小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」
秋月あきら(秋月瑛)
秋月あきら(秋月瑛)
novelistID. 2039
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

魔導士ルーファス(2)

INDEX|30ページ/104ページ|

次のページ前のページ
 

「あははは、ばかな奴ら。だれもオレのケツ触れねぇでやんの!」
 欲望に駆られた生徒を弄んで愉しんでいるのだ。
 クラウスがビシッとバシッとリリを指差した。
「騒ぎの張本人は君だな!」
「そうさ、オレは妖精ケツタッチンのリリ。オレと双子のララのケツを触れたら、どんな願い事でも叶えてやるぜ」
「その話も本当かどうか怪しいところだ。ありもしない餌をちらつかせて、僕らを弄んでいるように思えてならないな」
「弄んでるのは認めるけど、願い事はホントだぜ。ウソかどうか、アンタがオレらのケツ触ってみろよ?」
「ならば世界平和でも願ってみるか。というわけだから生徒諸君、争いはやめて僕に願いを譲って――」
 クラウスが言い終わる前に、生徒たちがリリに飛び掛かった。
「願いを叶えるのは俺だ!」
「世界一の魔導士になるのは私よ!」
 ドドドドドドド!
 逃げるリリ。
 追いかけていく生徒たち。
 残されたクラウス。
「…………」
 だれもクラウスの話なんて聞いちゃいなかった。
 クラウス挫折。
 床に両手と両膝をついてしまった。
「学院では普通の生徒として扱ってくれって言ってるけど……言ってるけど……これでも一国の王なのに!」
 王の権威もなにもなかった。
 ポンとルーファスがクラウスの肩を叩いた。
「王様扱いされないのはいいことじゃないか。みんなクラウスのことを仲間だと思ってる証拠だよ!」
「……そ、そうなのか(単純に願い事に目が眩んで無視されたように感じたが)」
 クラウスの思っているとおり!
 辺りを見回したクラウス。
「ところでビビの姿が見えないようだが?」
「ビビならもうとっくに妖精追っかけて行っちゃったよ」
「……そ、そうか(恩を売るつもりはないが、この扱いは……ショックだ)」
 助けたビビにまで軽く扱われ、ちょっぴり傷心のクラウス。
 だが、一国の王として、この程度のことでいつまでも落ち込んではいられない。
 アステア王国の繁栄を担う王として、クラウスは攻めの姿勢を表意した。
「僕もみんなの輪に入って妖精を捕まえてやる。それで願いを叶えてもらえば、だれも文句を言わないだろう。僕は行くぞ、だれにも負けない、僕は妖精のお尻を触ってみせる!」
 お尻を触って見せる、お尻を触って見せる、お尻を触って……。
 クラウスの言葉が廊下にエコーした。
 ただの変態発言にしか聞こえない。
 一国の王が『お尻を触る』なんて、政治問題に発展しそうだ。
 熱く燃え上がるクラウスに感化されて、ルーファスの闘志にも火がついた。
「私だってお尻を触ってみせる。クラウスにだって負けないよ!」
「望むところだルーファス!」
 漢[おとこ]と漢は互いの手をガッシリと握り合った。
 勇気!
 友情!
 その先にあるのは勝利!
 果たして勝利の栄冠をつかむのはルーファスかクラウスかッ!?
 クラウスはルーファスの瞳を見つめた。
「行くぞルーファス!」
「おう!」
 ルーファスならぬ男らしい返事。
 今のルーファスはいつもとひと味もふた味も違うぜ!
 廊下を駆け出すルーファス。
 が、それをすぐにクラウスが止めた。
「待てルーファス!」
「なに?」
「廊下は走っては駄目だ!」
「……そ、そうだね」
「僕は生徒たちの模範にならなくてはいけないからね」
 優雅に廊下を歩き出すクラウス。
 せっかく燃え上がってたルーファスの心が、急速に冷えていく。
「(クラウス……本気で妖精捕まえる気あるの?)」
 あるにはあるだろうが、こんな調子で歩いていて、捕まえられるかどうかは不安だ。
 ルーファスはクラウスとは別の道を進むことにした。
「私はあっちの廊下を探すよ」
「健闘を祈る!」
「あ、うん、クラウスもがんばって(なんだかなぁ)」
 クラウスと別れたルーファスは、妖精を探して歩き回った。
 いったい妖精たちはどこにいるのか?
 それはね、クラウスが歩いて行った方向です!
 リリが飛んで行った方向にクラウスは歩いて行ったのだ。
 ついついルーファスはクラウスと別れてしまったが、自ら妖精の手がかりを手放しのだ。
 まあ、あのままクラウスと一緒にいても、歩いて妖精を捕まえられるかどうかは怪しいかったが。
 今からリリのほうに行って、途中でクラウスに会ってしまうのも気まずいし、ルーファスは道を変えずに進むことにした。
 騒ぎはどんどん大きくなっているようなので、きっとすぐにララのほうも見つかるだろう。
 ドドドドドドド!
 ほらさっそく見つかった。
 パンチラしながら逃げるララ。
 先頭を走ってララを追っているのはユーリだ!
「待ちやがれボケッ!」
 ちょっと素が出てますよユーリちゃん。
 ここでボーッとしてたり、逃げてしまったら、さっきと同じ結果になってしまう。
 ルーファスは妖精ララを捕まえなければならない!
 ――と言っても、ルーファスにはなんの作戦もなかった。
 ルーファスが戸惑っている間にも、ララと生徒の大群が押し寄せてくる。
 ララはもう目の前だ。
「メガネ退け!」
「えっ、私のこと?」
 ララに言われても、自分ことだと理解するのにルーファスは時間を要した。まだメガネに慣れていないのだ。でも名前じゃなくてメガネ呼ばわりされるってことは、すっかりメガネキャラの仲間入りだねルーファス♪
 ルーファスの瞳に映ったいちごパンツのドアップ。
 次の瞬間、ルーファスの顔面が踏みつけられた。
「ごべっ!」
 ララに踏んづけられたルーファス撃沈。
 そこへユーリも突進してきた。
「邪魔邪魔退いてーっ、きゃっ!」
 可愛らしく悲鳴を上げたユーリとルーファスが激突。
 後続の生徒たちも倒れたルーファスたちにつまづいて、将棋倒しになってしまった。
 ユーリはすぐに起き上がろうとしたのだが――。
「きゃっ、だれアタシのお尻触ってるの!?」
 ユーリの目の前にはルーファスの顔。
 ぷにぷに。
 ユーリを抱きしめながら倒れていたルーファスの手は、小振りなヒップを鷲掴みにしていた。
「……わ、わざとじゃないんだ!」
 ぷにぷに。
「死ね!」
 顔を真っ赤にしたユーリちゃんがグーパンチを放った。
「ぶへっ!」
 思いっきり顔面を殴られたルーファス。
 虫の息のルーファスは鼻血を出しながら床にへばってしまった。
「ビンタじゃなくてグーって……ひどいよ(ぐすん)」
 しかも女の子じゃなくて、じつは男のグーパンチという……可哀想なルーファス。
 さらにユーリも生徒もララを追っかけてすでに行ってしまった。
 鼻血の海に沈みながら、ルーファスは力尽きたのだった。
 ドドドドドドド!
 そこへまたも地響きが聞こえてきた。
 逃げるリリがこっちへ向かってくるではないか!?
 先頭で追いかけているのはカーシャとファウストだ。
「邪魔だファウスト!」
「カーシャ先生こそもう一匹の妖精を追いかければよいでしょう!」
「あいつに先に目を付けたのは妾だ!」
「私は召喚されたときから目を付けていたのですよ!」
 妖精を捕まえるとか、願い事を叶えてもらうとか、そんなことじゃなくて、張り合うことがメインになってる二人だった。
 ルーファスはこの場から立ち上がれなかった。
 うさぎさんのパンツが見えた!