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秋月あきら(秋月瑛)
秋月あきら(秋月瑛)
novelistID. 2039
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魔導士ルーファス(2)

INDEX|36ページ/104ページ|

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「ローゼンクロイツ様のファンクラブ会長のアインです。こう見えてもローゼンクロイツ様は男の娘[こ]なんです。ローゼンクロイツ様に興味がおありでしたら、ぜひこちらのサイトにお越しください」
 信者獲得に余念が無い。
 セツは名刺を受け取らずにルーファスの腕に抱きついた。
「わたくしにはルーファス様がおりますから、浮気なんてとんでもありません。しかしルーファスは存分になさってもらって結構ですよ、浮気は男の甲斐性ですから」
「浮気とか以前に、私たち付き合ってもないから」
「今こうして付き合っているではありませんか」
「…………(ダメだ)」
 ルーファス諦めモード。
 口での説得は無駄。ちょっと逃げたくらいじゃすぐ追いつかれる。押し掛け女房の鑑だ。
 ユーリはローゼンクロイツの背中を押した。
「(他人の幸せを見てると眼が腐る)ローゼンクロイツ様行きましょう、こんなへっぽこはほっといて」
 強引にローゼンクロイツは連れ去れてしまった。アインはまた木陰に隠れてストーカーの続き。
 二人っきりで残されたルーファスは心底困った。
「とりあえず、体から離れてくれないかな?」
「嫌ですか?」
「イヤとかイヤじゃないとかじゃなくて」
「恥じらっておられるのですね。まあ、なんと可愛らしい殿方なのでしょう。仕方ありません、ルーファス様がそうしろとおっしゃるなら」
 セツはルーファスの体から離れた。でもまだ近い。隙間に手が入るかは入らないかくらいだ。
「ついでにもうひとつ、婚約破棄したいんだけど」
「それは掟ですから、いくらルーファス様の頼みでも聞くことはできません」
「ですよねー(やっぱり持久戦か、でもどうしよ。嫌われればいいのかな、なにかひどいことをして……)」
 意を決したルーファス。
 震える手でおっぱいタッチ!
「あぁン、ルーファス様ったらお気が早い」
 紅潮させた顔でセツは色っぽい声を出した。
 ルーファスの作戦では、えっちなことをして、ビンタでも一発食らって嫌われるハズだった。なんと幼稚な作戦。まあルーファスに、女の子にヒドイことしろっていうのも無理がありそうだが。
 バシーン!
 ルーファスの頬に決まった強烈なビンタ!
 まさかの作戦成功かっ!?
「ルーちゃんの変態!」
 ルーファスを打っ叩いたビビは、ピンクのツインテールをふりふりさせながら走り去ってしまった。
「ご、誤解だってば!」
 鼻血を垂らしながら虚しく伸ばされたルーファスの片手。一方はビビの背に、一方はセツの胸に。ちなみに鼻血はおっぱいタッチの負傷だ。
 ハッとルーファスは手の中の感触に気づいた。
「ご、ごめん!」
 すぐさまルーファスはセツの胸から手を離した。
「謝らなくとも、セツの身も心もルーファス様のものでございます」
「クーリングオフとかないの?」
「掟ですから」
 そんなに掟とやらが大切なのだろうか。
「掟じゃなくてさ、君の気持ちとかもあると思うんだけど」
「ルーファス様のことを好いておりますゆえ、なんの問題もないかと」
「(問題大アリだよ)なんども言ってるけど、会ったばっかりなんだよ私たち?」
「時間など些細な問題ですわ。好きなものは好き、それでよいではありませんか」
「(よくないよ)そもそも私のどこが好きなの?(って、聞いてて恥ずかしくなる!)」
「乙女の口からそんなことを言わそうなどと、さてはルーファス様、ドSなのですね!」
「違うよ!」
 SかMかで言えば、きっとルーファスはMだろう。自称Sと言い張ろうと、周りのいじめっ子たちがそれを許さないだろう。とくに某魔女とか。
 ドッとルーファスは溜息をついた。疫病神に憑かれたわけではないが、こんな押し掛け女房といたら疲れてしまう。ルーファスに気がない限りは、疫病神と同じかもしれない。
 だってなんだか突き刺さる視線が痛いんだもん!
 下校途中の男子学生たちが、ルーファスに鋭い視線を向けている。
「と、とにかく場所を変えよう!」
 ルーファスをセツの腕を引っ張り走り出した。
 学院に戻り、人気のない教室に飛び込む。
 なぜか恥じらいを見せて、落ち着かない様子のセツ。
「こんなところに連れ込んで、どんなプレイをなさる気なのですか?」
「ブハッ!」
 鼻血を噴き出すルーファス。
「ご、誤解だよ! ひとに見られると変なウワサが広まるから!」
「ひとに見られるか見られないか、そのドキドキがルーファス様はお好きなのですね」
「違うから!」
 叫んだせいでさらに興奮して、ビュっと鼻血がさらに出た。
 おっぱいタッチに続き、放課後の教室に連れ込み。裏目裏目だ。
 ルーファスはセツの腕を掴んで走り出す。
 人気のないところで二人っきりになるから、イケナイのだ。ひとの多い場所、多い場所――とルーファスがやって来たのは、学院近くにあるカフェだった。
 軽くメニューを注文して、一息ついたルーファスは向けられているセツの視線に気づいた。なんだか嬉しそうなのだ。
「どうしたの?」
「だって初デート……人生初のデートですもの」
 ドッカ〜ン!
 ルーファスの脳ミソ爆破。
 あまりにも迂闊すぎるぞルーファス。
 どう見てもデートです。
 しかも、ここはケーキが美味しいと女の子に人気のカフェ。その名もメルティラヴ。
 甘い物好きのルーファスは、いつも周りの視線も気にせず来てるもんだから、うっかりこの店を選んでしまった。いつもは気にならない視線も、今日はちょっと刺さります。
 ルーファスにその気がなくても、セツが醸し出すラヴの香りが、あれが絶対にデートだと周りに確信させてしまっている。
 どこにセツを連れて行っても裏目。メニューも注文してしまったし、ルーファスはここで決着をつける決意をした。
「やっぱり結婚なんてできないよ」
 ルーファスの発した言葉で店内が一気にざわめいた。そして、す〜っと静まる。
 次の展開に人々は耳を傾けている。
 セツは真剣な顔をした。
「わたくしが間違っておりました」
「だったら婚約は破棄で」
「まずは結婚を前提にお付き合いをするのが道理。しかし、ここでこうしてデートをしたのですから、次のステップは結婚ですわ!」
「…………(もうすごすぎるよ、君)」
 完全にルーファスが押されている。出会ったときからずーっと押されっぱなしだ。
 だが、ここで負けちゃダメだ!
 ルーファスは踏ん張りを見せる。
「何度も言ってるけど、知り合ったばかりだし、お互いのことよく知らないし」
「そんなにもわたくしに興味を持ってくださるなんて、愛を再確認いたしました」
「いやいやいや、なんでそうなるのさ」
「生まれはワコク、ここよりずっと東にある小さな島国です。しかし、メイドインワコクと言えば、どの国でも知られる安心安全超高品質のブランドと言っても過言ではありません。そんな国に生まれたわたくしは、当然のように科学者としての英才教育を受けました」
「科学者って意外だなぁ。東方のワコクって言ったら、うちの学校にも学生や先生がいるよ。そうそうちょっと行ったところにあるももやさんっていう和菓子屋さんも、ワコク出身だって言ってったっけ」
「歳は15、7月2日生まれのAB型」
「って君、私の話聞いてないでしょ?」