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秋月あきら(秋月瑛)
秋月あきら(秋月瑛)
novelistID. 2039
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魔導士ルーファス(2)

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鉄扇公主はラブハリケーン3


 ルーファスは真剣な顔をした。
「じつは今までみんなに黙ってた秘密があるんだ……じつは、あたし女の子なの!」
 が〜ん。
 セツショック!
「ルーファス様がおなごだったんなんて!」
 ローザショック!
「どうして今までお姉ちゃんに教えてくれなかったの!」
 カーシャはルーファスの後ろに回り、パンツごとズボンを一気に下ろした!
「これのどこが女だ!」
 パオ〜ン♪
 ポッとセツは顔を赤らめた。
「まあ可愛らしい」
 続けてローザは聖母の笑みを浮かべた。
「幼いころとぜんぜん変わらないのね」
 なにがデスカ?
 慌ててルーファスはズボンをはき直した。
「な、なにするんだよ!」
 下半身大露出で作戦失敗。てゆか、信じかけたローザっていったい。
 ルーファスに残された婚約解除法はあと2つ。
 構えるルーファス。
「(別の女の子とキスなんて……)」
 セツとのキスが脳裏に過ぎってしまったルーファスは、あの柔らかな唇の感触を思い出して――ブフォッ!
 鼻血が出た。
「(キスなんてできるわけないじゃないか。そうなるとセツに勝たなきゃいけないんだけど、女の子に手を上げるなんて)ところでなんで強い者と結婚しちゃいけないの、普通逆なんじゃ?」
「元々は男子の代に作られた掟だからです。強い嫁を貰うと、尻に敷かれるということらしいですわ」
 と、セツが答えてハッとした。
「まさかわたくしを倒すおつもりじゃ!?」
「そんなつもりじゃないから安心して!」
 ルーファスは否定したが、その言葉はセツの耳には華麗なるスルー。
「これが愛の試練なのですね。ルーファス様がその気なら、わたくしも本気を出させていただきます」
 鉄扇を構えたセツはヤル気満々。
 その姿を見てルーファスは逃げ腰。
「(ヤバイ、あの殺気……殺される)」
「ルーファス様、そちらから来ないのなら、わたくしから――旋風!」
 軽くひと扇ぎされた鉄扇からつむじ風が放たれた。
 ルーファスが風に飛ばされた!
「うわぁっ!」
 うまい具合に地面に着地したルーファスは、飛ばされた弾みを利用してそのまま逃走!
 走り去るルーファスの背中姿。
 …………。
 しばらくしてセツはハッとした。
「逃げられ……逃げられたやないかド阿呆!」
 ゴリラのような顔をしてセツが怒鳴り散らした。
 そのあまりの変わりようと気迫に唖然とするカーシャとローザ。
 だがすぐにカーシャは納得した。
「(美人のクセにルーファスを追い回すくらいだ。このくらいの欠点はあって当然か)」
 自分に向けられている奇異な視線に気づいて、セツはすぐさま顔を元に戻して微笑んだ。
「ど、どうかなさいました?(み、見られた。見られてはあかんものを見られてしもうた)」
 ササッとそっぽを向くカーシャ。
 空気を読んだローザも本に夢中になった。
「まあ、こんな立派なモノが……きゃっ♪」
 だからどんな本読んでんだよ。
 し〜ん。
 3人無言。
 変な空気が流れはじめた。
 堰を切ったように慌ててローザが口を開く。
「そうだ夕飯の買い物に行かなきゃ!」
 カーシャも続いた。
「そうだペットにエサをやらんと」
 そして、便乗してセツも。
「そうだルーファス様を追わないと」
 そして3人は頭を下げて別々の方向に進みはじめたのだった。

 だいぶセツを巻くことに成功したルーファスは、若者が多く集まるオサレストリート、通称にゃんこ通りに来ていた。
 クラウス魔導学院は週休1日だが、多くの企業や学校は週休2日のところも多く、ハリュクの今日は休みの若者も多い。
 オサレファッソンのブテックを立ち並ぶ通りは、若者でひしめき合っている。ルーファスは人混みに紛れる作戦だ。
 しかし、そんなルーファスの浅はかな知恵が悲劇をもたらすことになるのだった。
 片膝をついてバズーカを肩に構えたセツ。
「科学の力でルーファス様を捜して見せますわ!」
 発射!
 科学の力がどーとかこーとか以前に、どー見ても無差別攻撃です。
 必死にミサイルを避ける若者たち。ひとの群れが左右に割れ、その先にルーファスが見えた。
 ド〜ン!
 そして、結果は大爆発。
 爆発に巻き込まれたルーファスは、ボロボロになりながら立ち上がった。
「うう……死ぬかと思った」
 とか弱ってる間にセツは目の前まで迫っていた。
「ルーファス様、召し上がれトリモチ!」
 バズーカからミサイルではなく、今度はトリモチが発射された。
 避ける避ける避ける!
 運動神経のないルーファスだが、避けるのは得意だったりする。ドッジボールで最後まで残っちゃって、ボールも取れずに困るタイプだ。
 ルーファスが避ければ避けるほど、周りの若者たちがベットベトのトリモチに捕らえられていく。
「うわっ、なんだこれ!」
「きゃっん、助けて!」
「取れないぞ!」
 君たちの犠牲は忘れない!
 逃げるルーファス。
 逃がさないセツ。
「メイドインワコクは甘くありませんわよ!」
 巨大な魔人の手がルーファスに襲い掛かる。違う、それは機械の手だ。セツの左腕に取り付けられたメカニカルアームが意のままに動く。
 避けられたルーファスの替わりにポストがメカニカルアームが握られた!
 ぐちゃ。
 あ、ポストが潰れた。
 顔面蒼白になるルーファス。
「あんなのに握られたら死ぬし!」
 一瞬で死ねればいいが、下手に死ねないと、関節が逆方向に曲がったり、内臓が××で××な状態でしばらく死ねない可能性もある。まさに生き地獄だ。
 セツが鉄扇を扇ぐ。
「逆風!」
 放たれた風を受けた者が、進行方向とは逆方向に飛ばされてしまうという必殺技。
 ひとたびルーファスが逆風を受ければ、あっという間にセツの前に飛ばされてしまうが。
 が!
 風を受けた若者たちが大津波になってセツに襲い掛かる。
「きゃあっ……って、おんどりゃに用はないんじゃアホ!」
 ゴリラの形相でバズーカ発射!
 晴れときどき人。
 驚いたルーファスは振り返ろうとした。瞬間に、セツは顔を元に戻す早業だ。ルーファスはセツの変貌に気づいていない。
 セツはもう目と鼻の先。
「ルーファス様!」
「うわっ、お願いだからあきらめて!」
 襲い来るメカニカルアーム!
 紙一重でかわしたルーファス!
 だが、メカニカルアームから網が発射された。
 ルーファスに避ける余力はない。
「にゃあ」
 突如、セツの目の前に現れたネコ。
 ゴクンとつばを飲み込み固まるセツ。
「にゃあ」
「きゃぁぁぁ〜〜〜っ!」
 血相を変えてセツは逃げ出してしまった。
 尻餅をつくルーファス。
「ふぅ……助かったの?」
 通称にゃんこ通りのゆえんは、野良猫が多いことからその名がついたと云われている。

「はい、お待ちどおさま」
 クレープ屋台の兄ちゃんから、ストロベリーチョコ生クリームクレープを受け取り、ビビは笑顔で歩き出した。
「(仕送りがあると無駄遣いが多くなっちゃう。けど、いっか♪)」
 あ〜ん、と大きな口を開けてクレープを頬張ろうとしたとき。
「どいてどいて、ビビ!?」
 飛び込んでたルーファス!
 グチョ。
「ああっ!」
 ビビが叫んだ。