小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」
秋月あきら(秋月瑛)
秋月あきら(秋月瑛)
novelistID. 2039
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

魔導士ルーファス(2)

INDEX|13ページ/104ページ|

次のページ前のページ
 

ルーファスエボリューション1


 壮大な音を奏でる目覚まし時計。
 散らかって山積みになった物が今にも崩れそうだ。
 そんな中でスヤスヤと寝息を立てているルーファス。
 突然、部屋のドアが開いた。
「起きろルーファス!」
 リファリスが部屋に飛び込んできたと同時に物の山が崩れた。
 それでもルーファスは起きない。
 目覚まし時計を握り締めたリファリス――次の瞬間!
「うるさい!!」
 目覚まし時計が投げられた!
 もちろん標的はルーファスだ。
 顔面ヒット!!
「ぼぎゃっ!」
 奇声をあげて飛び起きたルーファス。
 痛そうな顔をしながらルーファスは目をこすった。
「(なんか頭がクラクラして目が霞む)リファリス姉さん……起こしてくれるのはありがたいんだけど、もっとやさしく起こしてくれないかな?」
「こっちだって起こしたくて起こしてるわけじゃないんだ。わっちはね、あと3時間は寝たいんだ。それなのにいつもいつも、バカうるさい目覚まし時計の音で起こされて……たっく」
「そんなこと言うなら、ウチに泊まらなきゃいいだろ。姉さんいつまでウチにいる気?」
「いつまでいたっていいだろ。わっちの勝手だろ」
「…………(居候なのに態度がデカイ)」
 建国記念祭のために帰ってきたリファリスだったが、祭りが終わっても未だに居座っている。
「(僕の悠々自適な一人暮らしが完全に壊されてる。かと言って面と向かって出てけとは言えないわけで)」
 ルーファスは溜息を漏らした。
 そう言えばリファリスが来てから、余計に家が汚くなったような気がする。
 あと先にトイレへ入られたり、お風呂に入られたり、見たいテレビが見られなかったり、どんどんルーファスの生活が脅かされている。
「なんとかしなきゃ」
 と、ルーファスは思わず口に出してつぶやいてしまった。
「なにをだい?」
「えっ、な、なんでもないよ! 顔洗ってくるね!」
 慌ててルーファスは部屋を飛びだそうとしたのだが、足下にあった洋服の山に足を引っかけて大きく転倒してしまった。
「イッター! 手ついたときにひねった……」
「ったく、ドジなんだから。ほら、早く顔洗ってシャキっとしてきな」
「わかってるよぉ」
 めんどくさそうにルーファスは言って、ヨロヨロ歩きながら洗面所に向かった。
 洗面所で顔を洗い、目の前の鏡を見たルーファス。
「あれ?」
 鏡に映った自分の顔をぼやけている。
 もう一度、顔を洗ってから鏡を見てみた。
「あれ?」
 まだぼやけている。
「おかしいなぁ」
 目を擦ってみてがかわりない。
「アーーーーーーッ!!」
 突然叫んだルーファス!
「どうしたルーファス!?」
 リファリスが駆けつけてきた。
 どういうわけかルーファスの目が泳いでいる。
「べ、べつにたいしたことなんだ」
「いきなり家の中で叫び声なんてあげて、ビックリするだろ。で、どうしたんだい?」
「それが……ちょっと視力が下がっちゃって、あははー」
「パソコンのやりすぎだろ」
「そうだね気を付けるよ」
「ったく人騒がせな弟だよ」
 リファリスが去っていく。
 その姿が完全に見えなくなってから、ルーファスはツバを呑み込んだ。
「(ちょっと下がったどころじゃないよ。一晩寝ればよくなるよ思ったに、ぜんぜんボヤけてるよ)」
 口止めされているので、ルーファスはリファリスに本当にことを言えず誤魔化したのだ。
 それは昨日、魔導学院で起こった事件だ。
 相手の放った閃光魔法により、視力を失いなにも見えなくなったルーファスだったが、病院での診察を断り、一晩寝れば大丈夫と自宅に帰ってすぐに寝たのだ。なにも見えなかった昨日に比べれば、だいぶ見えるようになっているが、目の前の鏡に映った自分の顔がぼやけている。
「(みんなにも気づかれないようにしなきゃ。そうしないと病院に連れて行かれる)」
 病院行けよ。
 こうして視力が下がったルーファスの1日がはじまるのだった。

 事件の翌日にはもう授業があるクラウス魔導学院。
 事件の大きさを隠蔽する理由もあるが、本当のところは単なるスパルタだったりする。テロという外部からの事件は滅多にあることではないが、内部での大事故などはそこそこあることなので、そういう慣れもあって立ち直りが早いという理由もある。
 学院の廊下を歩くルーファス。
 向こうからツインテールの女の子がやって来た。
「おはようビビ」
「…………」
「黙っちゃってどうかした?(機嫌悪いのかなぁ)」
 相手の顔がなんとなく見えたところでルーファスはハッとした。
「(ビビじゃない!)」
 見事な見間違えだった。
 ツインテールというところまでは同じだが、体重はルーファスの2倍くらいありそうで、ビビとは似ても似つかない女の子だった。
 慌ててルーファスは誤魔化そうとした。
「あ〜っ、ビビ、おはようビビ!」
 遠くに手を振って、まるでそこにビビがいるかのように振る舞って、ルーファスは駆け出した。
 ちなみにルーファスが手を振った方向にはだれもなかった。完全に変な人だと思われただろう。もしくは見えないモノが見えてる人。
 誤魔化しきれなかったが、どうにかルーファスは危機を乗り切った。
 教室に入ったルーファスは、周りに適当な挨拶しながら、自分の席に座ろうとした。
 が、その席には先客があった。
 ここでルーファスは辺りを見回して気がついた。
「(自分の教室じゃない!)」
 慌ててルーファスは教室を飛び出し、今度こそ自分の教室に入った。
 周りの生徒を目を凝らして見る。クラスメートたちに間違いない。
 ほっとしながらルーファスは席に着いた。
 すると、ツインテールの女の子が駆け寄ってきた。
 思わずルーファスは身構えた。
「(本物のビビ?)」
 さっきに失敗が思い出される。
「ルーちゃんおっはよ〜ん♪」
 この声は紛れもなくビビだ。
「よかった……おはようビビ」
「よかったってなにが?」
「いや、べつにこっちの話」
「気になるよぉ」
 プイッとした唇を尖らせた表情でビビが顔を近づけてきた。ここまで近付くとちゃんとビビの顔を見える。
「べつにたいした話じゃないよ。ちょっとさっきビビと間違って別の子に挨拶しちゃっただけだよ」
「(が〜ん、アタシと別の娘[コ]を間違えるなんてショック)あはは〜っ、そうなんだー」
 ビビちゃん苦笑い。
 そんなこともありつつ、この後もいつもどおり過ごしていたルーファスだったが、1時間目からトラブルが発生してしまった。
「(字が……読めない)」
 黒板に書かれた文字がよく見えないのだ。
 ルーファスは隣の席に座っている生徒のノートをチラ見した。
「(こっちも見えない)」
 他人のノートを写そうとしたが、こっちのほうがもっと見えなかった。
 そして、けっきょくノートを取れずに1時間目が終わってしまった。
 休み時間、席に座ってじっとしているルーファスは、青い顔をして焦っていた。
「(ヤバイ、実技が苦手だから筆記でフォローしなきゃいけないのに、ノートが取れないなんて致命的じゃないか)」
「ねぇ、ルーちゃんだいじょぶ?」
「(もしも筆記が赤点なんてことになったら……)」
「ねぇってば」