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秋月あきら(秋月瑛)
秋月あきら(秋月瑛)
novelistID. 2039
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魔導士ルーファス(2)

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鉄扇公主はラブハリケーン2


 凍り付きそうになるルーファス。
「か、かーしゃ!?」
 なんとメニューを運んできたのはカーシャだった。べつにここでバイトをしているわけでもなく、普通に私服でメニューを運んできた。なんだか遠くではウェイトレスのひとりが、カーシャに異様なまで怯えている。
 セツが首を傾げてカーシャを見つめた。
「こちらの方はお知り合いなのですか?」
 ルーファスはあまりのプレッシャーに口を開けない。
 そのプレッシャーの塊は、強引にルーファスの横に座った。
「妾はカーシャ、ルーファスの保護者のようなものだ。こいつが結婚すると聞いてな、本来ならそちらから挨拶に来るのがしかるべきだが、こうしてわざわざ妾から出向いてやったのだ」
 ウワサはすでにカーシャまで届いていた。
 ただでさえ手の焼ける問題だったのに、ここでカーシャの介入があったら混乱は必須。
「まあルーファス様の保護者の方ですか。ご挨拶が遅れました、わたくしはルーファス様と婚約したセツ・ヤクシニと申します」
「土産もなしに挨拶とは、いい根性をしておるな(これがドラマでよく見る嫁いびり。ふふっ、なかなかおもしろい)」
 カーシャさんなら、きっと良い姑になれます。そーゆー意味で。
 すぐさまセツはルーファスのケーキをカーシャの前へ。
「どうぞ、つまらないものですが」
「ふむ、本当につまらんものだな(さすがルーファス、この店で一番美味いケーキを注文しておるな)」
 なんだかちょっとカーシャは嬉しそう。
 なんだかちょっとルーファスは悲しそう。
「(僕のケーキが……)」
 セツがケーキをカーシャに渡さなくても、きっとカーシャなら無断でルーファスのケーキに手をつけるだろう。結果は同じだ。
 カーシャはケーキを頬張りながら、二人に視線を向けた。
「で、二人の馴初めを言ってみろ(美味いな、口の中で蕩ける食感が堪らん)」
 食べるか聞くか、どっちかにしなさい。
「お慕いしているルーファス様から、ある日突然に唇を奪われました。我が家では初めて接吻を交わした相手と契りを結ぶと掟で決まっているので、心置きなくルーファス様と結婚できるというわけです」
 嘘ではないが、説明の仕方が極端に寄っているような気がする。
 すぐさまルーファスが口を挟む。
「キスは事故だったんだよ、本当だから。それに結婚なんて、いくらなんでも」
 ギロっとカーシャがルーファスを睨む。
「それでも男かルーファス。男なら責任を取れ!(だがこの場合、どちらに転んだほうが面白いのか。やはり結婚には反対しておくべきか?)」
 つまり面白ければいいってことですね。さすがカーシャさんです。
 このやり取りを店の片隅で覗き見していたビビ。
「(……そーゆーことだったんだ。ルーちゃんがモテるわけないもんね、へっぽこだし)」
 ビビはバレていないつもりだったが、カーシャはその気配に気づいていた。
「(コソコソ尾行なんぞしおって、ここは一発)二人の結婚、妾の権限で認めよう。明日はちょうど休日だ、結婚式は明日で決定でいいな!」
 ブホォォォッ!
 ビビは思わず口からアップルティーを噴き出した。
「だ、大丈夫ですかお客さん!」
 ウェイトレスが慌てたことによって、店内の視線がビビに向けられた。
 ルーファスたちに気づかれまいと、ビビはササッとテーブルの下に身を隠して、鼻を摘んで口を開いた。
「だ、だいじょーぶ!」
 そんな鼻声だけを遠くの先から聞いたルーファスは、
「(あのひと風邪なのかな)」
 と、ぜんぜんビビに気づいていない様子。
 カーシャはひとつ咳払い。
「コホン、とにかーく! 式は明日だ、会場と招待状は妾が手配してやろう(祝儀の8割は懐に入れるとして、祝儀成金も夢ではないな、ふふっ)」
 お金に目が眩んでいるカーシャ。
 ルーファスは席を立ってテーブルを叩いた。
「冗談じゃないよ!」
「冗談で結婚はできん、つまりこれはマジ結婚だ」
「茶化せないでカーシャ! とにかく、結婚なんて考えたこともないし、まだ僕は学生で16歳なんだよ! 結婚なんてできるわけないじゃないか!」
 セツはルーファスの手を握って瞳を輝かせた。
「ご心配ありませんわ。わたくしも昨日まで結婚のケの字も考えておりませんでしたから。それに15歳のわたくしができると言っているのですから、1歳も年上のルーファス様にやってできないことはありません!」
 相変わらず一歩も引かないどころか押してくる。
 このままでは結婚の流れで進んでしまう。
 ルーファス逃亡!
「やっぱり結婚なんてできないよ!」
 店を飛び出してしまったルーファス。
 すぐにカーシャが立ち上がった。
「おのれルーファスめッ! 食い逃げし追って許るさんぞ!」
 いやルーファスは食ってない。ルーファスのケーキを食ったのはカーシャだ。
 カーシャはセツの腕を掴んで店を飛びだそうとした。
 が、ここで店員が待ったを掛ける。
「お客さんお金!」
「金ならあいつが払う!」
 カーシャはビシッとバシッと、店の隅にいたビビを指差した。そして、店を出て行ったのだった。
 残されたビビはショックを受ける。
「バ、バレてた(……しかもなんでアタシがみんなの分まで)」
 ビビはお財布を開けて溜息を落とした。

 どーにか、こーにか、セツたちを巻いたルーファスは自宅に帰ってきた。
「はぁ、疲れた(とりあえず飲み物飲み物っと)」
 キッチンに向かったルーファスは、そこで半裸のリファリスに遭遇。日が昇ってるうちからビール片手に上機嫌だ。
「また姉さんお酒ばっかり飲んで(太んないのが不思議だよ)」
「よォ色男!」
「はいはい、お酒もほどほどにね」
「いいじゃないのさ、なんたってあんたの結婚祝いの酒なんだから」
 ちゅど〜ん!
「はぁ〜〜〜っ!?」
 思わずルーファスは大声を上げてしまった。
 ウワサはすでにここまで広まっているらしい。
 リファリスはルーファスの肩を抱いた。
「自分の弟にこんなこと言うのもなんだけど、世界が滅びるほうが先だと思ってたからね」
「(それはこっちのセリフだよ)」
「しかも相手が幼なじみのローゼンクロイツだなんて」
 ちゅど〜ん!
「はぁ〜〜〜っ!?」
「あんたが幸せなら姉ちゃんはなに言わないよ、たとえ相手がオカマだろうとね。違うか、そういうのびーえるとかいうんだろ、ローザが前に教えてくれたよ」
「ぼ、僕がローゼンクロイツと結婚なんてするわけないだろ!(てゆーか、ローザ姉さんの口からなんでBLなんて言葉が……」
「違うのかい?」
 きょとんとしたリファリスは少し考え、ポンと拳を手のひらの上に叩いた。
「ならビビちゃんか」
「違うよ!」
「カーシャと結婚したら一生尻に敷かれるぞ」
「違うってば!」
「そうかそうか、小さいころよくエルザに付きまとってたな」
「それは子供のころの話だろ!」
「ほかにだれか……」
 二人の間にタケノコのように人影が生えてきた。
「わたくしですお姉様!」
 不法侵入セツ登場!
 驚いたルーファスは一歩後退った。
「どこから入ってきたの!?」
「もちろん玄関からに決まっているではありませんか、泥棒じゃあるまいし」
 まったく悪びれていない。