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秋月あきら(秋月瑛)
秋月あきら(秋月瑛)
novelistID. 2039
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魔導士ルーファス(2)

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 クロウリーが自らの足で立つ姿は、ハイハイ歩きからやっと立てるようになった幼児にも見える。
 ――だが魔気が違う。
 眼が見えないルーファスはそれをより強く感じていた。
 身体の震えが止まらない。
 眼ではなく、ほかの感覚で感じるクロウリーは、まるで巨人がそこに立っているようだ。
 カーシャが手に汗を握っていた。知る者が知れば、カーシャが汗を掻いたという事実は驚愕に値する。
「(人間ごときが……まさかなにをする気だ?)」
 クロウリーの周りにマナフレアが発生する。これは協力な魔力が共鳴を起こしている証拠だ。さらにマナ風と呼ばれる魔力の風が吹き荒れた。
 地面が唸り声をあげて激しく揺れた。
 魔晶が不気味に輝いている。
 クロウリーの魔力に共鳴して魔晶がさらに暴走しようとしている!
 指先から光を出してクロウリーが宙に魔法陣を描く。
「メギ・マフジオン!」
 その呪文は今は伝わっていない古代魔法。
 ありえない魔法が唱えられたことにカーシャだけが気づいた。
「(シイラなど滅びた呪文……それ以前に人間が使えるわけがない!)」
 しかし、呪文は発動された。
 魔法陣は描かれたときよりも巨大に広がり、魔晶を丸呑みにしたのだ。
 鼓動が静まった。
 クロウリーは妖しく微笑んだ。
「アステア王、私が施した術は応急処置に過ぎない。魔晶システムの復旧には3日ほど頂きたい」
「たった3日で治せるのか!?」
「大目に見て3日。損傷具合を見て、材料調達もあるので早ければ1日半でしょうな」
「3日で直せるなら蓄えてある予備エネルギーで王都になんら支障をきたさない。助かるよクロウリー学院長」
「自分の庭が荒らされたら、早々に美しく整えるのが必定」
 言葉を終えて、クロウリーの視線はビビとルーファスに向けられ、次の話題が続けられた。
「さて君たちの処分をどうするか……だが。魔晶システムを見られたからには生かしてはおけない」
「そんな!」
 ビビは声をあげた。
 だが、クロウリーの言葉には続きがあった。
「と言いたいところだが、私の愛しいローゼンクロイツの恨みを買うのも心苦しい。ルーファス君、今後ともローゼンクロイツと仲良くしてくれたまえ。そしてビビ君のことも聞いている。ローゼンクロイツは異性の友人が少ないようだから、君も仲良くしてくれたまえ」
 事件解決に貢献したからではなく、ローゼンクロイツの友人だからというのが理由らしい。
 クロウリーは魔法陣を宙に描いて〈ゲート〉を開いた。
「お帰りはこちらだ。私はすぐに仕事に取りかかる、くれぐれも邪魔はしないでくれたまえ」
 一目散にカーシャが〈ゲート〉をくぐった。
 ビビもルーファスを連れて急ぐ。
「(なんか吐きそう……なにこの感じ)」
 クロウリーの魔気に当てられたのだ。
 クラウスも一礼して〈ゲート〉をくぐった。
 〈ゲート〉の先は魔導学院の中庭だった。
 すでに防御システムは解除されているようだ。
 しばらくして〈ゲート〉の向こうから、ルビーローズとゴールデンクルスが放り出されてきた。まだ二人とも息がある。
 事件はすべて解決したのだろうか?
 クラウスは廊下を歩くクラスメートを見つけて、ほっと息をついた。
 無事に人質も解放されたようだ。
 しかし、事件の余波はまだ残っている。
「早くルーファスたちを救護室に運ぼう。だれか人を呼んでくるよ」
 クラウスは近くにいる生徒たちに声を掛けに行った。
 ビビは心配そうな顔をしているが、その表情はルーファスの瞳には映らない。
「ルーちゃんだいじょぶ?」
「泣きそうな顔しなくても平気だよ」
「見えてるの!?」
「ううん、見えてないけど声がそういう感じだから」
「え〜っ、そんなことないよぉ。アタシはいつも元気で笑顔のちょ〜カワイイ仔悪魔なんだから♪」
 ビビは精一杯の笑顔をつくって見せた。
 たとえルーファスが見えなくても、今ビビにできることは笑顔で居続けることだった。

 第11話_古き魔晶の闇 おしまい