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秋月あきら(秋月瑛)
秋月あきら(秋月瑛)
novelistID. 2039
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魔導士ルーファス(2)

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 尖った氷のような脅すように尋ねてきたのはカーシャだった。
「ファウスト先生ともめてたハズじゃ?」
「ヤツと遊んでいるヒマなどない。足止めしてさっさと逃げて来たところだ」
 どんな足止めをしたかわからないが、ファウストもなかなかの使い手だ。きっとすぐに復帰してくるに違いない。そうなったら、同じ妖精を追いかけてカーシャと張り合うことになるだろう。そしてまた鉢合わせしたら、甚大な被害が出ることは間違いない。
 校内で攻撃魔法を容赦なくぶっ放すダメ教師には困ったものだ。それでも首にならないのは、実力主義のクラウス魔導学院の人事ならではだろう。つまりカーシャもファウストも、かなりの実力者ということだ。
 クラウス魔導学院には教師以外の生徒も、かなりの実力者が勢揃いしている。
 つまり今回の騒ぎが多くなれば実力者たちも参戦して、ルーファスのライバルがどんどん増えてしまう。ルーファスの追試合格なんて絶望的だ。
 ギラリとカーシャがルーファスを睨んだ。
「わかっているなルーファス?」
「えっ……なにが?」
「妖精を捕まえたら妾の前に差し出すに決まっているだろう」
「(決まってるってなにそれ)どんな願い事する気なの?(あんまり聞きたくないけど)」
「世界征服に決まってるだろう!」
 きっぱりはっきり断言された。
 決まってるとか言われても困る。世界征服とか子供ですら言わないような夢を語られても困る。しかもマジなところが本当に困る。
 ケツを触って世界征服。そんなことで世界征服の願いが叶ってしまったら、征服されるほうは堪ったもんじゃない。
 いちごパンツと赤ふん触ったら世界征服って……。
 たしかにいちごパンツには夢がいっぱい詰まっているとはいえ、そんな方法で世界征服って……。
 せめて7つのボールを集めて世界征服のほうがいい。
 ふんどしの先には2つのボールしかない。5個も足らないじゃないか!(つっこむところを間違っている)
 カーシャのほかにも、とんでもない願いをする者がいるかもしれない。そうなる前にルーファスが願いを叶えて欲しいところだ。追試合格というスケールの小さくて、わざわざせっかくのチャンスを使って願うことなのかと思うが、世界の平和を考えるならだれにも迷惑をかけない良い願いだ。
 だがしかし!
 ルーファスの目の前に立ちはだかる巨大な壁。
 カーシャ!
「妾を出し抜こうと思うなよルーファス、ふふふっ」
 そんな恐ろしいことルーファスにできるハズがない。ハズがないけど、カーシャに世界征服されるのも困る。そして、追試が不合格になるのも死活問題として困る。
 こうなったら仕方ない。ルーファスの頭に過ぎる考え。
「もう不合格でいいよ。妖精も探すフリだけしよう」
 ルーファスが願いを叶えれば、カーシャが出し抜かれたと思って報復してくる。かと言って、世界征服の手伝いもできないので、手伝うフリしてだけしてあとは、だれが平和的な願いをしてくれることを祈る。
 追試をあきらめたルーファスは、他人任せを決め込むつもりだった。
 だが、ルーファスは期待を裏切らない!
 運命の女神はいつもルーファスを渦中に投げ入れる。
 ルーファスの躰が宙に浮いた。
「な、なに!?」
 驚くルーファスはカーシャの肩に担がれていた。
「行けルーファス!」
「はぁ〜〜〜っ!?」
 意味もわからないままルーファスミサイル発射!
 ルーファスが投げ飛ばされたのは、生徒の群れの中だった。その先頭を走って逃げているリリの姿!
 ここまま行けばルーファスとリリが正面衝突。
 あくまでリリがその場を動かなかった場合の話だ。
 ひょいっとリリが避けた。
 ルーファスはリリの真横を飛び抜け、勢いよく生徒の群れに突っ込んだ。
 ドーン!
 まるでボーリングのピンのように次々と倒れる生徒たち。
 叫び声や呻き声は廊下に響いた。
 そんな生徒たちを見ながらリリが笑いながら去っていく。
「ばーか! オレを捕まえるなんて1000年はぇんだよ、あははははは!」
 逃げられた。
 生徒たちに潰されているルーファスは、死にそうな顔をして手を伸ばした。
「圧迫死する……うう……」
 伸ばされたルーファスの手に触れた柔らかい感触。
 ぷにぷに。
 思わずルーファスはそれを揉んでしまった。
 生徒たちが立ち上がってはけてくると、ルーファスは自分が触っているものが、なんだか見えはじめた。
 ピンクのストライプのパンツ。
 そう、ルーファスが触っているのはお尻だった。
 ついにルーファスは女の子のお尻に触れたのだ!
 でもそれはララのお尻ではなく……。
 顔を真っ赤にしたビビと目が合った。
「ルーちゃんのえっち!」
 バシン!
 ビビの平手打ちが炸裂。
「ぶへっ!」
 珍獣の叫びをあげながらルーファスの顔が変形した。
 ルーファスが触っていたのは、ビビのお尻だったのだ。
「もぉ、ルーちゃんなんか大っキライ!」
 顔を真っ赤にしたままビビが逃げるように走り去っていく。
 そして、ルーファスの頬も真っ赤だった。
 ルーファスは頬についた手のひら痕にそっと触れた。
「ヒリヒリするし口の中も切っちゃったよ。事故なんだから、あんな力一杯叩くことないのに」
 カーシャに投げられ、ビビのビンタを喰らい、散々な目に遭ってしまった。
 だが、ルーファスの災難はまだまだはじまったばかりだ。
 ルーファスを取り囲む生徒たちの視線。身体がチクチクするほど痛い視線を浴びせられている。
「おまえのせいで逃げられたじゃないか!」
「あとちょっとで捕まえられたのに!」
「どうやって責任取ってくれるんだよ!」
 欲望に駆られた人々は怖い。
 身の危険を感じたルーファスは咄嗟に遠くを指差した。
「あっちに妖精が!」
 ルーファスの叫び声に合わせて、一気に生徒たちの視線が指先に向けられた。
 今のうちにルーファスは全速力で逃げた。
 だが、すぐに生徒に気づかれた。
「あいつ逃げたぞ!」
「追え!」
 数人の生徒がルーファスを追ってきた。
 妖精じゃなくて、いつの間にかルーファスが追われる展開に!?
「なんで私が追われてるのさ!」
 欲望に目が眩んで、判断能力が落ちている。
 ルーファスは1つ学んだ。
「(欲望は人を狂わせるんだなぁ)」
 だからこそ欲望に忠実で私利私欲なカーシャはいつも狂ってる。
 狂ってっていうか、ぶっ飛んでる。
 数々の危機に直面してきたルーファスは、その危険を本能的に悟って急いで伏せた。
 カーシャに集まるマナフレア。
「ホワイトブレス!」
 校内で攻撃魔法をぶっ放したカーシャ。
 妖精を狙うライバルを蹴散らすつもりだ。
 ルーファスの頭上を抜けていった凍える吹雪。
 このままでは生徒たちが危ない!
 ジャラジャラと鳴る魔導具の音。
 そんな大量の魔導具を身につけているのはあの人物しかない。
「ファイアブレス!」
 ファウストの手から炎の渦が放たれた。
 ピンチだったとは言え、校内で攻撃魔法をぶっ放したファスト。
 カーシャとファウストは遣りたい放題だ。
 放たれた炎によって吹雪が相殺させた。
 唇を噛んだカーシャ。
「くっ……また妾の邪魔をしおって」