小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」
秋月あきら(秋月瑛)
秋月あきら(秋月瑛)
novelistID. 2039
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

魔導士ルーファス(2)

INDEX|21ページ/104ページ|

次のページ前のページ
 

ルーファスエボリューション4


 ルーファスはビビの前で膝をついた。
「こんな可愛らしいお嬢さん、今まで見たことがない。私の心は今、チョコレートのように甘く、そして少しほろ苦い恋に落ちてしまった!」
 まさかルーファスの口からそんなセリフが出るなんて……。
 ビビは驚きのあまり声も出ない。
 でも、ちょっと時間が経ってくると、ビビは顔を真っ赤にしてはにかんだ笑顔になった。
「えへへ、ルーちゃんどうしたの急に?」
「なんて素敵な笑顔なんだ。まるでひまわりのようだ……いや、ひまわりを照らす温かい太陽の光のような笑顔だ。君は天使なのかい?」
「天使じゃなくて悪魔だけど……え……っと、なんだか恥ずかしくなってきちゃった。もぉ、ジョーダン言わないでよルーちゃん」
「ジョーダンなんて口が裂けても言わないよ。君は僕と出会うために生まれて来たんだ。運命というエンゲージリングが僕たちを結びつけてくれたのさ!」
 あきらかにおかしい。いつもルーファスじゃない。そうはわかっていても、ビビは悪い気はしなかった。
 ビビのニヤニヤが止まらない!
 だが、次の瞬間にはルーファスがひざまづいていたのはアインの前!
「こんなところに女神様が!」
「えっ、わたしのことですか!?(ルーファス先輩……頭でも打ったんじゃ?)」
「その健康的な肌、身体、短い髪、健康美に溢れている。まさに自然の芸術だ!」
 アインをくどくルーファスを見てビビは白くなりかけていた。
「ルーちゃん(あんな軽い男の人だったなんて……今まで知らずに過ごして来ただけなのかな……実家に帰ろうかなぁ)」
 ルーファスの新たな一面発見かっ!?
 困ったアインは店主に助けを求めた。
「ルーファス先輩になにがあったんですか!?」
「わからないコケ」
「わからないって、さっき必死で止めようとしたじゃないですか!」
「どんな眼鏡がわからなかったから止めたコケ」
 そんなメガネを店に置くなよ!
 店主が肩をすくめた。
 アインが店主と話していると、再びルーファスはビビの元にいた。
「どうしたんだい可愛らしいお姫様?」
 お姫様というのは誉め言葉ではなく事実だ。
 ビビがどんよりした空気を背負いながら、しゃがみ込んで動かず口も開かない。
「黙っていてはわからないよ。もしかして悩み事があるのかな? ならば君の進むべき道を僕が示してあげよう。さあ、この舵を握って進路を取るんだ!」
 ルーファスが親指で指し示したのは自分の股間だった。
 下ネタかっ!!
 閉鎖空間に入ってしまっているビビはツッコミもしないし、目の前にいるルーファスも目に入っていなかった。
 アインが駆け寄ってきた。
「しっかりしてくださいルーファス先輩!(ここでルーファス先輩を正気に戻せたら、きっとローゼンクロイツ様の好感度があがるハズ!)」
 素晴らしい動機だ。
「また逢ったね女神様。どうだい今夜は飲み明かそうじゃないか。君のためのこのボトルも空け――」
「言わせませんよ!」
 アインは言葉を遮り、ルーファスの腕を掴んだ。
 絶対にルーファスは自分の股間を指すつもりだった。
 ルーファスに起きた異変。性格に変化が起きたことは明らかだ。原因はおそらくメガネ。
 アインはルーファスのメガネに手を伸ばした!
 だが、手を掴まれた。しかもただ掴んだだけではなく、互いの指と指をガッシリと組まれて離れない。
「嗚呼、レディからダンスの誘いをさせるなんて失礼した。改めて僕からダンスを申し込もう。踊ってくださいますね、太陽の女神様」
「えっ、その……」
 とか口ごもっていると、無理矢理踊らされた。
 アインのダンスはぎこちなかったが、ルーファスは優雅に躍っている。
 いつの間にか復活していたビビは、復活と共に冷静にもなって、その状況は注意深く観察していた。
「(ルーちゃんが踊ってる。運動神経のないルーちゃんがダンスなんて……?)」
 それもメガネの力なのか?
 ビビはそ〜っとルーファスの背後に近付いた。
「(メガネさえ奪っちゃえば……)」
 そ〜っと、そ〜っと、ビビは気配を消して――ルーファスに飛び掛かった!
 が!
 ビビの両手がルーファスに掴まれた。
「君も僕と踊りたいのかい?」
 アインが解放されて、次はビビとダンス。
 足がもつれそうになるビビ。
「あっ、ちょ、待って……ああっ!」
 はじめは見るも無惨な踊りだったが、ちょっとずつビビは可憐なステップを踏みはじめた。
 まるでその一角は王宮の舞踏会。
 ビビは幼い頃の思い出を浮かべていた。
「(社交ダンスの練習させられたんだった。先生がすっごいきびしくて、あのときは本当にイヤだったなぁ)」
 その練習がここで役に立っている。
 気品漂う眼差しでルーファスが微笑んだ。
「まるで君の踊りは蝶の舞いのようだ」
「そんなこと言われると照れちゃうよぉ……あっ」
 ビビの足がもつれた。
 倒れそうになったビビの腰を抱いてルーファスが支える。
 見つめ合う二人。
 唇と唇はすぐそこに……。
 ビビは頬を赤らめた。
「(ルーちゃんの顔がすぐそこに……でも、でもでも、今のルーちゃんはいつのルーちゃんじゃない)」
「海の見える丘にある教会で結婚しよう」
「……えっ、ええええ〜〜〜っ!」
「夜はお祝いのボトルを――」
「だめぇーーーっ!」
 ビビはルーファスを押し飛ばした。
 尻をついたルーファスの瞳は輝いていた。
「なんて強い押しなんだ……押しの強い女性は嫌いじゃないッ!」
 押しの意味が違うような気がする。
 だが、次の瞬間にはルーファスの視線は、破壊されている壁の先を歩いていた若い女の子に向けられていた。
 ルーファスが外の世界に飛び出した!
「貴女はマダルガスの絵画から出てきたのですか!」
 マダルガスとは美人画で有名な画家の名前だ。
 戸惑う女の子。
 しかし、そんな女の子を放置してルーファスは近く似た女性をくどきはじめていた。
 さらにほかの娘、ほかの、ほかの、ほかの、見境なくくどいている!
 ルーファスの節操のない行動を見ていたビビの瞳がギラ〜ン!
 イエローアイからレッドアイへ。
 ビビは大鎌を召喚してルーファスに襲い掛かる。
「ル〜ウ〜ちゃ〜んッ!!」
 怒りに燃えている。ビビが怒りに燃えている。
「ばかぁーーーッ!」
 大鎌がルーファスの首を狙う。
 マジだ、マジでヤル気だ。
 ビュン!
 風を切った大鎌。
 だが、ルーファスの首を斬れなかった。
 目を丸くするビビ。
 微笑んだルーファスは片手で大鎌を受け止めていた。正確には手にマナを集中させ、魔法壁で防いだのだ。
「殺したいほど愛されているんだね、僕は」
「……ルーちゃんのばかばかばかぁ!」
 目だけではなく顔まで真っ赤にして、ビビは連続斬り!
 だが、そのすべてを華麗にルーファスは受け止めた。
 ビビは驚きを隠せない。
「(ルーちゃんが……強い!)」
 しかしそう思ったの束の間だった。
 酔っぱらったオッサンが近付いてきて、ルーファスをぶん殴ったのだ。
「彼女とのケンカなら別の場所でやれーッ!」
 パンチを喰らったルーファスは地面に倒れてグルングルン回った。
 倒れたルーファスにビビが斬りかかる。
「ばかぁッ!!」