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秋月あきら(秋月瑛)
秋月あきら(秋月瑛)
novelistID. 2039
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魔導士ルーファス(2)

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 チョコとクリームまみれになったルーファスの顔。せっかくのクレープが台無しだ。
「ルーちゃんひど〜い!」
「ご、ごめん、でも今はそれどころじゃ……」
 すぐ後ろからはセツが追ってきていた。
「鬼ごっこは終わりですわよルーファス様。でもその前に一言申し上げたいことが……両目についたいちごは取った方がいいですわ」
 変態イチゴ男!
 ルーファスは指摘されて、目についたイチゴをパクリと口に放り込んだ。
 続けてビビがルーファスにハンドタオルを手渡す。
「顔も拭いたほうがいいよ」
「ありがとう」
 受け取ったハンドタオルで顔をゴシゴシ。
 しかし!!
 水で落とさないとベトベトです。
 ブーン。
 虫の羽音。
 ハチだ!
 甘い香りに誘われてハチが現れた。狙いはもちろんルーファス。
「ぎゃ〜っハチ!」
 逃げるルーファス。
 すぐさまセツが追いかける。
「どうして逃げるのですかルーファス様!」
 ハチに追われているからです。
 都会のハチは花の蜜だけではなく、人間の食べ残した甘い物、溢れたジュースなども採取してたくしく生きているそうです。
 とかミニ情報をはさんでいる間に、ハチはいつの間にか大群に。ちょっと不自然に多くありませんか?
 ところで――。
「なんでいっしょに逃げてるの?」
 と、ルーファスは並走するビビに尋ねた。
「なんとなくその場の雰囲気で……。てゆか、ルーちゃんあのハチ大変だよ、どうにかして!」
「どうにかって言われても」
「そういえばルーちゃん、今日授業で使った魔法薬[マジックポーション]ちゃんと洗い流した?」
「えっ?(今日の授業で……)あっ!」
「ハチなどの動物が寄ってくるからちゃんと落とすようにって注意されたじゃん!」
 クレープの匂いではなく、授業で使った魔法薬が大群のハチを引き寄せたらしい。
 前方に見えてきた噴水。
「あれだ!」
 叫んだルーファスは一目散に噴水の中に飛び込んだ。なぜかビビの腕を掴んだまま。
「なんであたしもーっ!」
 バシャーン!
 噴水の池の中でハチをやり過ごす。
「「ブハーッ!」」
 息が続かなくなって二人同時に水飛沫を上げて池から出た。
 どうにかハチはやり過ごしたらしい――が。
「今度こそ、鬼ごっこは終わりですわ……ルーファス・さ・ま」
 満面の笑みでセツに出迎えられた。
 辺りを急いで見渡すルーファス。
 噴水の周りに立てられた謎の柱たち。柱から発せられた電磁フィールドが檻を形成していた。
 逃げられないと悟ったルーファスは、ビビの瞳を真っ正面から見つめて、深く頷いた。
 そして、バシッとセツに顔を向けた!
「ビビと私はすでに結婚してるんだ!」
 衝撃告白!
 でも、明らかにウソです!
 セツは鼻で笑った。
「ならば、今ここで二人の接吻を見せてくださいまし!」
 切り返しに切られるルーファス。
「うぐっ!(ビビとキ、キスなんて……)」
 横を見るとビビがこちらを潤んだ瞳で見つめていた。
 ルーファスはガシッとビビの両肩を掴んだ。
 頬を真っ赤にするビビ。
「ル……ルーちゃんのばか!」
 グーパーンチ!
 強烈なグーを頬に食らったルーファスはぶっ飛び、さらに電磁フィールドに当たって感電した。
「ギャアアアアアアアッ!」
 ビッショビショだったので電気をよく通す。うん、ルーファスツイてないね♪
 可哀想なルーファス。彼に手を差し伸べたのは、セツだった。
「ルーファス様、なぜあんな嘘をおっしゃったのですか。あのおなごに嫌われているのは、明らかではありませんか」
 ガーン。
「ぼ……僕ってビビに嫌われてたのか」
 ルーファスショック!
 セツはルーファスに肩を貸して立たせた。
「さあルーファス様、あんなおなごのことは忘れ、わたくしと結婚いたしましょう」
 密着するセツとルーファス。
 ビビは背を向けて走り出した。
 自然とルーファスの手がビビの背に伸びた。
「待ってビビ!」
「ルーちゃんなんて、ルーちゃんなんて……デデデデデッ!」
 ビビちゃん感電。
「危ないって言おうとしたのに」
 ボソッとルーファス。
 前を見ないで走ったビビは見事に電磁フィールドに体当たりしたのだ。
 ビビは気を失ってしまった。
 電磁フィールドが解かれ、セツにルーファスがズルズルと引きずられていく。
「ルーファス様のお父上にもごあいさつをしないと」
「(それは絶対に困る!)だ、だったらお土産のひとつも持って行かないと」
「お父上はなにがお好きなのですか?」
「これなんだけど……」
 ルーファスは懐から大量の写真を出して手渡した。
「きゃぁぁぁ〜〜〜っ!」
 叫び声をあげたセツは、ルーファスをほっぽり出して、はるか後方まで神速で後退った。
 地面にバラまかれた写真。その写っていたのかわいらしいにゃんこたち。
 セツの反応にルーファスは一汗拭った。
「ふぅ、生じゃなくても効果あるんだ、よかったぁ」
 ここまでくればセツのネコ嫌いは確定的だろう。
 震えるセツは全身の毛を逆立てていた。
「たばかりましたわね、ル〜ファスさま〜」
 亡霊のような声を発したセツの毛はさらに逆立った。
 それはまさに怒髪天。怒髪上って冠を衝く。頭髪が逆立ち、怒りに充ち満ちている。ただしゴリラ顔ではないが、頬がピクピクしているので時間の問題だろう。
 今セツは壮絶な戦いを繰り広げていた。
「(ルーファス様に見られている……駄目よ、駄目よ、怒っては駄目よ)」
 類人猿→ヒト→類人猿→ヒトの繰り返し。
 最後に勝つのはヒトかサルか!
 今、ついにヒトとサルの最終戦争がはじまろうとしていた!
 なんていうのはウソで、す〜っとセツの毛が静まった。
 が、セツの目の前にネコの写真が!?
「きゃぁぁぁ〜〜〜っ!」
 膝を付きうなだれるセツ。
 写真を見せたのはカーシャだった。
「この写真を見せるとなにか起こるのか?(カーシャちゃんワクワク♪)」
 さすがカーシャ。混乱を起こす行動を自らやります。
 怒髪天。
「ルーファス様、お下がりになって!」
 鉄扇から放たれた強烈な突風によってルーファスがぶっ飛んだ。遠く遠く空のサヨウナラ。
 この日、ルーファスは夜空の星になった。
 ルーファスがこの場から姿を消したことによって、セツの怒りは解放された。
「おんどれぇっ、地獄見せたる!」
 髪を結わいていたヒモがブチッよ音を立ててキレた。
 解放された髪が渦巻く。
 美しい黒髪が根本から燃えるように紅く変わっていく。
 螺旋を描き天を突く紅髪のセツ。
 はだけた着物から首筋が覗く。
 色気に満ちたセツの肢体――でも顔はゴリラ!
 カーシャは後退った。
「な、なんというブサイク!」
 言っちゃった。言っちゃったよ。
 魔力が多く集まる場所に現れるマナフレア。セツの周りに浮かんでいたマナフレアが、弾け飛んだ。
「ブサイク言うたな、ブサイク言うたな。わしが気にしてることをぬけぬけと!」
 鉄扇――怒りの炎の舞い。
 扇[あお]がれた鉄扇から炎が風に乗って放たれた。
 カーシャの周りにマナフレアが集まる。
「ウォーターカーテン!」
 流れる水のカーテンによって炎が防がれた。
 カーシャの瞳が冷たい色を放つ。