魔導士ルーファス(2)
ユーリは素早く靴を脱いで投げた!
もちろんパンツルーファスごと。
「ぎゃあああ!」
ルーファスの叫び声でララが飛んでくる靴に気づいた。
そして振り向いた瞬間、ゴン!
ララの顔面に靴がヒットした。
「マジいった〜い! くっさいクツ投げたのだれ!」
「臭くないから!」
すぐにユーリは否定した。
ララの周りにマナフレアが集まる。
「クツのお返しに、あんたは男物ブリーフに変えてやるんだから!」
「そ、そんな恐ろしいことしたら訴えてやる!」
「デパンっあぅ!」
急にララが変な声をあげた。
ぷにぷに♪
「きゃっ!」
小さく悲鳴をあげたララは慌てて自分のお尻を見た。
そこにはなんと可愛らしい手がぷにぷにとしているではないか!?
「これで願い事叶えてくれるんだよね?(ふにふに)」
その空色のドレスを確認してユーリが叫ぶ。
「愛しのローゼンクロイツ様!」
なんと最後の最後で突如現れたローゼンクロイツ。
ララは驚きを隠せない。
「まさかウチらケツタッチンが負けるなんて、1000年以上無敗だったのに!」
「ボクの願いは――」
「願いなんか叶えてやるもんか。死んじゃえば無効だもんね!」
ララが殺気を放った瞬間、ローゼンクロイツの瞳に五芒星[ペンタグラム]が浮かび上がった。
「ライトチェーン!(ふにふに)」
ローゼンクロイツが放った光の鎖がララを拘束する。
「きゃっ、離しなさいよばーか!」
瞬時に縛られたララ――その縛り方は亀甲縛り!
まさか!?
「七味唐辛子を切らしちゃったから買って来て(ふあふあ)」
すごいマイペース。
流れとか、周りのテンションとか無視して、願い事をさらっと言ったローゼンクロイツ。
ララは唖然とした。
「どんな願い事でも叶うのに七味って……しかも買って来いってパシリ!? まあルールはルールだから、ゲームはあんたの勝ち。買って来てあげるからこの鎖解いて」
顔を膨らませているララ。この結果に納得してないらしい。
ユーリはショックを受けていた。
「まさかこれでビビちゃんは元に戻らない……」
と言った瞬間、ユーリの頭にビビのお尻が落ちてきた。
「ふぎゃ!」
ビビに押しつぶされたユーリが呻いた。
廊下の向こうではルーファスも元の姿に戻っていた。
「あれっ、戻れたの? よかったぁ」
ほっとするルーファスにララが顔を向けた。
「ゲームが終わったら元に戻るに決まってるでしょ、ばか」
決まってるとか知りませんから!
ララは七味唐辛子をローゼンクロイツに渡した。
「はい、これでいいんでしょ」
「仕事が早いね(ふにふに)」
一瞬にして買って来たらしい。さすがどんな願いでも叶えると豪語してるだけのことはある。
ララがあっかんべーをした。
「じゃあね、バイバイ死んじまえ!」
こうしてララはパッと消えてしまった。
大騒動も一件落着して、学院も静かになるだろう。
だが!
ジャラジャラと鳴る音が近付いてくる。
「ルーファス!」
「は、はい!」
慌てて返事をしたルーファスの先にはファウストが立っていた。
「どうやら使役に失敗したようだな」
「あっ、そういえば試験の最中だった!?」
「追試不合格だ!」
が〜ん。
ルーファスショック!
見事、追試に不合格になったルーファスの顔に、ペタリと悪魔の契約書が張り付いた。
悪魔の契約書によって、ルーファスはどーなってしまうのかッ!
それはまた別のお話である。
第13話_パンツに願いを おしまい
作品名:魔導士ルーファス(2) 作家名:秋月あきら(秋月瑛)