戻ってきていた。
「責任を取ってセツと結婚しろルーファス!」
 でも冷静に考えて、本当にそれで事態が収拾するのか?
 だってローゼンクロイツはセツとルーファスの流れに関係なく、フリーダムに暴れてるだけだし!
 それはそうなのだが、この緊迫した流れに押されて、ルーファスの思考は80パーセント低下していた。
「やっぱり僕が結婚するしかないのか……」
 妙に納得しちゃったルーファス。
 空が輝いた。
 半透明のドーム。
 周辺一帯がいつの間にか防御結界に封じ込められていた。妖怪大戦争が手に負えないと悟った魔剣連隊が、とりあえず隔離処置をしたのだ。
 エルザがボソッと。
「色恋沙汰に国は介入せず」
 防御結界の中で思う存分やれということだ。
「なんで妾まで、ホワイトブレス!」
 結界を壊そうと躍起になっているカーシャ。いっしょに閉じ込められたのだ。本人の口ぶりでは無関係だと思っているらしいが、原因の一端は明らかにカーシャにもある。
 カーシャも巻き込まれて当然だ!
 逃げ場のない結界内はサバイバルでバトルロワイアル。
 ねこしゃん大行進!
 この状況で最悪災狂の技が発動されてしまった。
 しかも、今回のねこしゃんはいつもより巨大。
 爆発の連鎖。
 巻き起こった爆煙が爆風に掻き消された矢先から、次の煙が辺りを覆う。
 ねこしゃんの突進爆発を食らった鬼女がよろめいた。
「くっ……」
 揺るんだ鬼女の手からルーファスが落ちた。
 ひゅ〜ん、ドスッ!
 高い場所から落ちた当然の結果がルーファスを待っていた。
 瀕死のルーファスは地面を這って逃げようとした。
 そこに運悪く無差別攻撃の電撃しっぽ!
「ギャアアアアアッ!」
 しっぽふにふに吹っ飛ばされ、再びルーファスは地面に叩きつけられた。
「死ぬ……もう死ぬ」
 周りにはねこしゃんたちも自由気ままに走り回っている。
「婿殿はどこじゃ!」
 鬼女の声が響き渡った。
 見つかったら大変だ。
 瓦礫の山に隠れながらルーファスは地面を這った。
 いったいこの妖怪大戦争はどうやったら決着はつくのか?
 瓦礫の頂上に立ったカーシャ。その腕には何者かが抱かれている。
「ええい、静まれ! この娘がどうなってもいいのか!」
 カーシャに抱かれているのは気を失っているセツだった。
 鬼女の動きが止まった。
「おのれ、人質を取るとはおんどれは鬼か!」
 ここで鬼女の顔面にねこしゃん爆弾が直撃。
 ド〜ン!
 さすがローゼンクロイツ。フリーダムに流れをぶっ壊しくれる。
 鬼女のこめかみに血管が浮かび、鋭い牙が剥かれた。
「おんどりゃー!」
 キレた鬼女が炎を纏った扇を振り回した。
 ビキニ姿の鬼女が踊り狂う。
 炎舞によって辺りは刹那に火の海だ。
 窮地に追いやられたカーシャはセツを放り出して構えた。とてつもない量のマナフレアが発生した。
「メギ・ホワイトブレス!」
 世界を一瞬にして凍てつく死の大地に変貌させる吹雪。
 魔法に冠されたメギは、最大級を意味する言葉だ。
 走るルーファス。逃げているのではない。逃げるならもっとコッソリ逃げる。
 放物線を描いて落下するセツ。
「セツ!」
 落下地点に滑り込んだルーファス!
 ドスッ!
 見事ルーファスは背中でセツをキャッチした。
 目を覚ましたセツ。
「ルーファス様……わたくしの尻に敷かれて、さてはドMなのですわね!」
「違うよ! 落ちてきた君を助けたんだよ」
「っ!? ルーファス様……(こんなにボロボロになってまで、わたくしのことを守ってくださるなんて)」
 ボロボロなのはセツを守ったせいだけじゃありませんけど。
 頬を赤らめたセツはルーファスに抱きついた。
「やはりわたくしは一生ルーファス様をお慕い申します」
「ちょっとそれは……」
「2度もこうして命を救っていただき、わたくしの身も心も命さえもルーファス様のものです!」
「2度? 1度目は?」
 ルーファスは首を傾げた。
 そして、ハッとルーファスは気づいた。
 セツはあの時のことを語り出す。
「上空でマシントラブルに見舞われたわたくしは、為す術もなく地面に叩きつけられて死ぬのだと覚悟いたしました。しかし、奇跡は起きたのです。ルーファス様がわたくしを受け止めてくださり、しかも接吻まで……思い出すだけで胸が熱くなってしまいます」
「(たまたま通りかかって、空から落ちてきた君に押し潰されただけなんだけど。キスはぶつかった弾みの事故だし)そ、それはね」
「命を張ってわたくしを助けてくださったルーファス様に、わたくしはすべてを捧げると決めたのです!」
 なんという美談!
 ――にセツの脳内では変換されていた。
 ただここで1つハッキリしたことがある。遊びや酔狂でルーファスに言い寄っていたのではなく、掟というのもたしかにあったかもしれないがそれだけではなく、マジでほの字だったということだ!
 モッテモテだねルーファス!
「こ、困るよやっぱり結婚なんて!」
「掟ですから」
 やっぱり掟は絶対なのだ。
 掟プラスほの字。最強タッグにルーファスは追い詰められているのだ。
 恋心と掟、どちらが優るのか?
 婚約を破棄する三箇条を思い出してみよう。
 其の一、自分より強い者と結婚してはならない。
 其の二、婚約者が新たに他の者と接吻した場合は無効とする。
 其の三、同性には掟そのものが適応されない。
 3番目は論外なので、残るは2つ。
「(セツに手を上げるなんて。かと言ってほかの女の子とキスなんてできないし)どうしたらいいんだ!」
「わたくしと結婚なさればいいのです!」
 それで一件落着だ。
 頭を抱えて悩むルーファス。
 聞こえてくる爆発音。まるで近くで戦争をやっているようだ。でもそんな騒ぎなんて今のルーファスには関係ない。
 結婚するのか、しないのか!
 悩み続けるルーファスの耳に、微かな声が届いた。
 女の子の声だ。
 この場にいる女の子?
 近隣住民は避難して、防御結界の中にいるのは……。
「助…て……だれか……」
 その声を聞いてルーファスは力強く立ち上がった。
「ビビ!?」
 紛れもなくビビの声だ。
 よくよく思い出して見ると、騒ぎがここまで大きくなる前、たしかビビは電磁フィールドに感電して、そうだ気絶したのだ!
 ということは――ビビもいっしょに防御結界に閉じ込められた!
 しかも最悪なことに、ビビは炎の海に囲まれて身動きができなくなっていた。
「ビビ!」
 ルーファスはセツの体を振り払って走り出した。
「待ってルーファス様! わたくしを置いていく気ですか!」
「ごめん!」