魔導士ルーファス(2)
鉄扇公主はラブハリケーン4
ネコミミ&ねこしっぽのローゼンクロイツ見参!
「ふあふあ〜」
寝惚け眼[まなこ]のローゼンクロイツから、大量のねこしゃんが噴出した。
出たッ! ねこしゃん大行進だ!
目を開けたままセツ気絶。
身動き一つしなくなってしまったセツだが、なにやら様子がおかしいぞ?
セツの体からゆらゆらと煙が立ちのぼり、やがてそれはモクモクと巨大な煙の塊になった。
巨人だ。
おそらくは思念体かなにかだろう。
トラ柄のビキニを着た頭に角が生えた巨大なねーちゃんが出現したのだッ!
カーシャが見上げながらボソッと。
「鬼だな」
そう言って、何食わぬ顔でこの場から立ち去ろうとしたのだが、巨大な鉄扇が地面に突き立てられ壁をつくった。
「逃がすか!」
鬼女はカーシャとやり合うつもりだ。
振り返り様にカーシャは強烈な吹雪を放つ。
「ブリザード!」
巨大な鉄扇で鬼女は吹雪を防いだ。
なぜが笑うカーシャ。
「ふむ、実態はあるようだな」
セツの体から現れた思念体は、霧のようなものではなく、形あるものということだ。その証拠にカーシャの吹雪を防いでいる。
「ならば凍らせるのみ!」
マナフレアがカーシャの周りに集まる。
だが!
ド〜ン!
この場にはローゼンクロイツもいるのだ。
カーシャはねこしゃん爆弾の直撃を食らって、ボロボロになりながら地面でへばった。
イッちゃってるときのローゼンクロイツは無差別攻撃。むしろ攻撃っていう概念ですらないかもしれない。
そう、今のローゼンクロイツはフリーダムなのだ!
巻き起こる爆風。
鬼女もねこしゃん爆弾の総攻撃を食らっていた。
「おんどりゃ、皆殺しにしたる!」
巨大な鉄扇を振りかざす鬼女。カーシャに視線を向けた。
が、そこにいたハズのカーシャが、ピンクのウサギのぬいぐるみになっていた。
……逃げたのだ。
「皆殺しじゃ皆殺しじゃ!」
鬼女は怒りで本当に燃え上がって炎に包まれていた。
「……付き合ってられん(が、そのうち復讐してやるから待ってろよ、ふふっ)」
ボロボロになりながらも、何食わぬ顔でスタスタと歩くカーシャ。
前方からルーファスがやって来た。
「あっ、カーシャ! どうしたのその格好?」
「クリスちゃんとお前の許嫁にやられたのだ。両方ともお前の関係者なのだから、さっさとカタをつけて来い」
「は? なんで僕が?」
「いいから逝ってこーい!」
カーシャのスクリューアッパーがルーファスに決まった。
竹とんぼのように、グルグル回転しながら遥か空にぶっ飛ばされたルーファス。
そのままルーファスは地面に激突。
「うう……(ひどいよカーシャ)」
ヒドイのはいつものことです。
床にへばりながらルーファスが顔を上げると、そこには巨大な影が2つ。
「……なにこの妖怪大戦争」
ルーファスは見なかったことにして、気絶しているフリをして顔を伏せた。
巨大な2つの影。
1つは鬼女なのだが、もうひとつは空色の影。
巨大化したローゼンクロイツ現る!
おそらく本人が巨大化するわけがないので、魔力を練ってつくった氣の塊かなにかだろう。
現状を確かめようと、ルーファスがそ〜っと顔を上げようとしたとき、突然目の前に飛び込んできた立て看板!
ゴフッ!
工事中の看板に攻撃された。
「この変態、ローゼン様のパンツを見ようなんて1万年早いですよ!」
この声はユーリだ。
再び顔を上げようとしたルーファスだったが、後頭部を鷲掴みにされて地面に叩きつけられた。
「うぐっ……痛い」
「そんなにパンツが見たいんですか変態!」
「違うよ! 顔を上げようとしただけじゃないか、それに男のパンツなんか見て何になるんだよ!」
「女のパンツだったら見たいってことじゃないですか、この変態!」
「うぐっ!」
再びルーファスは後頭部をグッと押された。
巨大化しているローゼンクロイツ。つまり真下に潜り込めば、パンツが見放題と言うことだ。
で、ユーリちゃんはここに何しに来たの?
「ちょっと眼を離した隙にローゼン様を見失ってしまって。でもこうやってスカートの中が覗けるなんてツイてる!(嗚呼、お兄様……ユーリはしかとローゼン様のパンツを目に焼き付けると誓います、どうか見守っていてください)」
って、パンツ目当てじゃないか!
ユーリは勢いよく顔を上げた。
「…………」
ユーリ硬直。
そ〜っとルーファスも顔を上げた。
なんてことはない、スカートの中身はズロースだった。
ズロースとは、つまりいわゆるカボチャパンツの下着版のようなものである。
「こんな物、ぜんぜんエロくもなんともないじゃないですかーっ! ぐわーん!(ううっ、お兄様……世の中って無情なのですね。でもアタシはめげません!)」
ショックを受けたユーリは、両膝をついてその場から動こうとしない。
さっさとルーファスは逃げることにした。
サササッ、ササササッ、虫のようにルーファスは地面を這って逃げようとした。
が、途中で鬼女と目が合った。
「お主、セツの婿殿じゃな?」
「違います、違いです。こう見えても妻子持ちの、子供なんて3人いますから。長男は今年幼稚園に入学したばかりでして……」
ウソすぎる!
鬼女は憤怒した。
「おんどれ、見え透いた嘘で逃げようとしおって!」
巨大な手が伸び、ルーファスの体を軽々と掴んで持ち上げた。
すっぽりと鬼女の手に収まってしまっているルーファス。比較対象があると、いかに鬼女が巨大なのかわかる。そして、目の前のローゼンクロイツも。
ブゥゥゥンッ!
ローゼンクロイツのしっぽが振られた。
電流を帯びた伸縮自在のしっぽ――しっぽふにふにが繰り出された。
ねこしゃん大行進もヒドイが、このしっぽふにふにも負けず劣らず無差別攻撃だ。
しかも、最悪なことに今のローゼンクロイツは巨大化している。
ズザザザザザザァァァッ!
近隣の建物が無残なまでに薙ぎ払われた。
このまで強大すぎる力はもはや神。今やローゼンクロイツは破壊神なのだ!
ローゼンクロイツが破壊神なら、こっちは鬼神だ。
「物騒なもん振り回すなアホ!」
鬼女は巨大な鉄扇をひと扇ぎした。
ふあふあっとローゼンクロイツは竜巻をかわした。
ブォォオォォォォッッッ!
巨大竜巻は近隣の建物を巻き上げて、晴れときどき瓦礫の山を降らせた。
顔面蒼白のルーファス。
「最悪だ」
このままでが王都アステアが一夜にして滅びる。
あしたの朝には死の荒野。地図の書き換えが必用になってしまう。
近隣住民の避難、遠くから見えてくる軍隊。魔剣連隊を引き連れるエルザの姿を見えた。
「王都と脅かす化け物め、成敗してくれるわ!」
エルザが切っ先を向けたのは鬼女だけ。
「(見えない見えない、私にはローゼンクロイツなんて見えないぞ)」
現実逃避の真っ最中だった。
一斉砲撃!
飛んでくる砲弾をもろともせず、鬼女は鉄扇をひと扇ぎしてすべて送り返した。
魔剣連隊は一斉に防御魔法で壁をつくり砲弾を防いだ。
防御魔法が解かれ、エルザは冷や汗を拭った。
「危なかった……ッ!?」
砲弾を防いだのも束の間、巨大なしっぽが連隊を薙ぎ払った。
作品名:魔導士ルーファス(2) 作家名:秋月あきら(秋月瑛)